ファンタスティック映画主婦

雑食つまみ食い系映画感想ブログ

ヒメアノ〜ルーーもしもあの日に戻れたら。★★★☆(3.8)

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あらすじ

夢もなくこれと言った趣味もなく、ただ漫然と日々を過ごしていることに一抹の不安を感じている岡田(濱田岳)。アルバイト先の先輩安藤(ムロツヨシ)から思い人であるカフェ店員ユカ(佐津川愛美)との仲を取り持つように請われた岡田は、そのカフェで高校時代の同級生、森田(森田剛)と再会し…。

 

 

 

 

とにかく森田剛がすごい!と公開中も評判がよかったので気になっており、先日のTUTAYAさんの「ビデオの日」を利用して100円レンタルしてきました。

「どーせ最近流行りのエグめ邦画の系譜でしょ〜」なんて若干ナメ気味だったんですよ。それに森田剛と言えどやっぱジャニーズだしさ、なんだかんだ言ってもアイドルなわけだし…なーんて思って観ていたらね、いやいや、これが本当にそんな生ぬるいもんでなかったから驚きですよ。

 

確かにエグめ邦画であるのは間違いないし、グロやエロを盛り込んで観客の度肝を抜かそうとする気概は感じられます。でも、それだけじゃぁない。

今作のエログロは、ただ観客を興奮させたり不愉快にさせようとする類のものではなくて(いやそういう系ももちろん嫌いではないのですが)、それらのシーン一つ一つにきちんと作り手側の意図が込められているように感じるのです。

 

原作は古谷実の同名漫画です。全6巻の内容を脚色し、かつ99分におさめたところをみると、おそらく脚本は相当練られたものだと思います。わたしは未読の状態で観賞しました。

ヒメアノ?ル(1) (ヤングマガジンコミックス)

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とにかく、観て!と言いたいところなのですが、凄惨なシーンや女性にとっては観ていて辛いシーンが多いので(R15です) 、「冷たい熱帯魚」程度なら鼻ほじりながら観られるわたしでも、最後まで見通すのはなかなかしんどかったです。暴力映画に耐性のない方にはおすすめできないかな…。

あと、こういう映画にありがちな、無能な警察とか不注意すぎる被害者とかにイラっとモヤっとささられるところもあります。

でも、昨今のただの暴力映画とは一線を画している作品であると断言できます。特に、この映画の真骨頂は終盤に凝縮されていますので、途中で「うげっ!」と思ってもラストシーンまで見届けて欲しいと思います。

特に、思春期に苦い経験をしたことのある人なら、きっと心に刺さる映画となるはずです。わたしがそうだったので。

 

 

 

 

 

以下ネタバレ。

 

 

 

 

 

確かに森田剛はすごかった!ユカちゃんはビッチと言うより「させ子」だと思う。

評判に違わず、森田剛の森田くんはすごかったです。その異常性は他の俳優さんにはないものを感じましたね。何もしていなくてもすでにヤバイ奴オーラ出まくりです。煙草を注意された時の件や「そんなこと言ってないよ」と2秒後にしれっと嘘をつくところなんかの得体の知れなさ。タイトルカットでユカちゃんの部屋をぼんやりと口開け気味で見上げる森田くんの佇まいなんて、覆面のチェーンソー殺人鬼なんかよりよっぽど怖かったよ。

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森田くんの持っているものは、言うなれば静の狂気なんですね。ヒャッハー系の暴力ではなく、ご飯を食べるとか歯を磨くとかそういうものと変わらない暴力。もちろんそこには凶暴性が内包されているのだけれど、チンピラに絡まれたらあっさりやられてしまうチグハグさが妙に人間臭い。

V6が絶頂の頃、森田剛が一番好き!って言ってる友達がいて、「ちょっと子どもじみてて動物っぽいところが魅力的」と言っていたのを思い出しました。ヤンチャでワルっぽいんだけど、どこか愛らしい。そういう意味でも今作の森田くん役のキャスティングは絶妙だったのかなと思います。

 

キャストの話で言えば、「天使ちゃん」ユカ役の佐津川愛美ちゃん。裸体を惜しげもなく晒していて、女のわたしでもドキリとすること然り。スタイルがいいとか超美女ではないからこそ醸し出されるエロスがなんとも生々しかった。

佐津川愛美ちゃんはドラマ「最後から二番目の恋」で初めて拝見し、中井貴一を翻弄するぶりっ子女子を演じていて、そのイメージだったのですが、今作でもその嫌味のないぶりっ子感がよく出ていましたね。ぷくっとほっぺを膨らませる表情とか、非常にかわいい。

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男の子が好きそうなこのアングル。

多分だけど、ユカちゃんって経験人数はそれなりにあっても、男慣れはしていないんだよね。正直に「10人くらい」って言っちゃうところや、バイブレーションを「元彼と使った」なんてポロっと言ってしまう素直さがなんともね。男慣れしている女の子だとあの場面で「2、3人くらい?」とか「こんなの見るの初めて!」なんて演技は自然とすると思うんですけど、そうしないところを見ると、逆にあぁ純粋に岡田くんを好きなんだろうなぁ〜なんて思えて可愛らしかった。きっと今までちゃんと付き合った男は経験人数の半分もいなくて、言い寄られたら断れない子なのかもな、とか勝手に想像してしまう(笑)。いや、もしかしたらただ単に童貞キラーなだけか…?ってわたしはなんの話をしてるんだ?

そんなユカちゃんみたいな子って、同性の友達少ないんだよね。だからこそのアイちゃん(笑)。演じていたのは女芸人さんらしいのですが、彼女も相当いいキャラしてましたね〜。ああいうキャラすごく好きです。近くにいたら絶対ウザいけど。

 

そして変人ムロツヨシとナチュラルに童貞感溢れる濱田岳(私生活では奥さんと子どものいるパパってのがすごいギャップ)の安定感。

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「僕は、恋をしている」

 

彼らのやりとりに爆笑した次のシーンでは森田くんが据わった目で人を殺していて、感情の持って行きどころが目まぐるしく変わる。観ているこちらは混乱しまくりです。不穏な森田くんパートとゆるいムロツヨシパートが収斂していく脚本と演出の妙に、ただただ呆然としっぱなしでした。 

そうして、最後の最後にしてついにわかる、森田くんの過去に、わたしはむせび泣いてしまったのでした。

 

 

忘れたいこと、忘れていたかったこと、ずっと忘れたと思っていたこと。

森田くんがどんな人間なのか、なぜ彼が凶暴性を持つようになったのかは中盤にわぐっちゃんという友人から語られるし、森田くん自身の回想で描かれていることもあり、彼の狂気の原因が、高校時代の凄惨ないじめによるものだとわかる。
そして、徐々に森田くんの照準が岡田くんに合わされる頃になって、岡田くんの目線でそのいじめについて語られるのですが、それは岡田くんにとっても、つらく苦々しい過去だった。

以前は仲の良かった森田くんがいじめられはじめ、岡田くんはそれを止めるどころか見て見ぬ振りで一緒に笑ったりしてしまったこと。それに対して岡田くんは罪悪感や後ろめたさを感じていたこと。でも、多分きっと岡田くんは森田くんと再会するまでそのことを忘れていたのだろうと思うのです。忘れた、つもりでいた。 

劇中で森田くんが経験したようないじめを、わたしはこれまで実際目にしたことも、身近で聞いたこともないのでどうしても非リアルに感じてしまうのですが、それでもいじめそのものの陰湿さや居心地の悪さを知らないわけではなく、程度は違えど、わたしはかつて、きっとおそらく森田くんであり岡田くんだったと思うのです。そしてそれは多分、「学校」というものに通ったことのある人間なら誰しも、一度は経験する道なのではないかと…。

 

ついに対峙した森田くんに、岡田くんは謝罪します。けれど森田くんはもうそんなこと覚えてやしなかった。壊された彼の心にはもう何も残されていない。つまりもう、岡田くんは贖罪さえも許されない状況だったのです。

岡田くんを人質に取り、車で逃亡をはかる森田くん。けれど散歩中の犬を無意識に避けて、事故を起こす。我に返った様子の森田くんは、後部座席に座る岡田くんに笑いかけます。

「あれ、岡田くん来てたんだ。借りてたゲーム、返さなくちゃ…」

「また、いつでも遊びに来てよ」

 

…そう、本当の森田くんは、ちゃんと岡田くんを覚えていた。それはいじめに加担した岡田くんじゃなくて、仲の良かった頃の岡田くんの方だったんですよ。それがわかった時、わたしは本当に涙が止まらなくて(今でも思い出すと泣きそう)、そしてダメ押しの回想シーンでの「麦茶持ってきてー」と犬のラストカット…。ずるい!あざとい!と思いながらも、エンドロール中号泣し続けましたよ。

 

森田くんについて、専門家がみれば何らかの病名をつけることは容易いだろうと思います。けれど、それで片付けたら「あの人は病気だからわたしたちとは違う」で終わってしまう。

ラストシーンにあの「麦茶」と「犬」を持ってくることで彼がわたしたちと変わらない人間だということ、誰もが森田くんであり、そして岡田くんになり得るということを示されたような気がします。

原作とは違うエンディングらしいのですが、わたしはこの悲しみと狂気の物語にはふさわしい終わり方だったんじゃないかなと思いました。

 

けれども、どうして森田くんがあそこまでユカちゃんに固執していたのか、明確な理由は最後まで語られないんですよね(安藤さんのように「恋している」訳でもなさそうなんだよなー)。まぁそれが不気味っちゃ不気味なんだけど。

…それにしても、森田剛が森田くん役で、その敵役が岡田くんって、偶然とはいえなんだか妙な因縁を感じてしまったのはわたしだけ?

http://kaizoku-movie.jp/sp/index.html 

また百田尚樹原作か…。多分観ないです(笑)。

 

同じく古谷実漫画の映画化作品。監督は園子温。つまらなくはないけど…って感じ。

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唯一観ている吉田恵輔監督作。イライラするんだけどね、なんか憎めない感じなのよねー。

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