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ガンパウダー・ミルクシェイク【映画感想】女・子どもは引っ込んでろ!……、じゃねーんだわ!!★★★☆(3.8)

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あらすじ

行方をくらませた母と同じく暗殺者の道へと進んだサム。「ファーム」と呼ばれる組織に属し、男たちも手を出さないような汚れ仕事を引き受けていた。

だがある日、誘拐された少女を救うため組織の意に反した行動を取ったことから命を狙われてしまう。サムは少女とともに追手をかわしつつ、街の「図書館」に辿り着くが……。

 

 

「比喩」としてのジャンル映画

一つ言いたいのは、これはアクション映画であると同時に「比喩」の映画でもある、ということです。

ジャンル映画の多くはその「比喩」によって支えられている側面が強くありますが、女性が主体となるこの手の作品は特に、その傾向が色濃く出ます。それは、子どもが主人公の作品でファンタジー色が強くなるのと似たような現象かなと思っています。

 

本作の舞台は犯罪組織が幅を利かせる、妖しげにネオン輝く架空の街。登場するのはポップな色合いのダイナーと組織御用達という病院と穏やかならざる図書館。フィクション性の高いそれらの設定もある種の戯画化であり「比喩」の産物です。

 

そのジャンルの持つ世界観で「比喩」を示すという点で、去年観た『ザ・パージ 魔法少女狩り』を思い出したり。

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(「魔女ホラー」というジャンルそのものが、若い女の子たちのまさに「現実」の比喩となってるんですよね。とても興味深い映画でした。)

 

特に、個性的な女殺し屋たちが、組織に属する「無名の」刺客たちを迎え撃つ図書館のバトルは本作のハイライト。この構図から文脈を読み取れ、という話なわけね、これ。その構図は『ザ・スイッチ』のラストと同じだね。

そもそも、「ヴァージニア・ウルフ」と「ジェーン・オースティン」で戦うんだよ?(笑)もう、筋金入りです。

 

中盤とエピローグでは匿われ守られるべき少女もその構図の主軸に参加し、文脈の一部に組み込まれます(少女役は『マイ・スパイ』に出演してたクロエ・コールマンちゃん。あちらでも大柄なバウティスタさんに負けない存在感を見せてましたが、今回も全力かわいい!!)。

女性主体のこの手の映画で「少女」にもその主体性を担わせているのは意外と画期的なように思います。

子どもを守るために女たちが組織と戦うと言えば最近では『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』があったけれど、あれでも女の子は結局「子ども」でしかなかったもんね。

 

子どもを守るのは大人として当然だけれど、「女の子」はもうただ守られるだけの時代ではないのね。理不尽に抗い、ともに闘う「戦闘要員」でもあるということ。未来を感じます。

つまりこれは、今まで「アクション映画」では蚊帳の外に置かれていた彼女たち=「女・子ども」のための物語なのですね。

 

 

コミカル&キメキメアクションが楽しい

前述したハーレイクインが既存のアメコミキャラクターだったのに対し、こちらはオリジナル作品。予算的にも規模的にも小さいでしょう。ハーレイクインも面白かったけど、こちらも同様にトリッキー&カッコよく戦う女たちの姿を観たい!という人にはうってつけの映画だと思います。

主演のカレン・ギランの身体性を生かしたアクションは観ていて気持ちがいいし(両手がふさがった状態での病院バトルはめちゃくちゃ楽しい)、コミカルな動きとキメる時はキメる、そのバランスも良い。その点は、今年公開された女性スパイもの『355』より個人的に好みでした。

 

そして!何より!!

ミシェル・ヨーがめちゃめちゃカッコイイヨー!!

 

初登場のシーンからオーラが半端ないし、スマートな司書姿も終盤のウエイトレス衣装もとてもお似合い!鎖を使った戦闘スタイルもかっこよすぎる……!

(ナヴォット・パプシャド監督が『ベイビーわるきゅーれ』の阪元裕吾監督との対談であのシーンを「メリー・ポピンズ・ムーブ」って言ってて笑っちゃった。↓対談も面白かったです!)

↑記事にある「インディーズのブロックバスター」っていう表現もいいなと思う。大作大作したハリウッド映画ももちろんいいけど、これくらいの規模の楽しい映画もたくさん観たいなぁと思いました。

 

 

汗と涙と血のミルクシェイク

あと、本作がなぜ「ミルクシェイク」なのか、について興味深いコメントを見つけました。

 

わたしはこの騒動について全然知らなかったんだけれど、これが元にあるならそれもまた胸アツだなぁと思いましたね。現実でも、未だ「女・子ども」の出る幕じゃないって言われてしまう「領域(ジャンル)」があるように思います。「女なのに○○が好きなの?」なんて言われたりね。

そういえば前に、SWのファンダムの掲示板に「女・子どもは俺たちのSWから出ていけ(Ep1は女・子どもに媚びを売ったから失敗した、という話の流れだった)」みたいなコメントしてる人見たことあったなぁ……賛同してる人が多かったのも何気にショックだった。その後すぐにSW女子バッシングがはじまったりして、めんどくせーなーと思ってそこからは離れちゃったんだけど。

特撮界隈もまぁまぁそういうの聞くことあるけど、ゴジラ周りではほとんど目にしたことなかったから、ちょっとびっくりしちゃったよね。(モンスターは誰でも見境なく襲うもんだし、そこはもう女も男も子どもも大人も平等ですからね←そういうことではない)。大規模コンテンツこそあらゆるファン層に寛容であって欲しいよね……。どんなジャンルでも一部の排他的ファンが生まれるのはまぁ仕方のないことなのかもしれないけど、でもそこで性別を持ち出すのはファン云々以前の問題だよなー、と思ったりするわけ。

 

「#MakeMineMilkshake」の活動のようにそういう言説に異議を唱える人がいたり、この映画みたいに「そんなことはないんだよ」と言ってくれるような作品が作られていることに、勇気をもらえる人はたくさんいると思います。

血まみれになりながらミルクシェイクを飲む、そんなひと時もあっていいよね!(どんなひと時だよ)

 

 

と、ここまで書いてて結構褒め寄りなのに、なぜ★が4に届かないかと言うと……、世界観があまりにセットっぽいっていうか、虚構虚構しててそれがちょっと気になったんよね。すでに制作が決定している続編では、エッセンスはそのままに、もう少し現実寄りの世界で彼女たちに大暴れして欲しいな!

 

他にも「3バカトリオ大好きだった!(死んじゃったの惜しい泣。いやもしかしたら生きてるかもしれない?←いやそれはどーだろ……)」「音楽が渋い」などなど言いたいことはあるけど割愛。

あと、ポール・ジアマッティの悲哀ある板挟み感がたまらなかったので、是非続編でも出してあげてください(笑)。

 

 

 

作品情報
  • 監督 ナヴォット・パプシャド
  • 脚本 ナヴォット・パプシャド、エフード・ラフスキ
  • 製作総指揮 ロバート・シモンズ、アダム・フォーゲルソン、リュック・エチエンヌ、シェイナ・エディ=グルーフ、ロン・ハルパーン、ディディエ・ルプファー、アハロン・ケシャレス
  • 音楽 フランク・イルフマン
  • 製作国 フランス/ドイツ/アメリカ
  • 製作年度 2021年
  • 出演 カレン・ギラン レナ・ヘディ、カーラ・グギーノ、クロエ・コールマン、アダム・ナガイティス、ミシェル・ヨー、アンジェラ・バセット、ポール・ジアマッティ