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ホテル・エルロワイヤル【映画・ネタバレ感想】『キャビン』のドリュー・ゴダードが描く、アメリカの光と影、罪と赦し★★★★(4.0)

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ホテル・エルロワイヤル (字幕版)

あらすじ

70年代のアメリカ、ネバダとカリフォルニアの州境に建つホテル・エルロワイヤル。かつての賑わいも失せひっそりとたたずむそのホテルに、それぞれに苦い過去を持つ男女がおとずれる。神父、セールスマン、黒人女性歌手、謎の女、そして挙動不審な支配人…。そして静寂に響き渡る一発の銃声が、突如バトルロワイアルの幕開けを告げる!?

ワケアリ人間たちが織り成す、不協和音のアンサンブルの行方は…?

 

 

てっきり劇場公開されたもんだと思っていたドリュー・ゴダードの新作。レンタルは本日開始らしいですが、わたしは先行配信で観ました。

ドリュー・ゴダードと言えば、大傑作『キャビン』の監督として有名ですが、

 

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わたしはあの映画が大好きでしてね、一応オールタイムベストに挙げているくらい好きなのです。

 

というわけで今回の『バトル・ロワイアル』、じゃなくて、『ホテル・エルロワイヤル』。『キャビン』のように密室劇ぽさもありつつ、裏と表の種明かしも愉快な、なかなかの良作でしたよ。わたしはとても面白く観ました。

舞台となっているのがベガス(金)のネバダとハリウッド(夢)のカリフォルニア、というのも象徴的だし、何より時代を70年代に設定しているところにゴダード監督のメッセージ性も感じましたね。

ヒッピー、人種問題、諜報機関、JFK、ベトナム戦争…60年代はアメリカの光と影が凝縮した時間で、70年代はある意味、その尻拭いの時間だったのかもしれないと思わせる。アメリカの罪と罰、そしてその「赦し」が本作のメインテーマなのだと思いました。

様々な登場人物が入り乱れ、バラバラだった視点が収斂して種明かしがなされていく展開は爽快だし、フラッシュバックや回想シーンが効果的な編集もスタイリッシュ。想像を掻き立てられる話運びも巧くて、知的なタランティーノ、真面目なガイ・リッチーといった印象です(伝わる?)。

 

役者陣もかなり好演していましたね。みなそれぞれに表と裏の顔を持っているんだけれど、それにより、みんな最初と最後の印象がまるっと変わります。

特にわたしはルイス・プルマンの演じた支配人マイルズのエピソードにぐっときましたね…。あと、最近『ブラック・クランズマン』を観たばかりだったので、シンシア・エルヴォが演じた黒人女性シンガー、ダリーンに思わず肩入れして観ちゃいました。歌のシーンも格好いい!

他にも、渋さと胡散臭さのジェフ・ブリッジス、リメイク『サスペリア』のエア卍固めが記憶に新しいダコタ・ジョンソン、後半にいきなり出てきてエロさとアヤシさで主役をかっさらうクリヘムとキャストも個性的で、群像劇としても楽しめるのはもちろん、『キャビン』のように死亡フラグを考えながら観ても面白いかもですよ~。

 

 

以下ちょびっとネタバレー  

 

 

 

 

 

表と裏と

かつては多くの著名人に愛された名ホテル「ホテルエルロワイヤル」。けれどもそれは表向きの顔。実は裏で権力者たちのスキャンダルを盗撮し、強請のネタにしていた「のぞきホテル」だった!

そしてその標的はかの大統領も例外ではなく…。

人種差別的なセールスマンだと思っていた男は実はCIAの工作員で、元大統領のクリーンな経歴を汚しかねないその証拠を押収しようとホテルへやってきたのだった!

 

一方の謎の女エミリーが抱える秘密は、でかい荷物の中身がカルト集団に洗脳された妹で、彼女を正気に戻そうと連れ去ったこと。しかし思わぬ邪魔が入り、セールスマンを撃ち殺してしまう!

 

黒人女性シンガーのダリーンは、過去にレーベル責任者の白人男性から枕営業を強制され、それを受けたにも関わらず約束を反故にされ(たとわたしは思ったんだけど?)、拠り所もなく一人「リノ」の舞台に立とうとしていた。しかし、自称神父の男が自分に注いだ酒に薬を盛るところを目撃し、あの日の未来がフラッシュバック!(byアジカン)死ね!エロおやじ!

 

自称神父のダニエルは、実は出所した元銀行強盗で、ホテルの地下に隠された大金を掘り返そうとしていたのだった。しかし悲しいかな、ボケが進んで記憶もあやふや、大事なホテルの部屋番号をダリーンの部屋番号と間違えてしまい、部屋に忍び込むため彼女に睡眠薬を飲ませようとしたのだった。

謎の女の殺人を目撃してしまったダリーンとダニエルは、協力して大金の奪取(このシーンかなりクール!!)に成功する!

…と、ここまで書いてもまだ前半です。

 

観ていても「実は」「裏では」が頻発で、一体これは何の話なんだ?って感じなんですよ(苦笑)。

簡単に言ってしまえば人の表と裏の話、なわけですが、悪人だと思っていた人間が実は善人だった、というのはよくあるパターンだけど、善人のように振る舞っていた人間が実は悪党で、でも根は善人だった、ともう一捻りあるのが本作の面白いところ。

 

 

罪と赦しと

ヒッピーカルト教祖(クリヘム)が現れ、絶体絶命に陥った彼らを救ったのは、若き支配人のマイルズでした。

彼は射撃の腕を買われてベトナム戦争に参加し、多数の人間を死に至らしめた過去を持っており、そのPTSDによりクスリに溺れてしまっていたのでした。その果てに盗撮というヨゴレ仕事に手を染め、見たくないものばかり見てきた彼が、赦しを乞おうとする様は涙を禁じ得ません。そしてそれを偽りの姿で救おうとするニセ神父ダニエル…。

 

表と裏のそのまた裏。人は一面だけでは語れない。善行をする悪党だっているし、殺人をしたからといって全てが悪人だとは断言できない。

JFK(劇中では名前こそ出てこないものの)にも人に言えない秘密があった(かもしれない)、ということが示しているように、どんなに正しく見えたとしても、その裏は必ずある。そしてまたその裏も。

そしてそれは、国もそうなんじゃないかーーヒッピーやベトナム戦争、人種問題、当時の負の遺物的な様々なモチーフをちりばめて語ることで、まるで「アメリカそのもの」を描いているように錯覚してしまう。

そしてその罪に偽りの赦しを施す…。本作はそんな映画だったように思えます。

 

ちなみに、悪人然としたクリヘムは最後までクソ悪人なので、そこは安心してください(?)。セクシーダダ漏れだけど。

 

 

とか絶賛しておきながら、話が浅いことは否めないし、ぶっちゃけ『キャビン』ほどの傑作とはいきませんが、監督やキャストのファンはもちろんのこと、この手の群像劇系ドンパチ映画がお好きな人は十分楽しめると思いますよー。

おすすめです。

 

 

 

作品情報
  • 監督 ドリュー・ゴダード
  • 製作総指揮 メアリー・マクラグレン
  • 脚本 ドリュー・ゴダード
  • 音楽 マイケル・ジアッキノ
  • 製作年 2018年
  • 製作国・地域 アメリカ
  • 原題 Bad Times at the El Royale
  • 出演 ジェフ・ブリッジス、シンシア・エルヴォ、ダコタ・ジョンソン、ジョン・ハム、ケイリー・スピーニー、ルイス・プルマン、クリス・ヘムズワース