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映画ドラえもん のび太の月面探査記【映画・ネタバレ感想】ドラえもん愛に溢れたノスタルジックなジュブナイルSF!★★★★(4.0)

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あらすじ

月で撮影された映像に白い影が写り込んだというニュースを見たのび太。「その正体は…月のうさぎだっ!!」案の定、のび太の主張はジャイアンやスネ夫に大笑いされる。「大人だって月にはうさぎがいるって言っていたのに…いつからいないことになったの!?」そんなのび太を見かねてドラえもんが出したひみつ道具は「異説クラブメンバーズバッジ」。二人は「月には生物がいる」という異説を実現しようと、月にうさぎ王国を作るのだった。

同じ頃、のび太の学校にルカという少年が転校してくる。彼は不思議な力を持っているようだが、その正体は?一方、宇宙の彼方では「エスパル」と呼ばれる子どもたちを捜索する邪悪な星の支配者がおり…。

 

 

春の恒例行事、ドラ映画。今年も家族で観てまいりました。

感想を一言で言うと、

すごく楽しかったです!

 

今回の舞台は月。宇宙を舞台にしたドラ映画はたくさんあるけど月というのは今回がはじめて。パンフレットにのっていた原作者の辻村深月さんのインタビューによれば、

実は、これまでの映画スタッフの方たちも、何回か月を舞台に作品を作ろうとしたそうです。けれど、どうしてもかなわなかった。

とのことで、まるで「近くて遠い」という月の存在を体現するかのようなエピソード。本作はある意味悲願のドラ映画、とも言えるのかもしれません。

物語の発端となる「月にはうさぎがいる!」という発想は『雲の王国』の「天国はどこにあるの?」に通じるものがあって実にのび太らしいし、「異説クラブメンバーズバッジ」もロマンのあるひみつ道具で、辻村深月さんの小説をわたしは読んだことがないのだけれど「きっとドラえもんが大好きな人なんだなぁ」としみじみ感じられるお話でしたよ。

 

監督の八鍬新之介さんは過去に『新大魔境』『新日本誕生』の監督をつとめており、長編ドラ映画の王道パターンを熟知しているだけあって、展開に安心感がありましたね。(はいそこ、ひねりがないとか展開が読めるとか言わない)

わたしの考える王道パターンというのは、ゲストキャラとの出会い&親睦→敵との遭遇→ゲストキャラとの別れ&一旦帰宅→ゲストキャラの救出&失敗反撃!!という流れなんだけど、今回は「一旦帰宅」から「救出」への件で、「旅立ち」という側面が強調されたとてもエモい演出がなされています。「ムーンビジュアル」と呼ばれるイラストにもなっているシーンです。

「映画ドラえもん のび太の月面探査記」郷愁にかられる“ムーンビジュアル”が公開! | アニメ!アニメ!

特にわたしはジャイアンのビジュアルが大好きで、このシーンの直前に彼が取る「兄貴らしさ」が表れた行動にわたしの涙腺は崩壊しました…。ビスコ!!(ToT)

そしてやはり大事なのは子どもたちだけで敵へ反撃するクライマックスですよね。本作では躍動感あるアクションも相まって胸アツものでした。ジャイアンが使うコエカタマリンも良かったわ~。あと見所はなんといっても広瀬アリスの触手プレ…(以下自粛)

 

いろいろ「う~ん?」となる部分もなくはないのですが、少なくとも去年の宝島よりわたしは好きでしたね。子どもたちも所々で大爆笑。特にのび太が◯◯になるシーンはみんな大喜びでした。幼児はああいうの大好きね(笑)

冒険とロマンに溢れた物語と、どこか郷愁を誘う演出に子どもはもちろん、大人も満足できた今年のドラ映画でした。

春休みにお子さんと是非どうぞ~!f:id:minmin70:20190304162549j:image今年の来場者プレゼントのうさドラ。かぁわい~!!

てかさー、てっきり本編でもドラちゃんがこの姿を披露してくれると思ってたのに、うさ耳もつけてやくれないなんてヒドイ!今回はコスプレ度が低いので★マイナス0.5だ!!(採点の信頼度を下げる発言)

 

 

 

以下ネタバレありです~

おまけ映像についてもちょこっと触れています。

 

ちなみに、わたしの過去のドラ映画の感想はこちら

 

 

 

 

 

 

SFへのリスペクトとドラえもん愛に溢れてる!

まず、感動したのは「夢をかなえてドラえもん」が流れるオープニングアニメーション。なんとメリエスの『月世界旅行』のドラージョンではないですか!

わたしはこの映像作品をモチーフにしたスマパンの『Tonight, Tonight』のMVが大好きで、もうのっけからテンション爆上がり。

これね。

その後も狼男(…かと思ったらドラダヌキ)や宇宙や月をモチーフにした映画のドラバージョンが流れ、そのワクワク感に「ドラ映画を観ている!」と気分が高まります。やっぱりねー、オープニングアニメはないとダメよ。なんで宝島やらなかったんだろ?

他にも、名作SFのオマージュとおぼしきシーンがいくつかあって、例えばうさぎ王国で流れる映画は『キングコング』だし、月でのカーレースは間違いなくSWep1のポッドレースだし(だと信じてる)。そもそも、エスパルはジェダイだし、エーテルはフォースだし、コダート(声は柳楽優弥)の武器はライトセーバーだし、破壊兵器はデススターだし、光を取り戻したカグヤ星の地上が映った瞬間「ローグワン!」って思った人はわたしだけではないはず(だと信じてる)。ほらほら、今回のポスターだって心なしか寄せてきてる感じありません…?(ここまで来るとただの妄想)

スターウォーズ 歴代ポスターコレクション スター・ウォーズ最後のジェダイ プレミアム・ナイト 前夜祭特別上映特典

映画 ドラえもん のび太の月面探査記 パンフレット

 

転校生との邂逅という『なぞの転校生』や『宇宙人のいる教室』(わたしはこの児童文学が大好き)などの王道ジュブナイルSF的な要素もあって、のび太とルカが友情を築いていく様は微笑ましかったです(はいそこ、BLとか言わない)。二人の出会いのシーンもどこかノスタルジックで幻想的でした。

f:id:minmin70:20190305104853j:image(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2019

この状況で「君もすすきを取りに来たのー?」と声をかけるのび太。こういう屈託のないのび太の性格、すごくいいよね(笑)。

 

それから前述したように、物語の発端であるのび太の発想やのびドラで秘密の王国を作る点は『雲の王国』を彷彿とさせるし、迫害から逃れてきた少数の宇宙人を救うという展開は『宇宙小戦争』や『ブリキの迷宮』、また悪役の正体は『海底鬼岩城』的でもあります。他にもドラえもん作品のオマージュがそこここに感じられて、わたしは単純に嬉しかったです。

 

ドラえもんという作品って、多分日本の、というか世界中の子どもたちが最初に触れるSFなんじゃないかと思うんです。

タイムマシン、宇宙旅行、人工知能、ロボット、遺伝子工学…そういった科学的なSF的事象を、原理はわからなくても感覚的に理解できるように作られていて、そしてそれと世界の七不思議的な都市伝説やUMAなどの未知の生物を同列に扱う懐の深さ。わたしはドラえもんのそういうところがとても好きなんですよ。

それはまさしく「想像力」。

この言葉は本作でも重要なキーワードとなっています。異説=想像力がやがて実現する=定説となるという展開は、これまでの科学の偉人たちの功績をたどると同時に、確かにこれまでのドラ映画はずっと、子どもたちの「想像力」を飛躍させる優れた作品だった、と改めて気づかされました。

本作は、そんな『ドラえもん』の真髄をしっかりと感じられるSF作品になっているとわたしは思いましたよ。

 

 

気になったところ

とはいえやはり手放しで傑作!と呼べるほどではなかったのも事実でして、以下ちょっと気になった点をのべていきます。

 

セリフがちょっと固い

予告でもあった、のび太にルカが言う「ただ友だちだと言うだけで助けていい理由になる」は、え、そこで言う?(てっきり助けたときに言うのかと思った)ってなったし、別れの時の「想像力があるじゃないか」も、え、のび太がそんな大人っぽいこと言う?と疑問に思いました。でも、その後のルカくんとの抱擁ですべてチャラです!笑(はいそこ、やっぱBLじゃんとか言わない)

あと、ドラえもんの「想像力があるから人を思いやれる。人を傷つけるのは想像することをあきらめた結果だ」(セリフうろ覚え…でも大体そんな感じ)も、若干唐突に感じてしまいました。いいセリフなんだけど。

ほかにもセリフに関してはクドいというかクサいというか、やっぱり小説家さんは字で考えてしまうからなのか、全体的に固い言い回しが多かったような気がしましたね。

 

設定のツメがちょっと甘い

エスパルはカグヤ星人の夫婦が「作り上げた」というかなりふわっとした説明しかなく、エーテルも「不思議な力」程度の認識。その辺の設定の適当さは、個人的にはどうかと思ったり。もしかしたら小説版や脚本の段階では詳細に描かれていたけれど、「子どもには難しい」と省略されたのかもしれないですね。でもF先生ならその辺りも逃げずに説明してくれたんじゃないかなぁ、なんて。

まぁ、わたしとしては最近のドラ映画の方向性を見るとそこまで目くじら立てるほどでもないかなと許容範囲でしたけど。でも人によっては「重要な設定をおろそかにしている!」と批判したくなるかも…。もしかしたらここはかなり賛否別れる部分かもしれませんね。

 

悪役の正体がちょっと安易

黒幕が実は破壊兵器を司る人工知能そのものだった!という点も(さっきは海底鬼岩城ぽくていいとか言っておきながら)ちょっと微妙に思えたところではありました。

敵=AIという展開は最近のアニメだと「ドライブヘッド」などでもありましたが、なんていうか、ご都合的に思えてしまうんですよね。最近の男児向けアニメって、あんまり悪役らしい悪役って出てこないですよね~(そこは男児向けに限ったことではないのかな)。「邪悪な人間」を見ると発達上よくないとかなんかあるのかな…。

でも、敵の手下ロボットが手を前に付き出して近づいてくる姿はキョンシー的で不気味だったし、黒幕ディアボロも吉田鋼太郎の名演もあって恐ろしかったですね。それをかわいいうさぎたちが倒すというが、またコミカルで面白かったです。

 

 

最後に

とまぁいろいろと書きましたが、観終わった後の満足度は高かったですし、「異説クラブメンバーズバッジ」を穴に埋めるというラストも、大昔に友だちと埋めたタイムカプセルを思い出してぐっときました。ドラ映画って、こういうのびドラたちの「友だちと秘密を共有する」という「秘密基地」ぽさが良いよな…なんてしみじみ思いました。

息子も何か感じてくれるところがあったかなぁ…と劇場を出て感想を聞こうとしたら開口一番、

「最後恐竜が出てきたね!来年の早く観たい!」と感慨もなくおまけ映像の話をし出す始末(苦笑)。

そう、我が家の6歳児は大の恐竜好き。彼の心はもはや月にあらず。

仕方なく話を合わせようと

「そうだね。ドラえもん、ブラキオサウルスに乗ってたね」と言うと、

「いや、あれはブラキオサウルスじゃないと思う。パラリティタンかな?サウロポセイドンかも」

「…」

わたしは君と、月の話がしたかった…。

 

 

 

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