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テリファイド【映画・ネタバレ感想】デルトロ製作でリメイク決定!アルゼンチン産ショッキング系ご近所ホラー★★★☆(3.8)

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あらすじ

閑静な住宅地で突如頻発する怪奇現象。排水溝から聞こえる声、失踪する隣人、蘇る死体…。持病を抱える警察官のフネスは元検死官の同僚ハノや超常現象の研究者らと事件の捜査にあたる。しかし彼らが足を踏み入れたのは、この世ならざる者たちの巣窟だった…

 

 

基本わたしは怖がりなので、心霊怪奇系ってよほどじゃなきゃ観ないんだけど、こちらはあらゆるファンタスティック系の映画祭で絶賛されたとか、ギレルモ・デル・トロ製作でハリウッドリメイクが決定してるとかっていう前評判が気になってた映画でした。

先月未体験ゾーンで上映してたんだけど、観に行けなくて「レンタル待ちかぁ~」と思ってたら!速攻でNetflixさんに入ってました。あらやだラッキー♪と家族が寝静まってからいそいそと観はじめたら…

怖すぎ!!

えぇとね、深夜1時に観るような映画じゃなかったです。もうやだ!電気消して寝れないじゃーん(T-T)

 

 

家ホラーならぬ「ご近所ホラー」!

映画サイトのあらすじには「悪霊がどうの」とか書いてあるんですが、厳密にいうと、こちらは心霊系ホラーではありません。

導入こそ「排水溝から声がする」「部屋に誰かがいる」「家具が動く」などのポルターガイストな家ホラーの様相ではじまりますが、実は怪異の正体は幽霊や悪霊、あるいは悪魔の類ではなく、(これはネタバレじゃないと思うから言っちゃいますが)「異世界の怪物」なんですね。この異世界っていうのは作中ではただ「異世界」としか呼ばれませんが、闇、地獄、冥界、虚無などと同義と思われます。我々の住んでいる世界とは異次元の世界。で、その世界と接触した者は本来の意味では「死ぬ」ことができない、というね。

昨年の未体験ゾーンで観た『ザ・ヴォイド』とかもそっち系の話だったなー。

そしてその世界には人間に危害を加える存在が生息しているという、要は『サイレントヒル』や『ストレンジャーシングス』 の「裏側の世界」みたいなものなんですね(壁の裂け目がその入り口になっているというのもモロそれっぽい)。そんな怪物が怪奇現象検証チームにそこそこ(というのがミソ)アグレッシブに襲いかかってくる、というのが本作の骨子です。

そして怪異が家そのものではなく住宅地の地域全体に及んでいる、というのがこの映画の特徴。言うなれば「ご近所ホラー」です。

 

しかもその怪異の因縁が土地や土着風俗と関係しているわけでもないというのも面白くて、「異世界」とこの住宅地との因果が全くないという(「ザ・ヴォイド」やストシンのように誰かが入り口を開けたわけではない)、その理不尽さというか荒唐無稽さが、こちらの世界を「一皮めくれば」あちらと繋がってしまう、という潜在的な恐怖を醸し出していました。

おそらくブギーマン的発想なんだと思いますが、ベッドの下とかクローゼットとかお風呂場とかに「なんかいる!」っていうあの感じ。だからさー、ほんとも~!やだも~!o(T□T)oて感じなのよ(伝わる?)。

 

 

静と動の恐怖演出と冴え渡る音の演出

恐怖演出の手法としては多分古典的なんだけど、例えばある方向からは見えないけど別の角度からは見える、反射して背後にいるのが見える、明るいと見えないけど暗いと見える…などの静的シーンのあとに、驚かし系の動的ショッキングなシーンが予想外にさしはさまれるので全然油断できないんです。

一応ホラーだってわかってるから、身構えては観てたわけだけど、序盤の奥さんの空中壁ドンなんかまじで怖くて「なんなのよもう!!」ってキレそうになったし。

怪物も、結構な頻度で映り込むし見た目自体もお尻丸出しの全裸ノッポなんで不思議と怖さはないんだけど、映し方と動きね。ベッドの下でもしゃもしゃ足が動いた時は登場人物と一緒にわたしも「なんなんだコイツ!」って叫びたくなった。多分リメイクではダグジョさんがやるんじゃないかな~。

 

あと印象的だったのは、「音」ですね。

最初のシーンの、排水溝に水が流れていく時の「コポッ…」とか、その後に泡が上下するのと同時に聞こえる息づかいとか、壁の音、足音、ベッドが動く音、シーツが擦れる音、コップが倒れる音、扉がギギギィと開く音…。イヤフォンで観てたってのもありますが、それぞれ的確な場面で、的確な場所から聞こえてきたように思います。音響の部分はかなりこだわってたんじゃないかな。

 

 

主人公不在の話運びが新鮮

もうひとつ興味深かったのは、この映画って特定の主人公がいないんですよ。一応警察官のフネスという男の人が観客に一番近く、それっぽい役割を担ってはいるんですが、主人公かと言われると、なんか違う気がする。

たいていのホラー映画って、ある人物がいて、その人の因縁が発端となって怪異が襲いかかって、家族や恋人とかの周囲の人が巻きこまれて、彼らの関係の再生(あるいは崩壊)がメインテーマとなっていることが多いと思うんですが、本作は前述したように怪異に因縁がないわけなので、そういったテーマは皆無。

つまり怪奇現象そのものに主眼がおかれているんです。なので、怪異の犠牲になった女の人→その夫→怪異がはじまった家の人→解明チーム→警察官→再び夫と視点がバトンタッチしていってるんですよね。この視点がバトンタッチしていく感じは、観ていてなんとなく『呪怨』を思い出しました。

呪怨 (ビデオオリジナル版)

呪怨 (ビデオオリジナル版)

 

そういった話運びになっているので、登場人物の背景や関係性なんかもかなりあっさりしています。そのため、誰かに感情移入するということもないし、子どもの死という悲惨な展開もあまり悲壮的にならずに済みます。(でも、フネスと子の母親が元恋人っていう関係をもう少し深く描いていた方が、ラストの絶望感が増したと思う)。

要はいかに無駄を削ぎ落とし、観客に恐怖を感じさせられるか、そこに注力している映画だったと思います。

原題の『ATERRADOS』は英語表記の『テリファイド』と同様「恐怖」という意味。つまりは本作の主役は我々が本作を観て抱いた「恐怖」そのものなのかも…?

「怖さ=面白さ」なホラー好きの方はきっと大いに楽しめることと思います。…まぁわたしは「怖さ=怖さ」なので、これ系のホラーはしばらく観なくて良いです…((( ;゚Д゚)))

 

余談:解明チームが軒並み弱そう(老人と病気持ち)ってのも逆に新鮮だったなー。

あと、おばあちゃんのダウジングアイテムがめちゃくちゃかっこよかった。多分デルトロさんがこの映画のリメイクするのって、南米の作品てのももちろんあるだろうけど、少なからずあのアイテムに引かれたってのもあるんじゃないかと思うよ…

 

 

 

作品情報

監督 デミアン・ルグナ
脚本 デミアン・ルグナ
製作年 2017年
製作国・地域 アルゼンチン
原題 ATERRADOS/TERRIFIED

出演 マクシ・ギヨーネ、ノルベルト・ゴンサロ、エルビラ・オネット