あらすじ
13歳の少女リリと飼い犬ハーゲンは固い絆で結ばれていた。母親がしばらく留守をするために、その間疎遠だった離婚した父親の家に預けられることとなったリリとハーゲン。しかし雑種犬に課せられた重税を払いたくない父親にハーゲンは捨てられてしまう。必死にハーゲンを探すリリだったが…。
予告編で犬版「猿の惑星」!などと言われておりずっと気になっておりましたが、やっと観ることができました〜。オリジナルではなく、リブート版の猿の惑星(創世記)の感じでした。
感想は…
とにかくもう、犬がすごかった!!
CGでもアニマトロニクスでもなく、本物の犬に演技させたということで、その自然体すぎる愛らしさもさることながら、これ一体どうやって撮ったの?というシーンの連続で、本当に度肝を抜かれるとはこの事。しかも一匹や二匹じゃないからね、250匹だからね。
まず、冒頭から疾走する犬たちの映像でもう一気に引き込まれました。
犬好きにはつらい、ショッキングなシーンも多々あり、犬を飼っている人は絶対に涙なくしては観られないと思います。飼ってないわたしでもラストシーンは号泣しちゃったからね。
日本でも外来種の魚や爬虫類が捨てられて問題になったりもしていますが、「生き物を飼うこと」の覚悟を改めて考えたくなる映画でした。
以下ネタバレあり。
リリとハーゲンのシンクロ率高し!お互い呼応するように転落していく一人と一匹。
リリがハーゲンと強い結びつきを持っているのは、家庭環境が大いに関係している。
リリは、13歳の思春期真っ盛りの難しいお年頃。母親とその再婚相手(かもしくは恋人?)と同居しているようなのですが、なんとなく関係はよくなさそう。母親はそのパートナーと3ヶ月も家を空けるというのですから、母娘のスタンスが大体想像できます。
別々に暮らしていた父親とも、疎遠なのかそういう年頃だから仕方ないのか、接し方がどこかぎこちない。父親としては娘を大切に思う気持ちもある反面、まだまだ子ども扱いしているところがあって、リリはそういう父親に対して反発するし、父親は困惑するし、どうも噛み合わない。
本当に信頼できる人がそばにいないという心許なさ。リリにとってハーゲンが唯一心を許せる家族であり、友人だったのでしょう。
だからこそ、離れ離れになった途端バランスを崩したようにすさんでいく。
リリは柄の悪そうな奴らとつるむ男の子に近づいて葉っぱを掴ませられ、ついには警察沙汰に…。
ハーゲンは闘犬稼業の男に売られ、クスリを混ぜた餌や非情な特訓のせいで徐々に野生化していく。ついには同種をかみ殺すまでに獰猛な獣となってしまう…。
その落ちていく様がまるでお互い呼応し合っているかのようで、なんとも切ないのです。
リリが警察に厄介になったことで父親はやっと、彼女がハーゲンの喪失をそれほどにまで思いつめていたことを知り「別の犬を飼おうか」と提案します。いや、そういうことじゃねぇんだよなーとは思いながらも、リリはパパに理解を示す。超いい子です。
けれどもその頃、闘犬家から逃げ出したハーゲンは当局に捕まり施設に収容されてしまっていた。すでに飼い犬としての「心」は失われ、代わりにそこには、人間への憎しみと復讐心が宿っていたー。
愛を取り戻せ!少女の奏でるラプソディーに犬はひれ伏す。
施設の職員の喉笛を噛み千切り、殺処分を待つ犬たちと施設を脱走したハーゲン。持ち前の賢さで他の犬たちを統率し、街を人間を襲撃していく。それはさながら軍隊のよう。
リリは、その犬たちの中にハーゲンがいると確信し、野犬と化した犬があふれかえる街へ飛び出す。犬たちが引き起こした惨状に恐れおののきながらも、ついにハーゲンと対面するリリ。しかし、ハーゲンはリリに対しても牙を見せる。それでもリリはハーゲンに親愛の情を示そうとし…。
「大好きだよ」
とハーゲンに近づいていき、ハーゲンの大好きなトランペットを吹いてあげるのです!その音色に「心」を取り戻したハーゲンはリリの前に伏せ、他の犬たちもそれにならう…。
序盤でハーゲンが、リリの吹くラッパを心地好さそうに聞いているシーンがあるので、これが鍵になることは薄々わかってはいたものの、それでも思わず涙してしまうのですよー!
人間に危害を加えてしまったこの犬たちは、もはや殺処分は免れない。そう思うとやりきれない気持ちになります。そんな犬たちを照らす朝日があまりに無情です。
さて、最後にはそんな娘と犬の様子を父親が感慨深げに見てるんだけど…。あれ、そもそもお前が犬捨てなかったらこんなことになんなかったんじゃないの?おいおい、涼しい顔してる場合じゃねーぞ!(笑)。
…うーん、でも大元の元凶は当局に通報したおばさんの方なのかな~ (あのおばさん、無残に死んでくれたんでほんとすっきリス)
タイトルの「ホワイト」とは?
監督のインタビューによると、タイトルの「ホワイト・ゴッド」は「白人の神」を意味するそうです。
犬にとって、人間は神のような存在。でも、その存在は果たして本当に正しいのか?という問題提起でもあるよう。
我々人間は、生き物たちを「飼う」に値する存在なのか?そんな思いが込められているように感じました。
「ホワイト・ドッグ」じゃないですからね!間違わないでね!(←「白い犬出てこないなー」と思いながら観ていたトンチンカンの発言)
作品情報
- 監督 コルネル・ムンドルッツォ
- 製作総指揮 エステル・ギャールファス
- 脚本 カタ・ヴェーベル、コルネル・ムンドルッツォ、ヴィクトリア・ペトラニー
- 音楽 アッシャー・ゴールドシュミット
- 製作年 2014年
- 上映時間 119分
- 製作国 ハンガリー、ドイツ、」スウェーデン
- 原題 FEHER ISTEN/WHITE GOD
- 出演 ジョーフィア・プソッタ、シャンドール・ジョーテール、ラースロー・ガールフィ、リリ・ホルヴァート