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キラー・メイズ【映画・ネタバレ感想】ノッポさんもびっくり!殺人段ボール迷路から脱出せよ!★★★★(4.0)

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あらすじ

何も成し遂げたことがないすねっかじりの冴えない芸術家デイブ。彼が本気を出して作り上げたのは…死のトラップ満載の殺人段ボール迷路だった!しかし自身も迷路で迷子になってしまったため、恋人のアニーや友人のゴードンらが救出に向かう。しかし、一人また一人と迷路の餌食となって行く…。彼らは無事この迷宮から脱出することはできるのかっ!?

 

 

でっきるっかなっ♪でっきるっかなっ♪さてはてホホ~♪

 

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楽しい段ボール工作映画!

というわけで、「去年見逃して残念だった映画」としてリストにしておいたうちの一つ、『キラー・メイズ(原題:DAVE MADE A MAZE)』がレンタル開始していたので早速観てみました。

 

うん、コレ好きなやつ!!

 

まず、段ボール迷路のクオリティが半端ない。

製作費と労力のほとんどをこの段ボール迷路につぎ込んだのではないかと。

トラップが作動して段ボール製歯車が動き出すとか、首ちょんぱされたら血しぶきの代わりにぱぁ~んと紙吹雪が舞うとか、途中主人公が段ボール人間になっちゃったりとか、もう遊び心が満載で、ほんと観ているだけで楽しいです!

童心に帰れるっていうか、子どもの頃段ボールで兄貴と秘密基地(家にね)作ったの思い出したし、今まさに我が家の6歳児が段ボール工作熱中年齢なもんで、終始(特にラストは)うちの子供部屋を見ているようでしたよ…(笑)。もちろん質は大人がガチで作ってるんだから映画の方が上ですけど。

 

でもまぁ、本作の魅力はある意味そこだけっていうか、お話としては微妙なところもあって。個人的には変にこねくりまわさないで、もっとシンプルにしてもよかったんじゃないかな~とは思いました。でも、「みんなをあっと言わせるようなすごいものを作りたい!」的な欲望は、クリエイターの人や物づくりをしている人には刺さるのかもしれないな…。

 

ただ、ほんとにもうビジュアル的な面では大好きな映画です。 クリエイティビティとイマジネーションに溢れた段ボール迷路の造形は一見の価値ありだと思います。DIYや工作好きな人にはほんとおすすめです!

あとこれ、絶対好きな子どもいるでしょ。その点も考慮して愉快なグロ描写になってるのかしらん?もしかしたら史上初のお子様とも一緒に観られるスプラッター映画かもしれないよ…(笑)

 

 

以下ネタバレ。

 

 

 

 

 

心の迷宮をさまよう

見た目はリビングに置いたらちょっと邪魔だな~程度の大きさの迷路なんですが、入ってみたらあら不思議、アパートの一室なんかよりめちゃくちゃ広い。そこでは無限に広がる空間があったり、モアイ像みたいなのが呼吸していたり、折り紙の鶴が勝手に動いたり、段ボール製の斧や槍が人を殺傷したり、人を襲うケンタウルス(頭部は段ボール)が現れたり、現実では説明できないようなことばかり起きるんですね。

つまりはお察しの通り、この段ボール迷路は作り上げたデイブの内面の具現化なんですよ。デイブは芸術家志望だけど、これといったものも作れずくすぶった日々(「いつもと同じ」)を過ごしていて、その鬱屈した思いをぶつけて作ったのがこの迷路なんです。

わたしはこの映画を観ていてねー、何となく、『スイス・アーミー・マン』を思い出しました。

 

www.cinemashufu.com

 

本作もこちらの映画と同様、自分の作った迷路=「心の殻」の中で、自分の内面と向き合うというお話になっているんですよね。

デイブたちは脱出するために「外」ではなく「中心」へ向かうんです。それすなわち自身の深層心理。しかもそこに「心」を置きに行くんですよ。おそらくその「心」は人形でいうところの「目」であり、自身の芸術に対する情熱でもあるのかなぁ(作った「心」を回すというのも象徴的ですよね)。

「心」が回り、内側から瓦解していく迷路は自身と向き合い「心の殻」を破ったデイブそのもの。彼が壊れてただの段ボールとなった迷路をごみに捨てる行動は、「新しい創作意欲の表れ」とも言えるし「夢を諦めた証拠」とも言えるけど、どちらにせよ、現実を生きる決断をしたということだよね。

そう考えると、楽しいけれど、ちょっと切ないお話なのかも。

 

 

ただ、やはり

残念ながら『スイスアーミーマン』ほどの傑作にはなっていなくて、それはデイブがそんなに屈折しているようには見えないせいなんだよね。恋人もいて、自分を理解してくれる友人もいてさあ、完全に「リア充」なんだわ。アートかぶれリア充の創作の悩みなんて、はっきり言って、共感ゼロなんだわ!(爆)

わたしが監督なら、主人公をいじめられっ子で根暗なオタクとかにして、迷路ももっとどす黒い感じにして、助けに行くのも同じボンクラオタクで…って全然楽しくなさそう(苦笑)

 

まぁ、あまり深く考えずに段ボール迷路の世界観を楽しむのが正解だと思います!ほんと、そこだけはめちゃくちゃ楽しいので!!

 

 

 

作品情報
  • 監督 ビル・ワターソン
  • 製作年 2017年
  • 製作国・地域 アメリカ
  • 原題 DAVE MADE A MAZE
  • 出演 ミーラ・ロヒット・クンバーニ、ニック・スーン、アダム・ブッシュ