あらすじ
恐竜展の化石体験発掘コーナーで恐竜の卵らしき化石を見つけて家に持ち帰ってきたのび太。ドラえもんに「タイムふろしき」を借りて包んでみると……なんと、卵から双子の赤ちゃん恐竜が生まれる!しかし、なんという恐竜なのかドラえもんの宇宙大百科を持ってしてもその種類がわからない。もしかしたら新種かもしれない!?
のび太は恐竜をキューとミューと名付け、育てることにするが……。
ここ数年は子どもらと観に行くのが慣例化しているドラ映画。今回は兄弟(8歳&3歳)の大好きな恐竜ネタということでね、非常に楽しみにしておりましたよ!!
とりあえずわたしの感想は……
楽しい恐竜アニメ!!
……だけど、ドラえもんとしては……( ´~`)
えーとね、観終わった後はなかなか悪くないやん?って思ってたんだけど、時間が経つにつれどんどん不満が出てきちゃった……。
なので、以下ネタバレしつつ、つらつら書いていきますが若干酷評ぎみです。
好きな人は読まない方がいいかも~!
あ、子どもたちの感想も後ほど……。
わたしの過去のドラ映画の感想はこちら
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最新学説に基づく恐竜描写!
たくさんの恐竜が観られるということもあり、恐竜を扱ったアニメ作品としては、なかなか見応えがあると思います。
最新の恐竜研究を取り入れ、旧作やリメイクにあった「首長竜は恐竜じゃない」というツッコミにちゃんと答えられるような“新しい“「のび太の恐竜」を作ろうとしたのだろうなという、製作意図は理解できました。
舞台を日本に持ってきたのも、「日本は恐竜王国だった」(近年、日本では恐竜化石の発見が相次いでいる)という最近のトレンドを意識しているんだろうなと感じます。
ジュラ紀で装盾類の恐竜が出てくれば「正確にはステゴサウルスの仲間だね」、ここが日本なのか!とジャイアンが言えば「正確には日本はまだ大陸の一部だったんだよ」とドラえもんがすかさず解説してくれ、さすがは小学館の図鑑NEO。
しかしながら気になるところもあって、例えば大型の竜脚類をアラモサウルス(実際にはティタノサウルス類)、仲間となる肉食恐竜をティラノサウルス(実際にはタルボサウルス)、植物食恐竜をトリケラトプス(実際にはシノケラトプス)と呼ばせてしまったり、ケツァルコアトルスらしき大型の翼竜を出してきたりと、「あ、そこは注釈いれないんだ……」みたいな。
いや、別に恐竜に興味のない人にしてみたらそんなのどっちでもいいことだろうし、タルボよりティラノの方が知られてるわけで、そりゃそっちの方がいいに決まってるよね。だけどそういうことならもう最初からフィクションに振りきってくれよ、と。中途半端なんだよなぁ、ってね……なんかモヤっとしてしまった(心が狭いのは自覚してます)。
試みはすごくいいんだろうけど……。うん、なんだろうな、うーん……、
あのねー、はっきりいうと、
全体的に微妙に雑いのよ(笑)。
雑な良いとこ取り
この微妙な雑さが「恐竜描写」だけに留まっていればまだ許せるんだけど、これが「ドラえもん描写」にも関わってくるから絶妙に腹が立つ(笑)
いや、これほんとにねー、「良いとこ取り」つーか「横取り」してるんだよね。過去作の。
過去作っていうのはもちろん、『のび太の恐竜』『竜の騎士』『のび太の恐竜2006』のこと。セリフや描写、設定など、引っ張ってきているところが多く、しかも、それが安易に繰り出されるもんだから違和感と苛立ちが半端ない(笑)。
むしろこんな扱いをするならまったくの別物として作ってくれれば良かったのに……。
卵の化石を拾うところも、確かに『のび太の恐竜』では裏山から掘り出す(正確にはその麓の他人の家の庭)というのも、現実的にはかなりおかしいんだけれども、「化石発掘体験コーナーに転がってた」っていう方がよっぽどおかしくないですかね!?少なくとも、『のび太の恐竜』ではのび太が自分で掘り出すことに意味があったはずなんですよね。
現実的にしようとしすぎて、物語の意味を見失ってしまったら本末転倒ですよ。
空き缶に足挟んじゃうとか、まじでどうでもいいから。そういうのやって欲しいわけじゃないから。だったらドラちゃんのあたたかい目を出せよ。
……
(深呼吸)
……
良いところもあるよ。
まず、生命の神秘と進化の不思議を感じさせるオープニングはとても良いですね。
「進化」を話の中心にもってきて、クライマックスを新恐竜たちを絶滅から救おうとする、としてるのも全然ありだと思うんですね。そして偶然ひみつ道具がその役に立つ、というのも『竜の騎士』で描かれたことです。
もし目の前に絶滅しそうな動物がいれば、それが時空犯罪になるとしてものび太なら絶対に助けるだろうし、そしてそれは多くの恐竜キッズの願いでもあるんです。
だからそれを叶えようとするのびドラには素直に感情移入できましたし、その部分に異議はありません。
また、一歩間違えれば危ういことになりかねない「進化」という概念についてもギリギリのラインで一線を越えずに取り入れられていたんじゃないかなと思います。
まぁ、キューが飛べるようになったのは努力や強い思いではなく、あくまでも個体差が有利に働いただけなんで、個人的にはそこをもう少し誤解を与えないように描いて欲しかった気がしますけどね。(進化とは、ある特徴がたまたま生き残るのに有利だっただけで、発展や成長などとは全く別のものなので)
あとね、もしかしたら否定的な人もいるかもだけど、ピー助を出してきたのは個人的にはアリです!あれは言うなれば今回ののびドラにとってはパラレルの世界だもんね。ただ、めちゃくちゃずるいとは思う(苦笑)。
アニメーションにも躍動感があって観ていて心地がいいし、作画とか詳しくないけど、画的にはほんと楽しいです。決してつまらなくはない。ほんと総じて悪い作品ではないと思うんですよ。
……でも、決定的に何かが足りない。
これといった悪役も出てこないし、ジャイアンやスネ夫に関しても聞き分けがいいし、しずちゃんものび太に都合のいいように描かれてて、話としてはかなりストレスフリーです。でもその分冒険感も薄まって、ドキドキハラハラワクワクがあまり感じられなかったんですよね……。
てかなんなのあのたまご探検隊てやつ。ミニドラでいいじゃん。
そもそもキューとミューのデザインもドラえもんに出てきそうな感じじゃないんだよなー。なんだろうな、わかってもらえるかなこの気持ち……。
もっと子ども目線で作っていいのよ
あと、これは宝島でも感じたことなんだけど、親ウケ狙いが露骨なのよね……。それは主題歌をミスチルに頼んでる時点でそう感じるんだけど(もちろんこれまでの主題歌も人気者だったことは否定しません)、パンフで脚本の川村元気さんは「親世代も楽しめるお話を目指した」とか「親世代に共感してもらえたら」とか語ってて、監督の今井一暁さんも「(自身の子育てにおける)悩みや葛藤を取り入れた」と言ってるんですよね。
別にそれは悪いことじゃないんだけど、そこからして根本的に違うんじゃないかと……。
いや、これまでもそういう傾向の話はもちろんあって、新日本誕生やのび太の恐竜2006でも、のび太とパパママとの関係が描かれてたりしてましたよね。
だけど、それはメインじゃない。
あくまでも視点は子どもたちなんですよ。
例えばキューが病気になり、吐き戻してしまう描写とかも、あれって大人向けに「子育ての大変さ」を追体験させようとしているだけであって、のび太の目線で描いてることではないような気がしたんですよね。
そもそも、『のび太の恐竜』を「子育ての物語」ととらえている時点(いや、確かにそうなんだけど……)で、わたしとは何かが違うのかもしれない。
あと、あえて泣かせようとゴリ押してくる感じもめっちゃ苦手だった……。いや、すいませんわたしドラえもんにそういうの求めてないんですけど、っていう……(笑)。
もっと、子どもたち中心でいいんと思うんですよ。
月面探査機の時に脚本の辻村深月さんがパンフで「(自分も)ドラえもんたちとの冒険を楽しもう(という気持ちで作った)」って語ってて、結局大切なのはそこなんじゃないかと思うんですよね、わたしは。
去年の月面探査機や南極カチコチでは明らかに「ドラえもん」という作品への愛とリスペクトがあったとわたしは思ってて、対して宝島にはそれを感じられなかった。今回の新恐竜もそう。
川村元気さんの考える「ドラえもん」は、多分わたしが考える「ドラえもん」とは根本的に違うんだと思います。正解とか間違ってるとかじゃなくて。
そこには絶対に相容れない深い溝がある。そこをつっついてもどうしようもないんですけどね。
そもそも映画だってドラえもんだって、結局は商業的なものだから、売れるならそれでもいいのでしょうし……。
でも、個人的にはもう、この人が関わったドラえもん映画や恐竜映画を、また観たいとは思いません。
ていうかさ、キューとミューってなんだよ。
そこは、
キュー太とミュー子でしょうがぁあ!!
のび太のクソネーミングセンスを引き継げよぉおお!
子どもたちはどう観たか……?
まぁ、大人のわたしがあーだこーだ言っても、子どもらが楽しんでくれればそれでいい!
と思い、観終わった後8歳児を観てみれば、なんだか不満げ……。
母「どうした難しい顔して?面白くなかった?」
8歳「うーん……そうじゃないけど……。新恐竜が結局なんだったのかわからないんだけど」
母「(えっ、そこ!?)……それがわからないから新恐竜なんじゃない?」
8「いや、ぼくはミクロラプトルだと思うんだよね。滑空して飛んでたし、羽ばたいてたかもって言ってる人もいるからすごく近いと思う」
は「いや、だから、新種だからまだわからないっていう架空の話で……」
8「いや、だからおかしいなって思って。本当に新恐竜なのかな?あと、絶滅の仕方もぼくが考えていたのと違うんだよね。隕石の衝突だけが原因って言ってる人は今は少ないんだよ」
え、そうなんですか……?
3歳児「怖いところ、なかったよ!(*´∇`*)」
うん、よかったねぇ(*´∇`*)
あ、キムタクさんですが、なんか最後の方にごちゃごちゃ言ってたけど、キムタクさん過ぎるのが気になっちゃって、全く頭に入ってこなかったです、すみません……。
来年は宇宙が舞台みたいですね。
チラッと見えた宇宙船のフォルムからして、もしかしたら「宇宙小戦争」のリメイクかも……??ワクワクo(^∇^)o
なんだかんだ言って、やっぱり大好きだよドラえもん!!
作品情報
- 監督 今井一暁
- 原作 藤子・F・不二雄
- 脚本 川村元気
- 音楽 服部隆之
- 製作年 2020年
- 製作国・地域 日本
- 声の出演 水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昇、関智一