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スケアリーストーリーズ 怖い本【映画・ネタバレ感想】怪物は、物語からやってくる…★★★★☆(4.5)

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ポスター/スチール写真 A4 パターン7 スケアリーストーリーズ 怖い本 光沢プリント

あらすじ

1986年のアメリカ、ペンシルバニア州の郊外の小さな町。

ハロウィンの夜、ステラ、オギー、チャックの親友同士の三人は、いじめっ子のトミーから逃げる途中でメキシコ系アメリカ人の流れ者の青年ラモンと知り合う。

彼らは肝試しと称して町外れにある旧ベローズ邸、通称「幽霊屋敷」に侵入し、そこで古びた手書きの本を見つける。その本は、地下室に幽閉されそこで自殺を図ったとされる、ベローズ家の長女サラのものだった。小説家志望のステラは思わずその本を持ち帰ってしまう。

しかしその夜、トミーが忽然と失踪。ステラは前日にはなかった物語が本に書き加えられていることに気付き、トミーや過去の子どもたちの失踪にサラの本が関わっているのではないかと考える。そして次の日の夜、本に名前が書かれたのはオギー。ステラたちが駆けつけるも、オギーは姿を消してしまう。ベッド下に爪痕を残したまま…。次に狙われるのは自分たちの誰かだと悟ったステラたちは、本の謎を解くためサラについて調べはじめるが…

 

 

「ギレルモ・デル・トロプロデュース、監督は『トロールハンター』のアンドレ・ウーヴレダル。」

…と聞いて観ない選択肢はない!

というわけで観てきました。

 

 

原作はいわくつきの児童書

原作は80年代に刊行され、あまりの怖さに「子どもの教育に良くない!」と図書館に保護者からの苦情が殺到したという逸話を持つ「Scary Stories to Tell in the Dark」(原題)。

作家でジャーナリストのアルビン・シュワルツがアメリカ各地に伝わる怖い話をまとめたもので、全米図書館協会の「最も批判を受けた図書トップ10」に3度もランクインしているという、筋金入りの「怖い本」なのです。

映画に先立ち、日本でも翻訳本が発売されています。

 

スケアリーストーリーズ 怖い本 (1) いばりんぼうをつかまえた

スケアリーストーリーズ 怖い本 (1) いばりんぼうをつかまえた

  • 発売日: 2020/01/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

90年代に一世を風靡した「学校の怪談」シリーズみたいなものかな (世代的にドンピシャ)。

 

また、原作が恐ろしいとされた理由の一つとしていえるのが、スティーヴン・ガンメルによる挿し絵。液体に近い黒鉛で描かれたという生々しいインク画は、子どもならず大人までも飛び上がるほどのおどろおどろしさがあります。

どこか日本画の幽霊画にも近いものがありますねぇ…。

 

さて、原作では2ページほどのショートストーリーをつなぎ合わせ、ひとつの映画として完成させたのが本作。

もともと挿し絵の原画をコレクションするくらい原作に惚れ込んでいたデル・トロさんが映画化権を買い付けたと聞きつけ、製作に関わりたい、と申し出たそうです。

映画化権を獲得したCBSスタジオ側もデル・トロ本人も自身が監督することを望んでいたそうですがスケジュールのメドが立たず、代わりに白羽の矢が立ったのが、『トロールハンター』の絶賛をツイッターのメッセージで送ったという、アンドレ・ウーヴレダル監督でした。

(『ジェーンドウの解剖』も大変お気に入りらしい)

 

そんな経緯があって製作された本作、率直なことを言うと…

 

最高!めちゃくちゃ楽しい!続編作ってほしい!てかシリーズ化して欲しい!!!

 

『グーニーズ』『ET』『グレムリン』あたりの懐かしテイストのキッズムービーといった感じで、怖さより「ワクワク」が先立つ程よい「怖楽しい」映画でした。(実際、ウーヴレダル監督は、アンブリン社の冒険映画の要素を持つ作品にしたかったそう)

また、『ストレンジャーシングス』『イット それが見えたら終わり』などをはじめ、郊外の町でティーンエイジャーが恐ろしいものと遭遇するというプロットは、最近のトレンドでもありますね。

本作はレーティングもGなので「大人も子どもも楽しめる」というフレーズがぴったりのホラー作品なんじゃないでしょうか。

 

 

でも「子ども向け」というわけではないよ。

「じゃあ子ども向け?」と早合点するなかれ。

モンスターたちは大人が観てももちろん怖いですし、それよりも何よりも「物語の恐ろしさ」に言及した内容の濃いお話になっているんですよ。

 

その証拠に、舞台となるのは1968年のアメリカの郊外。テレビからは大統領選の模様が映し出され、「ベトナム戦争へ行くぜ!」と息巻く青年たちがいて、非白人のラモンへの警察官の勝手すぎる解釈はさながら「ランボー」並みに乱暴(だじゃれではない)。

「物語は人を傷つけ、人を癒す」というフレーズがテーマとして繰り返し語られる通り、当時のアメリカのきな臭く不穏な「物語」が、100年前(本作の怨霊であるサラが生きていた時代)の、そして現代の「スケアリーストーリー」=恐怖と呼応するという構造は実に興味深いです。

 

原作じたいが80年代のものなので時代設定は映画独自のものですが、60年代をおとぎ話として描くことで現代の問題を浮き彫りにした『シェイプ・オブ・ウォーター』のデルトロさんらしい改変なのではないでしょうか。

 

 

魅力的なモンスターたち!

そして本作の一番の魅力なんといっても、先ほど紹介したスティーヴン・ガンメルの挿し絵を忠実に再現した、怖いのにどこか愛嬌のあるモンスターたち!

CGかと見紛う造形ですが、すべて実物。特殊メイクを施した俳優さんたちが演じており、彼らの仕事ぶりにも是非注目して観ていただきたいですね。

 

カカシのハロルドと青白い女(ペイルレディ)を演じるのは『ストレンジャーシングス』デモゴルゴン役のマーク・スティガー。わたしはこのペイルレディが大好きだったんだけど、どうやらメイク技術で俳優さんの表情を生かすような作りになっていたようです。にんまりと微笑む顔がねぇ、すごくいいのよ~。

 

あと、「大きな足指」のぼろぼろ死体を演じたのは『REC』シリーズや『ホスティル』『死霊館エンフィールド事件』のへそ曲がり男でおなじみのハビエル・ボテット。デルトロ作品には『クリムゾン・ピーク』『MAMA』(これもデルトロプロデュース)に出演。長い手足と細身の身体を生かし、まるで本物の生ける屍のような動きを見せます。ちょっと『ジェーンドウの解剖』を彷彿させるシーンも。

 

「ミー・タイ・ドウテイ・ウォーカー(いばりんぼうをつかまえたの意)」のジャングリーマンはデルトロ製作の吸血鬼ドラマ「ストレイン」でも数々のモンスターを演じたトロイ・ジェームズ。高い柔軟性を生かし、軟体動物を思わせる人間離れした動きを披露してます!

シリコンで作ったバラバラの体の部位を取り付けて演じているというから、驚きです。

車を追いかけるところはちょっと『トロールハンター』のトッサーラッドみがあってかわいい(?)んだけど、何気にわたしが一番怖かったのはこのジャングリーマンなんですよね~。顔が邪悪すぎる…。

 

 

というわけで!

わたしは大好きな映画でした。あとね、情報量の多いパンフと数量限定のノベライズ本は絶対買いですよ!!まじで!!!

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以下ネタバレあり。

 

 

 

「恐怖」はどこからやってくる?

わたしがこの映画で一番好きだったのは、「物語から怪物がやってくる」ということを視覚的に見せてくれた点。

それはどういう意味かと言うと、わたしたちはお化けや怪物を怖がるけれど、それらは別に、クローゼットやベッドの下、暗闇に「居る」から怖いわけではない。それがそこに「居ると思う」から怖いのですよ。

わたしも基本怖がりなのに、子どもの頃から怖い話は大好きでわくわくしながら聞いたりするわけです。でも、その夜は背後に注意して後悔しながらお風呂に入る(笑)。

この怖さはなにかと言えば、自分が作り出しているだけに過ぎないわけです。

一番無防備な状態であるからトイレでの怪談話が多い、というのはよく言われることで、要は人が本当に恐れているのはお化けではないんですよね。

 

本作で言えば、最初の犠牲者であるトミーがカカシのハロルドを嫌うのは、家業である農業の象徴のような存在であるからで、彼が本当に恐れているのは、この田舎の農家で一生を終えることなんですよね。だからこそ、彼が一番恐れていた形で「物語」は完結する。

また、チャックの姉ルースが恐れているのはもちろん蜘蛛そのものではなく「醜い」こと。十代女子が陥りがちな典型的な醜形恐怖です。

このようにして本作では、外的なものである怪物=恐怖を、内なるものとして描いているのです。

 

そして、ラモンの恐怖はもちろん「戦争で死ぬこと」。しかしラモンはそれを乗り越えて、最後には徴兵されることを受け入れます。

しかしながら、ラモンの物語のラストは決して美談ではありません。若者たちが戦争に駆り出されるという「物語」こそが本作で一番の「スケアリーストーリー」なのだとわたしは思います。

 

 

「物語」という癒し

本作の怨霊であるサラは、家族が営む工場の公害を告発しようとし、逆にその罪を擦り付けられ非業の死を遂げた被害者でした。

ステラはその真実を「物語」とすることで、サラの無念を晴らします。

本作で繰り返し語られる「物語は人を傷つけ、人を癒す」というフレーズは製作のデルトロさんが発した一言だったそうで、脚本を担当したダン&ケヴィン・ヘイグマン兄弟(『レゴムービー』やデルトロ製作のアニメ「トロールハンターズ」でも脚本を担当)は、「その考えをきっかけにして、物語で傷ついた女性としてサラを描いた」と語っています。

これまでも『パンズ・ラビリンス』や『シェイプ・オブ・ウォーター』で「物語が傷を癒す」作品を手掛けてきたデルトロさんらしいセリフだと思いますね。

 

そして、物語の舞台となるアメリカはさまざまな仮想敵を「物語」に作り替えて、怪物を生み出してきた歴史を持ちます。先住民への迫害や黒人奴隷といった潜在的罪悪感が呪いやゾンビの原型を生み出し、女性は白人男性的な社会では魔女となるー。

サラ及び本作のモンスターたちは、そういったアメリカの負の歴史を体現するキャラクターでもあるのです。

 

現代でも、わたしたちのまわりには悪意と嘘にまみれた「物語」がいたるところに転がっています。デマやフェイクニュースもその一種であり、わたしたちは間接的に物語で人を傷つけ、人を怪物にしている。

それに対抗できるのもまた、「物語」でしかないのかもしれません。

 

映画のラスト、精神を病んだと言われていたルースは立ち直り、ステラはサラの本を手に、姿を消したままの親友オギーとチャックを取り戻す決意を固めます。

彼女たちの物語は、まだまっさらの状態。

この映画のファンとして、彼らにハッピーエンドという癒しを与えて欲しいと思わずにはいられません…。

 

だからどうかお願い!!続編作って!!!

 

 

 

作品情報
  • 監督 アンドレ・ウーヴレダル
  • 原作 アルヴィン・シュワルツ
  • 脚本 ダン・ヘイグマン、ケヴィン・ヘイグマン
  • 製作総指揮 ピーター・ルオ、ジョシュア・ロング、ロベルト・グランデ
  • 音楽 マルコ・ベルトラミ、アナ・ドラビッチ
  • 製作年 2019年
  • 製作国・地域 アメリカ
  • 原題 SCARY STORIES TO TELL IN THE DARK
  • 出演 ゾーイ・コレッティ、マイケル・ガーザ、ゲイブリエル・ラッシュ、オースティン・エイブラムズ、ディーン・ノリス