先週、待望の「劇場版おっさんずラブ」が公開され、そろそろ皆さまの感想やレビューが出揃ってきた頃かと思います。
ちなみにわたしの感想はこちら。
そこで一言、OL民のわたくしから一言二言三言四言、「これは言っておかねばなるまい」と感じたことについて書いておこうと思います。
特に大きなネタバレはしていません。
映画を「つまらない!」と思った方に知っておいて欲しいこと
映画を観て「つまらない」「駄作」「しょうもない」とお感じになられた皆さん。
はっきり言って、あなたの感性は間違っていません。
確かに映画単体として観た場合、あの劇場版は、OL民のわたしでさえ擁護できない部分はありました。冒頭のカンフーの件とか、会長の娘の件とか…「それ、必要?」というシーンも多く(いや、サウナのシーンはありよりのありだお!)、そもそも話の大枠である開発プロジェクトの顛末はどう考えてもリアリティがなさすぎますし、編集も粗く不要なカットが散見されていたことは否めません。
特に映画好きな方からしたら「地雷」と認定されても致し方ないのかもしれません。
ですが、
「所詮人気に乗っかった金儲けでしょ」
と一蹴されてしまうと、さすがにこちらも黙っているわけには参りません。いや、金儲けなのはあらゆる商業映画がそうであるわけなので否定はできないのですが、OLに関しては乗っかった、便乗、などと言うような簡単なものではないのです…
それを理解していただこうなどとおこがましいことを考えているわけではありません。ただいくつか知っていて欲しいのです。
「…で?」と思われても構いません。どうせブログなんて、自己満足なんだから。
①元々は深夜ドラマである、ということ
「おっさんずラブ」という作品は元々、深夜に放送された単発ドラマが最初です。(林遣都演じる牧凌太のポジションを落合モトキが演じた)
その反響が大きかったために、内容の根幹は変えずに連続ドラマとなりました。
それでも放送枠が深夜帯であることに変わりはありません。(土曜日23時15分- 翌0時5分放送)
「おっさんずラブ」は、相某や青い暗号、昼に咲く花のような「ヒットしたら映画化しよう、続編を作ろう」などと考えられるようなドラマとは違い、どんなに話題になろうとも、映画化や続編が約束されているような作品では決してなかったのです。いわゆる「人気が出たから映画化」なドラマとは、根本的に土俵が違うのです。
②平均視聴率は4%台である、ということ
流行語大賞トップ10入り、Twitterトレンド世界一位、東京ドラマアウォードグランプリ、エランドール賞新人賞受賞など、ハナバナシイ経歴はありますが、実は平均視聴率は約4%。第1話だけで言えば、2.9%とかなりの爆死です。あれだけ騒がれた最終回の第7話であっても5.7%で、映画化や続編が作られるような数字でないことは明らかです。
深夜帯ドラマで、視聴率も良くない。
そんなドラマの劇場版が作られるなんて、これまでありました?まさに映画化したこと自体が奇跡のようなものなのです。
③ファンの声を公式がくんでくれている、ということ
そして、ドラマの公式サイドやスタッフサイドとの距離感が近いという点も「おっさんずラブ」の魅力の一つだったと思います。
脚本を担当した徳尾浩司さんがTwitter上でファンとやり取りをすることも多く、公式Twitterもドラマが終了した後も発信を続けていました。
そして、「公式本が欲しい」「グッズが欲しい」「サントラ、脚本を発売して欲しい」「展覧会を地方でもやって欲しい」…といった沢山のファンの声に、常に全力で答えてきてくれました。
まさに「一緒に育てている」という感覚を味あわせてくれたのです。
例えSNSで騒がれても、未だにテレビ界は視聴率至上主義。そんな中でも、ファンの声に耳傾け、ファンにいかに楽しんでもらえるかを考えた末に出された答えが、今回の劇場版だったと思うのです。
「キャストやスタッフはドラマの時のままで」というのもファンの願いでした。きっと、いや絶対、皆さん忙しかっただろうと思います。スタッフの方も、キャストの方も。田中圭なんて連ドラ主演中ですし、他の方も映画やドラマに沢山出演しています。そもそも映画化なんて誰も想定してなかったわけだから、そのスケジュールを考えることからまず大変だったと思いますよ(撮影は3月下旬から1ヶ月ほど)。
だから極端に出演時間の短いキャストもいますし、ストーリー上必要ないのでは?というエピソードも、「同じキャストを出して欲しい」というファンの声に答えてくれた結果なのです。
すべては、ファンのために。映画を観てわたしは、その愛にただただ感動してしまいました。
つまり、何が言いたいかと言うと、劇場版になること自体がまずもって異常なことであり、それはファンの期待に答えてくれた製作陣の愛の賜物だったのだよ、ということです。
とはいえ、ファン以外を排除している訳ではもちろんありません。もしこれを機会に「じゃあドラマの方からちゃんと観てみようかな」と思ってくださった方がいたら、これ以上嬉しいことはございません。
けれどもおそらく、ドラマを未見で映画を観て、残念ながらドラマにも興味を持てなくなってしまった方もおられることでしょう。別にそれはそれで仕方のないことだと思います。作品に対する感じ方は、人それぞれなのですから。
あるいはもしかしたら、この作品のファンに対して悪感情を抱かれた方もいらっしゃるかもしれません。「こんな作品が好きだなんて」と。その感情を、わたしは咎めたりしません。どうぞお好きなようにお感じになられたことをおっしゃっていただいて構いません。
OL民の愛は、そんなことくらいでへこたれるようなものではないのですから。
OL民の方へ
そして映画を観たOL民の方の中にもきっと、「面白くなかった」「期待外れだった」「ドラマはよかったのに」…と思った方もいらっしゃると思います。
そのお気持ち、お察しいたします。わたしも「もっとこうだったら」と思わないでもなかったので…。
先ほど言ったように、作品の感じ方は人それぞれ。そもそも、全ての民が同じように絶賛していたら、それはまたそれでまたどうかと思いますしね。
正解なんてないんです。自分がお感じになったその感情を、どうぞお大事になさってください。
逆に、「最高だった!」「期待通り!」「10回は観る!」「わんだほう!」というOL民の皆さま。
本当に良かったです!
わたしも、映画を見終わって「作ってくれてありがとう…」とはらはらと涙がこぼれ、いまでも、あの美しいラストシーンを思い出すだけで泣けてきます。あと二回か三回は観に行きたいと思っています。
ですが、前述の通り「感じ方は人それぞれ」。
「つまらない」と思う人がいるのは当然のこと。中にはドラマ版を全話観ていないで映画を酷評している人もいるでしょう。
でも、例えそういった人を見かけても、感情的にならないで欲しい。「ドラマを観てから言え!」などと乱暴なことはおっしゃらないでいただきたいのです。そっと優しく「ドラマはこの100倍は面白いですよ」とお伝えすれば良いかと思います(伝わらないかもしれないけど)。
ドラマ版やキャストやスタッフをけなすような発言をしている人がいても、それも同じこと。
頭にくる気持ちもわかりますが、でも、他の人が何を言おうと、作品の素晴らしさが揺らぐことはないのではないでしょうか?それはファンである皆さんが一番よくわかっているはずだと思います。
「おっさんずラブ」という作品の根底にあるのは「人間愛」だとわたしは思っています。人を愛するとは、愛されるとはどういうことなのか。人はなぜ人を愛するのか…
人を愛することの素晴らしさを、春田に、牧に、部長に、ちずに、マロに、蝶子さんに、武川主任に、わたしは教えてもらいました。
あの時、第7話を観た直後、胸に溢れたあの愛しい気持ちを忘れず、これからも変わらず「おっさんずラブ」という作品を愛していきたいと思います。
皆さんもそうであっていただければ、本当に嬉しいです。