あらすじ
長きにわたる戦争と、王宮の政権争いによって混迷を極める李氏朝鮮。民が飢えと重い年貢にあえぐ中、王が病に倒れたとの噂が国中を駆けめぐる。
世子(王位継承者)のチャンは父親である王との謁見を試みるが、継母である王妃とその父チョ氏に阻まれる。その行動に疑念を抱いたチャンは、側近のムヨンと共に王を診察した医師をたずねるため、東莱へと旅に出る。
一方、東莱の診療所で医女をしているソビは、師匠が同行者の亡骸を携えて帰宅したことにいいようのない不安を覚える。そしてその夜、「あるもの」を食した患者たちが、異様な形相で人々を襲いはじめた…!
こんにちは、ネトフリ民です。
Netflixドラマはいろいろありすぎてどれから観たらいいのかわからず、あまり手を出していないのですけど、今回はたまたま見かけたこの予告編にものすごい引かれまして。
うひょーこれは!!と思い、見てみました。
やばい、超面白いです。一気見です。
監督は『最後まで行く』『トンネル闇に鎖された男』のキム・ソンフン、脚本は日本でも坂口健太郎主演で連ドラ化された『シグナル』のキム・ウニ。
出演は、みんな大好きペ・ドゥナ、『アシュラ』のチュ・ジフン、実力派のキム・サンホなど。
朝鮮王朝時代劇×ゾンビ、奇跡のコラボレーション!
なんとこちら、「製作費200億ウォン(20億円)をNetflixが全額負担した初のオリジナル韓国産ドラマ」なんですって。わーお、スケールが違います。
王族の豪華な衣装や美術ももちろん素晴らしいのですが、時代性を見事に再現した屋外セットや庶民側の衣装もすごく良いんです。なんていうか、小汚なさが絶妙!
わたしはマツケンの大河ドラマ『平清盛』が大好きだったんだけど、当時の庶民の生活を再現した小汚ない絵面がたまらなくツボだったんですよね。本作からも似たようなテイストを感じました。
これは豪華絢爛な王族と貧しい庶民の対比を深めると共に、王族である主人公の世子(要は皇太子のことね)がどんどん汚くなる=庶民側に寄っていく、という演出的効果もあるのではないかと思いました。
また人海戦術なゾンビ描写も観ていて楽しいです。逆ブリッジで立ち上がる動作やカクカクとした動きが『新感染』を彷彿とさせます。
それに、めっちゃ群がる!!
予告編やプロモーション画面でも見られる、ゾンビが一人の女の人に群がるシーンは「うッヒャ!」と変な声が出ちゃうくらい素晴らしいルックでございました。
また残酷さも容赦がありません。1話から生首が飛びます。\(^o^)/
でも、モロにナニがアレな程ではないので『新感染』が大丈夫でしたら全然イケると思いますよ。
でも…、韓流時代劇×ゾンビと聞いて、
お話はほんとに面白いの?
結果いろいろつめ込み過ぎなんじゃね?
…って思うでしょー?けどこれがねー、見事にベストマーッチ!してるんです!!
時代劇コスチュームプレイ×ゾンビと言えば最近だと『高慢と偏見とゾンビ』という映画がありましたが、
こちらは文芸作品『高慢と偏見』を下敷きに、要所要所でゾンビが登場するというコメディタッチな作りでしたが、こちらの『キングダム』はガチガチのシリアス。陰謀と策略、罠と裏切りの韓流ドラマあるあるな展開に、全く違和感なくゾンビ要素が入り込んでいるのです!
てゆーか、なんでもっと早くやらなかった?と逆に不思議なくらいマッチしてます。
とにかく、ゾンビ好き韓流好きは四の五の言わずに是非ご覧あれ!
ほんとおすすめですっ!!!
以下1話~6話までのネタバレをしつつ、感想をつらつらと。
ゾンビの特徴
まず、本作のゾンビが他のゾンビと決定的に違うのは、その発端が「飢え」にあるという点です。
戦争が続き、庶民は貧しくて食べるものに困っているような状況なんですね。診療所でも患者が食べているのは木の根っこを煮出したようなシロモノ。怪我(おそらく戦争による負傷)や病気が治る前に餓死してしまいそうです。
となると、最終的に食べるものは…人肉。
診療所に通う患者の一人であるヨンシンという男に鹿肉だと言われて、患者たちは人肉を口にしてしまうんですね。(このヨンシンは鳥銃が扱えて元捉虎軍という設定で、戦争に参加していたようなのですが、過去についてはまだまだ謎が多い。「家族でも死ねばただの肉だ」「生き残った者は飢え死にした人間を食べている」と食人を肯定している発言から、おそらく戦場や故郷でかなり過酷な目にあっていたのだろうと推測します。)
しかし、患者たちが食べた肉はゾンビと化した王に襲われて死亡した者だったために、皆ゾンビとなってしまうというのが皮肉です…肉だけに。
この、ヒトとしての「飢え」をゾンビとしての「飢え」に置き換えた点が非常に秀逸だなと思いましたね。しかも、最終的にはゾンビ=飢えた民たちが、自分たちを搾取してきた王族へ襲いかかるという一揆や革命のようなアツさもあります。
それから、本作のゾンビの面白いところは、日中は日陰に隠れて眠るというヴァンパイア的要素(どこかキョンシーみも)があるところ。朝日が昇ると、ささーーっと走って岩の下とか床下に隠れていくんですね。井戸に頭から突っ込んで行くゾンビたちもいて、かなり愉快。床下にダンゴ状になっていた奴らを引き出すシーンは、その形状もさることながら「群れる」という行為の禍々しさも表れていてハッとしましたね。
日中動かないなら夜だけ頑張ればイケるじゃ~ん!と思ったら、第6話のラスト5分でまさかの設定上乗せが。シーズン2ではどんな闘いになるのか楽しみです。
あと、足も速いけど噛まれて(というか喰われて)ゾンビになるまでの間隔もかなり早いです。5秒くらいかな?即ゾンです。
権力への果てなき欲望
「韓流時代劇」と言えば、やはり欠かせないのが「醜悪な権力闘争」!(個人の感想です)
わたしはそこまで韓流フリークでもないので、チャングムやイ・サン、トンイ辺りを母親の横で観ていた程度なんですが、それらを観ていて思ったのが、悪役側の権力への執着の強さね…
出世しようとする主人公だとか、敵対する勢力だとかに対してものすごい卑怯な手(拉致監禁殺人裏切り濡れ衣のオンパレード)を尽くして妨害しまくるじゃないですか。それは時代劇に限らず、韓ドラのお約束なんでしょうけど(そしてそんなしつこすぎる悪役を最後には主人公がサクッと打ち砕く様が爽快なわけですよ)。
もちろん本作でも、その「権力への執着」が悲劇のトリガーとなるわけです。
そもそも王がなぜゾンビになったかと言うと、政治の実権を握るチョ氏が病で亡くなった王を「生死草」という薬草を用いて生き返らせたせいなのですね。
チョ氏は娘を王の後妻にし、王の子を産ませてお世継ぎにすることで、権力を維持しようとしたわけですね。今王が死んでしまうと、現在の世子であるチャンが王位を継いでしまうので、チョ氏としては娘の王妃が男児を産むまでは王には生きていてもらわないと困るというわけ。
懐妊中の王妃も父と同じく野心的で、最後の最後にはまさかの秘密が明らかに。おぉ~怖っ!
「権力」にとりつかれたこの父娘は、人に襲いかかるゾンビ以上に醜悪です。
権力に飢えた悪役と肉に飢えたゾンビ。韓流時代劇のお約束「権力闘争」の部分がしっかりゾンビとリンクしているのも、このドラマを面白くしている要因だと思います。
フィクションだけど、微妙に史実とリンクしてる?
本作の時代設定は完全にフィクション(まぁゾンビが出てきてる時点でアタリマエか)なのですが、「倭軍との戦争から3年」、というセリフがあったので、だいたい1600年頃かと思いまわれます。(文禄・慶長の役=いわゆる朝鮮出兵は1598年終結)
となると、チャン世子のモデルはその頃に即位した15代国王の光海君でしょうか。光海君をモチーフにした映画はイ・ビョンホン主演の『王になった男』という映画がありましたが、
王になる前もなった後も、敵対勢力の妨害に悩まされた不遇の王だったようですね。
また、チャンの師匠で、後半のキーパーソンとなるアンヒョン大監は、倭軍との戦闘で英雄的な活躍をしながら、策略により大臣職を解かれ、晩年は故郷の尚州で隠居生活を送った柳成龍がモデルになっているのではないかと思いました。(あんまり詳しくないんで違うかもしれないけど)
他にも、チョ氏が世子派の勢力を粛清する事件や、ゾンビが最初に蔓延するのが東莱であることも、どこか史実を元にしていると感じます。
架空の時代を描いてはいながらも、どことなく史実とリンクしているところもあって、朝鮮の歴史に詳しい方、韓ドラ好きな方なら「この人のモデルはアレかな?これはあの事件かな?」なんて考えるのも楽しいと思いますよ~。
ヨンシン役のキム・ソンギュに注目!
実力派俳優たちの中で一際異彩を放っているのが、物語のキーマンであるヨンシンを演じたキム・ソンギュです!
彼は演劇出身で、映画やドラマにはこれまで端役やちょい役程度の主演だったそうなのですが、オーディションでヨンシン役を獲得。ミステリアスで謎の多いキャラクターを、説得力をもって演じています。殴る飛ぶ銃を撃つ、とアクションの多くを担っており、身体能力の高さもうかがえます。
何より、単純に顔が好み 笑。
Netflix『キングダム』キャラクタ―ポスター
「犯罪都市」が発掘したキム・ソンギュ「キングダム」主演合流 ( 韓国ドラマ ) - Moonlight Drop - Yahoo!ブログより
なんていうのかな~、適度なバタ臭さとワイルドさ?に、にじみ出る人情味、みたいな。普通に美形だしね。多分、本ドラマを機にどんどん出てくるんじゃないかと思います。
とりあえず、ドンソク先輩の『犯罪都市』に出ていると聞いたので、大急ぎでチェックしに行ってきます!
続き早よ。
というわけで、全6話一気見不可避な『キングダム』シーズン1。
様々な謎ーー過去にも「生死草」による蘇りが行われていた?アンヒョン大監もそれに関与している?ヨンシンの過去は?ムヨンの身重の妻はどうなる?裏切り者は誰か?大量のゾンビを前にしたチャンたちの運命は?ーーを残して終了しているため、もう今から続きが気になって仕方がない!!
来年配信予定のシーズン2を、楽しみに待ちたいと思います。
作品情報
- 監督・演出 キム・ソンフン
- 脚本 キム・ウニ
- 公開年 2019年
- 製作国・地域 韓国
- 話数 全6話(シーズン1)
- 出演 チュ・ジフン、リュ・スンリョン、ペ・ドゥナ、キム・サンホ、ホ・ジュノ、キム・ソンギュ