ファンタスティック映画主婦

雑食つまみ食い系映画感想ブログ

ハートストッパー シーズン2【ドラマ】各話感想&お気に入り楽曲ピックアップ【後編】

スポンサーリンク

f:id:minmin70:20230908160433j:image

というわけで、ネトフリドラマ「ハートストッパー」の感想記事【後編】です。エピソード1~5までの感想【前編】はこちら。

 

 

ではさっそく、パリ編も佳境となる6話から~!

 

 

エピソード6 真実か挑戦か それとも?

ニックの父親と初対面したチャーリー。しばし雑談を交わすが、ニックの父は仕事を理由にあっという間に退席してしまう。父親にチャーリーを彼氏として紹介するつもりだったニックは自分に興味を向けてくれない父親に落胆する。

パリ最後の夜、ホテルではタラの誕生日パーティーが行われ、大いに盛り上がる。そこで「真実か挑戦か」ゲームに参加したニックとチャーリーは、思いもよらない形で2人の仲を公表することになる。

 

漫画のコマ割りのように表現される散策シーン、ますます仲が深まるパリギャングたちがほんとかわいい。

 

ちなみに古本屋さんでチャーリーが手に取っていたのはアラン・ホリングハーストの「スイミングプール・ライブラリー」。25歳と83歳の貴族の二人を通して、20世紀英国ゲイ社会の歴史が描かれるベストセラー。翻訳も出ています。

 

本屋さんのシーンでは他にも、原作者さんの本がさりげなく置かれていたり、注意深く見るといろいろと発見があるかもしれません。

それから、コミックでも人気の「Recharging(充電中)」のシーンね!実写になるとこれまた……!(悶絶)ニックとチャーリーが2人だけの時にふざけ合う様子はほんとうに微笑ましいです。

 

そんな6話で印象深い曲はやはりHolly Humberstoneの「Deep End」ですね。これはメンタルの問題を抱えていた姉妹へ向けた曲で、

I’ll be your medicine if you let me
Give you reasons to get out of bed
Sister, I’m trying to hold off the lightning 
And help you escape from your head

「わたしはあなたの薬になる」

「頭の中から逃げ出す手伝いをしてあげる」

という歌詞。

ニックとチャーリーがお互いに向けて投げかける言葉のようであり……そして「わたしたちには同じ血が流れてる」という歌詞では、パリにはいないけれど、1話で見せたトリ姉さんの顔も浮かびます……。

トリもチャーリーがいじめられていたのは知っているし、何か大きな問題を抱えていることにもずっと気づいてはいたんだよね。でもそれに対処する方法がずっと見いだせずにいる。もちろんそれはニックも同じなんだけど、ただトリは「家族であるからこそ」踏み込めない部分があるんだと思うんです。S3でスプリング姉弟の絆がどう描かれるのか……。トリちゃんも心に不安を抱えているからね。(涙目)

 

あと、曲調でめっちゃ好きだったのはタオエルがバスルームでキスしている時に流れるDayglowの「then it all goes away」。ノリノリのエルトン・ジョンみたいな雰囲気もあって、ちょっと7、80年代のエレクトロポップみも感じます。PVもめっちゃいいね!

 

アジャイ先生とファルーク先生のエピソードも削られなくてよかった!ファルーク先生はS3でチャーリーたちの味方になってくれそうですね。

 

 

エピソード7 ごめん 許せないことは、許さなくていい

パリ旅行を終えた仲間たち。エルはアートスクールへの転入が認められ、作品が展覧会に展示されることに。

アイザックは自分の思いをジェームスに伝え、友だちにも「恋愛はぼくの人生には重要じゃない」と告げる。さらに自身が「アセクシュアル」であることを確信していく。

そしてチャーリーは謝罪してきたベンに毅然とした態度で決別宣言。ニックはスプリング家を招いた夕食会で、父親と兄に思いの丈をぶつけるのだった。

 

youtu.be

7話のハイライトはニックの父親へのカミングアウトでしょう。そしてもう一つがベンにまつわるエピソードじゃないかと思います。

ドラマ版のベンは、ニックやチャーリーにとって"antagonist"(敵対者)に当たるとは思うのですが、決して「悪役」というわけではないと思うのですよね。やっていることは確かに「悪」いのですけど。

 

チャーリーの口から、ベンに「同意のない性的な接触」を受けた旨が語られていましたが、特に若者がそういう不均衡な関係を迫られることは、残念ながらそう珍しいことではないのかもしれません。

周囲にまだカミングアウトしていない場合「バラすぞ」と脅されて関係を持たされたり、あるいは長い間ホモフォビアにさらされて自己肯定感が低下し、どんなに酷い相手でも「この人以外に自分を好きになってくれる人はいないかも」と言いなりになってしまったり……。特に相手が年長者だった場合は、そういう支配的な関係から抜け出すのは難しい。

でもそんな関係は健全じゃないし、心を蝕むこともある。それを「許す」ことではなく、「否定し、認めない」とすることは、若者に向けた作品として、何よりも重要であったと思います。許せないことをされたのなら、言葉での謝罪くらいで許したりする必要はない。

 

そのような自身の「加害性」をチャーリーから突き付けられたベンですが、かといってそれで、内面化してしまっているホモフォビアと簡単に向き合えるわけじゃない。

セクシュアリティに悩む若者の中には、自分を否定し多数派に迎合することでしか自我を保てない人も決して少なくないと思います。その反動が結果的に誰かに向けられてしまうこともある。だからといってベンがチャーリーにしたことは擁護できることではないし、猛省して欲しいなと思うけれど。

 

でも、いつか彼にも救われるときがあって欲しいと思う。彼にとっての「安心できる場所(SAFE PLACE)」も、どこかにあるはずだと思いたい。「善良なものが欲しかった」「いつか2人みたいになりたい」と、そこまで気付けたならきっと立ち直れるはず。まだまだ10代だもんね。

もちろんそれをチャーリーが見届ける必要はないですが(S3にベンが登場しないことはすでに決定しています)。

 

ただ、少なくとも、ベンのような若い人が自分を拒絶しなくても生きていけるよう、現実を変える義務が大人にはあると思っています。

ドラマ版のベンは、視聴者にそう思索させる役目もあったし、もちろん悩めるクィアの若者の一人として描かれており、コミックや小説「ソリティア」からいちばん深掘り&発展のあったキャラクターでしたね。

 

てか「悪役」とするならば今シーズンだと間違いなくニックの兄デヴィッドだよねー!トリ姉さんがガツンと言うシーン(コミックだと4巻にある)はスカッとしたな(笑)。あれくらいでデヴィッドが変わるとは思えないけれど……。Such a dick!!

 

さてep7のお気に入り楽曲、特にアイコニックだったのは、ランバート美術学校の展覧会でアイザックが「アセクシュアル/アロマンティック」にまつわるアートを眺めるシーンでかかっていたコナン・グレイの「Crush Culture」。

コナン・グレイさんは日本人の母とアイルランド人の父を持つ23歳。レトロなファッションやその愛らしいキャラクターが多くの若者に支持されている、Z世代の人気シンガーです。

Crush culture makes me wanna spill my guts out

タイトルはコナンさんの造語で、恋愛にまつわるゴシップやいわゆる「色恋沙汰」のごたごたを意味しているそう。そういう「カルチャー」に「うんざりだ」と語りかける。「人は恋愛をするもの」という風潮そのものにも異を唱える歌詞が新鮮で、ACEの人たちからも共感の声が上がった楽曲なのだそうです。

 

あと、みんなでプロムの衣装を買いに行ったときにお店で流れていた「People Watching」もコナン・グレイの曲。

But I wanna feel all that love and emotion

Be that attached to the person I'm holdin'

Someday I'll be falling, without caution

But for now, I'm only people watching 

「ぼくも愛を感じたい愛する誰かと一緒にいたい」「いつかは恋に落ちるだろうけど」「今は人間観察してるだけ」いや前向きなんだか切ないんだか!

 

このお店のシーン、チャーをプロムに誘うニックさんのまごまごした感じが、S1ep6のミルクシェイクのときのチャーリーさんと立場が逆転してるみたいで面白いし、「お揃いのスーツはいやだから」って真顔で冗談を言うチャーリーさんもかわいかったですね。

てかね、ニックの家へ向かうときの「mate. bro. pal. supportive straight friends?」のやり取りといい、今シーズンは陽気なチャーリーがたくさん見られたのがほんと嬉しかった。本来はこういう楽しい子なんだよ。

 

あと、スーツを買うのにお金が足りないや、ていうダーシーに、仲間たちがなんのためらいもなくカンパするのもいい。それを集めてダーシーに渡すタラも、「みんなありがとう!」って受け取って笑顔で買いに行くダーシーもかわいい。みんなかわいい。てかタオのメガネはなんだったのあれ(爆笑)。

 

そして、ラストでかかるウルフ・アリスの「Blush」。

チャーリーの体調が心配なニック。理解のない母と口論になり家を飛び出したダーシー。さまざまな不安要素が渦巻く中、

Curse the things that made me sad for so long

Yeah, It hurts to think that they can still go on

I'm happy now

Are you happy now?

「長い間わたしを苦しめたものを呪って」「まだ続くと思うとつらい」「今幸せ?」

うわぁん情緒をどうするつもりよ!!(号泣)

 

 

エピソード8 完璧 じゃなくても、安心できる場所

ニックがついに、インスタでチャーリーと付き合っていること、自身がバイセクシュアルであることをカミングアウト。チャーリーはこれ以上ないくらい完璧だ、と喜ぶ。でもニックはチャーリーの体調と心の問題が心配でたまらない。

一方のタオとエルは正式に彼氏彼女に。

あわただしくプロムの準備が進められるが、いつまでもダーシーと連絡がつかないことにタラは不安を覚える。

着飾った若者たちが集い、プロムナイトは始まるが……。

 

とにもかくにも、ダーーーシーーーー!!(号泣)

いやそんな気はしてた。いつでも陽気でおちゃらけてるのは心の奥底にある不安や悲しみの裏返しなんだろうって。(涙目)

そんなダーシーを「もう半分も知った」「それでも愛してる」と受け止めるタラ……なんかもう、ほんとうにいい子だし、素敵なカップルだよね。

ちなみにタラとダーシーが語り合うシーンでテイラー・スウィフトの「seven」が流れるんだけど、どうやらテイラーもハートストッパーが好きらしくて、破格の使用料で使わせてもらったんだそう。『ハートストッパー』制作陣が最終話でテイラー・スウィフトの楽曲が使えた経緯を明かす - フロントロウ | グローカルなメディア

 

I think you should come live with me

We can be pirates

Then you won't have to cry

Or hide in the closet

And just like a folk song

Our love will be passed on 

「一緒に暮らそう」「海賊になろう」「泣かなくてすむよう」「それかクローゼットに隠れよう」……

なんだか「小さな恋のメロディ」みたいな、あわあわとした初恋のお話のような曲です。ちなみに(その2)、タラの部屋にはこの曲が収録されているアルバム「folklore」のポスターが貼ってあります。

 

"カミングアウト"を経て、大事なのは周りではなく自分たちだと気付いたニックとチャーリー。2人はプロム会場ではなくニックの家で仲間たちと過ごすことに。仲間たちと彼らの穏やかな時間はほんとうに愛おしいです。ここはきっと、みんなにとって安心できる場所(SAFE PLACE)で、完璧じゃなくても、うまくいかなくても、心落ち着ける場所なんだろうな。

 

てか、遅れてきたタラを迎え入れて、7人が抱き合うところは今シーズンで特に心打たれたシーンの一つでしたね。ほんと、いい友だちだよ。(号泣)

アイザックが思わず口から出ちゃちゃった、みたいに「みんな大好き」って言ってるのも泣ける(あれはアドリブですか?)。それに対してチャーリーが「Love you lots」て返してるのもいい。(大号泣)

 

そして、2人きりになったとき、チャーリーがニックに打ち明けたのは、つらいつらいいじめの記憶と自傷行為の過去……。10代が背負うにはあまりに過酷な経験です。

チャーリーはニックのことが大好きなので、心配させるようなことは言いたくない。その気持ちもとてもよくわかる。でもニックはチャーリーを失いたくないからこそ、良いことも悪いことも全部受け止めたいんだよね。

この会話によって、2人はお互いへの思いをさらに強めます。

 

ラストで流れるのは、タオを演じているウィル・ガオさんが妹と組んでいるユニットWasia Projectの「ur so pretty」。

S1の舞台裏でウィルさんがピアノ弾いてる動画があったから、本編でも弾いて欲しい~とは思ってたけど、まさかこんな公式的(?)にやってくれるとは!

「あなたはとてもかわいい」というタイトルの通り、大好きな人への狂おしいほどの思いを歌ったラブソング。

You're the only person left, so hold me
Don't leave me
I'm so scared that the moments we shared
Won't happen again

「あなたはそばにいてくれるただ一人の人」「分かち合った瞬間がもう二度と訪れないことが とてもこわい」

チャーリーが自分にしてくれたように、その手を握りそばにいたいと願うニック。彼を苦しませているもの、内側から彼を蝕むものから守りたいと強く思うけれど、まだその方法がわからない……。そんな気持ちを代弁しているようにも聞こえる歌詞なんですよね。

「I don't want this to end(これで終わりにしたくない)」の歌詞のところで、チャーリーを送り出したニックの思い詰めた表情が映し出されるのが心苦しいです。

見てるこっちだって「I don't want this to end」の気持ちよ!!

 

原作通りならば、S3ではチャーリーのメンタルヘルスにまつわる物語が中心になるかと思われます。そもそも原作者さんは多くの作品で若者のメンタルヘルスについて言及していて、描きたいことはそちらなのかなぁという気もします。

すでにS3の脚本の執筆に取りかかっており、ep1のタイトルが「LOVE」であることが発表されました。

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by Netflix UK & Ireland (@netflixuk)

www.instagram.com

 

S3では、それぞれの愛と友情、お互いを思い合う気持ちがさらに深く描かれるシーズンになるんじゃないかと思います。楽しみに待ちます!

 

 

 

 

 

 

 

 

作品情報
  • 原作 アリス・オズマン
  • 脚本 アリス・オズマン
  • 監督 ユーロス・リン
  • 作曲 アディスカー・チェイス
  • 制作国・地域 イギリス
  • 制作年 2023年
  • 出演者 キット・コナー、ジョー・ロック、ウィリアム・ガオ、ヤスミン・フィニー、コリーナ・ブラウン、キジー・エッジェル、トビー・ドナヴァン、オリヴィア・コールマン