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ディック・ロングはなぜ死んだのか?【映画・感想】恥の多い、人生でした。★★★★☆(4.5)

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あらすじ

ジーク、アール、ディックことリチャード・ロングの三人はバンド仲間で親友同士。しかしある夜、ハメを外し過ぎた彼らに思いもよらない悲劇が起き、大ケガを負ったディックがそのまま息を引き取ってしまう。残された二人はその原因を隠そうと証拠隠滅をはかるがことごとくうまく行かない。

やがて白日の下にさらされる、ある秘密。

“ディック“・ロングはなぜ死んだのか……?

 

 

『スイス・アーミー・マン』の監督の一人、ダニエル・シャイナートの最新作。

 

 

わたしはベストサントラに挙げるくらい『スイスアーミーマン』が大好きなんだけど、今回も選曲がめちゃめちゃ刺さりまくっててどうしようかと思った(泣笑)。

 

CREED、Staind、そしてニNickelback!!

主人公たちは、90年代後半に登場し2000年代に大ブレイクしたこれらのバンドを好んでいるという設定なのです!なにそれ泣きそう。インタビューによると3doors downやLimp Bizkitも楽曲使用の候補にあったけど断られたみたいです。なにこのセレクト……ガチじゃん(笑)。

 

 

世界一の嫌われバンド、「ニッケルバック」とは?

知らない人のために説明しておくと、まず、Google先生でニッケルバックを検索すると、サジェストで「ダサい」と出てきます。要するに、そういう扱いのバンドです(爆笑)。

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てかネタってなんなん。酷すぎない?(泣いてる)

 

どうやらローリングストーンズ誌のワーストバンド1位に選ばれたこともあるらしく、「お前ニッケルバックが好きなんだろ」が侮蔑の言葉にもなるくらい、嫌われているバンドなのです。

ならばきっとさぞかしクソみたいな音楽なのだろうと思うかもしれませんが……

 

 

メロディアスでラウドで聞きやすいロックナンバーでしょ?

万人受けする楽曲はセールス的にも好成績でした。でも、コアなロックファンからは酷評の嵐。大衆併合だのオリジナリティがないだの、散々な言われよう(CREEDや3doors downなんかも当時は似たようなことを言われてました)。

映画監督で言ったら、ローランド・エメリッヒとかマイケル・ベイ辺りでしょうかね。邦画だと最近の福田雄一監督みたいな感じかな?

いや、もちろん好きな人も多いと思いんです(だから売れてるわけだし)。でも一方で、アンチもめちゃくちゃ多い。

 

ボーカリストのちょっとイタいエピソード(飲酒運転とかヤンチャ武勇伝とか)も相まって「バカにしてもいいバンド」という扱いが定着してしまったのです。

だから、おいそれと「ニッケルバックが好き」だなんて口が割けても言えない風潮があり……(笑)。

ちなみにわたしは、Spotifyでこの辺りのバンドを取り入れた「アラフォーホイホイ」という名前のプレイリストを作ってるんですよ(笑)。

 

(アラフォーの人なら懐かしくて泣けるはず!(笑)よかったら聞いてみてね!)

 

だからねー、主人公たちが、そんなバンドを好きだってだけで、なんかもうぐっときちゃった。

そしてこの設定、実は物語の根幹に関わってくる重要なことでもあるのです。

 

 

心の恥部を抱いて

人には言えない、理解されないものが好きだと言うこと。これは確かに恥かもしれません。

もしかしたら、秘密にしなければならない汚点かもしれない。

要するにこの映画は、タイトルに「ディック(男性器の隠語)」という言葉が使われているように、「恥部」についての物語なんですよね。物理的な、ではなく「心の」恥部。

 

この「心の恥部」というのは、ダニエルズとしてダニエル・クワンと共同監督した『スイスアーミーマン』でも描かれたことです。

 

ちなみに本作のインタビューで、シャイナート監督(ちなみに監督はディック役を演じてます)はこんなことを言っています。

 

元々、私は人が隠し事をすること自体、変だと思う方なんですよ。でも、どんな家族にも秘密は存在しますよね。それを覆すことは社会にとって良くないことだと私は考えています。

【インタビュー】『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』監督が語る「打ち明けられない秘密」の悲喜劇 ─「ポルノ映画ではありません」 | THE RIVER

 

心の恥部を白日の下に晒した後に、本当の人生がはじまる。

そういう映画なんですよね……。

 

 

いや、ほんとにね、内容的にはタイトルでわかる通りほんとバカバカしいし、特にディックの死因に関してはかなり不謹慎で、人によっては受け入れられない話かもしれない。

 

でも、わたしはこの映画を「下らない」と一蹴できなかった。

わたしにも、心の恥部があるからです。

その「誰にも知られたくないこと」は端から見たらバカバカしいことかもしれない。でも、当人にしてみたらこの上なくシリアスなことなんです。

 

でも、だからこそ、そこに滑稽さとおかしみがある。

でも多分、人間ってそういうものでしょう?

 

ラスト、心の恥部を受け入れた親友二人がへったくそなギターでニッケルバックの代表曲「How You Remind Me」を歌います。

わたしはそれを聞きながら……、なんだか泣けてきちゃった。

世界一嫌われてると言われてるバンドの曲を、めちゃくちゃ下手くそに爪弾いて、調子外れに歌ってさ……それを「なかなかいいよ」とか言ってい合える友だちが横にいて……。自分でもよくわからないけど、ポロポロ涙が溢れてきちゃったんですよね。(うん、どうかしてるかもしれない)

 

いやもうなんだろう、なんで人ってこんなに愚かなんだろうとか、人生ってどうしてこうもままならないものなんだろうとか、いろいろ考えちゃってさ……多分、劇場で泣いてたのはわたし一人でしょうね(泣)ぴえん。

 

恥部が暴かれ、大切な人を失い、周りから好奇な目を向けられても、調子っぱずれな歌を歌いながら「いいね」と語り合える、同じものを好きな友だちが隣にいるーー。

 

もしかしたら人生は、それだけでもう十分なのかもしれません。

 

 

監督の次回作は、再びクワン監督と共同でミシェル・ヨー主演の『Everything Everywhere All at Once』というタイトルのSF映画になるとのこと。

50歳ぐらいの中国人女性が税金を払えない、みたいな作品です。

【インタビュー】『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』監督が語る「打ち明けられない秘密」の悲喜劇 ─「ポルノ映画ではありません」 | THE RIVER

何それ。相変わらず意味不明すぎる……楽しみ!!

 

あ、やべ、全然内容に触れてない感想になっちゃった(笑)。ネタバレ厳禁だし、まぁいいか。

とにかく、お前ら、もうニッケルバックをバカにするのをやめろ!!!

 

 

 

作品情報
  • 監督 ダニエル・シャイナート
  • 脚本 ビリー・チュー
  • 音楽 アンディ・ハル、ロバート・マクダウェル
  • 製作年 2019年
  • 製作国 アメリカ
  • 原題 THE DEATH OF DICK LONG
  • 出演 マイケル・アボット・Jr、、ヴァージニア・ニューコム、アンドレ・ハイランド、サラ・ベイカー、ジェス・ワイクスラー