ファンタスティック映画主婦

雑食つまみ食い系映画感想ブログ

君の名は。ーー奇跡を信じること。運命を諦めないこと。少年少女の瑞々しいエネルギーが、世界を救う! ★★★☆(3.8)

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あらすじ

飛騨の山奥の町で暮らす高校生の三葉(上白石萌音)は田舎の伝統やしきたりに辟易しており、都会への憧れを強く抱いていた。ある日三葉は奇妙な夢を見る。それは東京に住む瀧(神木隆之介)という青年になり変わっている夢だった。憧れの東京生活に胸躍らせ、夢の中満喫する三葉だったが…。

 

 

 

ものすごい大ヒットしていますね。都心の劇場じゃ連日満席で「君の名は難民」なる現象が発生している模様。わたしが行ったシネコンは一応都内だけど都心からは離れているせいか満席ではなかったですが、平日の朝イチっていう一番入りの悪そうな時間だったのに、7割は埋まってましたね。

大学生くらいの若い子も多かったですが、意外に年配の60オーバーだろうなって思える方々もおり、年齢層は幅広かったです。予告やポスターなど見る限りターゲットは20歳前後だろうと思ってましたのでね、観に行く前は「場違いかも…」とヒヤヒヤしてましたけど、なんだわたしも若いほうじゃん、なんてね(笑)。

 

新海誠監督の映画は「秒速5センチメートル」以来2度目。わたしとしては「映像はびっくりするほど綺麗だけれど、ストーリーテリングはイマイチ上手くないかな…」といった印象でして。

過剰なモノローグは中学生のポエム日記を聞かされているようで居心地が悪かったし、心情の機微をすっ飛ばして(ラブストーリーなのに!)、最後には山崎まさよしのミュージックビデオになるのも、面食らいましたしね…。でもね、もしかしたら15歳の時に観てたらどハマりしてたかもしれないな…という気もしないでもなかった。

 

まぁ、そんな新海ビギナーなわたしが今作を観ようと思ったのは、話題作だというのもありますが、あまりにエモい予告編に感情が揺さぶられ、思わずうるっときてしまったからなんですよね。

決して神木隆之介くんの「女の子言葉」に萌えたかったからではないよ!!

 

今作は、全身で恋をし、全身で生きることの出来る思春期の少年少女の物語です。彼らのような輝きに満ち溢れた瑞々しさは、残念ながら「大人」になってしまうと、徐々に失われていってしまうものでもあります。

けれども今作は、今まさに思春期を生きる少年少女へ向けてというよりは、そんな純粋さやひた向きさを、かつては持ち合わせていたのに忘れてしまった「思春期だった」大人の世代の方こそ観るべき映画なのだろうと思います。

わたしは、彼らの無条件に人を信じ全力で走る姿を見て、自分の中にあったそれらの情熱を思い出させてもらったような気がしました。

観たら5歳は若返りますよ(多分)!!

 

 

 

以下、ネタバレあり。

 

 

 

 

次々とまき起こるエモーショナルな展開に、三十路のおばさんも号泣寸前!

大林宣彦の「転校生」よろしく、入れ替わった三葉と瀧がやいのやいのとやり合う様子は微笑ましく、RADWIMPSの「前前前世」にのせて繰り広げられる二人の生活はアニメーションらしいテンポのよさで、心地よく観ることが出来ました。

そんな疾走感のある前半が終わり、後半になると細かなカット割りが減って速度が急に落ち着き、なんとなく不穏な展開が予想できます。繋がらない電話、噛み合わない認識、何かがおかしい…。二人は場所だけでなく、時空を超えて結びついていたことが示唆されはじめます。

二人の時間がズレているだろうことは映画の冒頭、プロローグ的に挿入される二人の姿で確認できますよね。学生然とした瀧と比べ、三葉はパンプスを履き、大人っぽい服装をしています(実年齢は三葉が3歳年上)。また、最初から二人が夢を見る(入れ替わる)のも日にちが前後してます。

 

唐突に入れ替わりが起きなくなると、物語の主導は瀧へバトンタッチ。どうしても三葉に会いたくなった瀧は、自分の記憶の風景を頼りに三葉の住む町を探そうと決めます。

けれども、探し当てた先で待ち受けていたのは残酷な真実…。三葉が生きていたのは3年前で、彼女の住んでいた糸守町は彗星の衝突により壊滅してしまったというのです。

薄れていく夢の記憶…会いたい人に、もう会えない。瀧はもう一度三葉と入れ替わりたいと願います。ただ、もう一度だけ会いたい!この「会いたい!」の勢いと熱量が「秒速」と全然違うのね。これを恋の力と言わずしてなんと言う!(笑)

そしてここから始まる瀧の恋の力による暴走(とあえて言いたい)が、結果的に三葉と町の住民を救うことになるのです。

 

とにかく、若者たちが住民を救おうと奔走する姿は手に汗握ってひたすら頑張れー!と応援したくなるし(テッシーがかっこいい!)、黄昏時の三葉と瀧の再会は、映像の美麗さもあって感涙ものですよ。ここまでで感情の波が収まらず、全く気持ちが落ち着きません!

トドメは元に戻った三葉が手のひらの文字を見るシーンね。三十路、悶絶(笑)。恋が勇気を奮い立たせる、名シーンだと思いました。 

 

けれども、目覚めた瀧は三葉のことを忘れてしまうんですね。忘れまいと心に誓ったその名前さえも。そもそも二人の入れ替わりは寝ている間=夢の中なので、覚めれば忘れてしまうというのと、おそらく過去が改変されたことで時間軸が変わったことが関係しているのだろうと思います。

言い知れぬ喪失感を抱えたまま5年が過ぎたある日、瀧は赤い組紐を髪飾りにしている女性とすれ違い、何かを思い出しかけるが…。

 

わたしはね、てっきりここで終わっちゃうのかなーと思ったんですよ。町の住民が無事だったと書かれた新聞記事とか、テッシーとさやちんが結婚式場の話をしている姿を見て、観客としては「あぁ、きっと三葉も無事でどこかで生きているんだろうなー」と想像できたので。

例え二人がお互いを認識できなくても、それはそれで素敵な終わり方(運命の人は必ずどこかにいる)だろうな、と。でも、新海監督はインタビューで「”世界がより良くなるように”と思ってこの2年、この作品を作り続けてきた」と答えていたんですよね。だからおそらく、二人の再会は監督の中で決定事項だったのだろうと思います。

ただ…やはりあの劇的すぎる再会シーンはちょっと気恥ずかしかったな。もう少し現実的な、普通の再会の仕方でも十分ドラマチックだったと思うのですが(例えば瀧の就職先が三葉と同じだったとか、バイト先とかカフェで偶然隣り合うとか)。

「互いに探し合う」という描写が必要だったのだろうとは思うのだけれど…なんてごにょごにょ言ってますけどね、観てる間は「会えるの⁉︎会えないの⁉︎いやーん!」と悶えていたことだけは正直に書いておきます(笑)。

 

 

片割れに出会う時

ちなみに、「誰そ彼(たそがれ)」は夕暮れ時、「彼は誰(かわたれ)」は日の出前を意味し、どちらも語意は「あなたは誰?」です。どちらも辺りが薄暗くて相手の顔が識別できないため近づいて声をかける、というのが語源ですね。

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授業中、黄昏の話の最中に三葉がノートの「お前は誰だ?」の書き込みを見ているのも象徴的。もちろんタイトルの「君の名は」も同義ですね。

 

飛騨の方言に詳しくないのでわかりませんが、糸守町の人が黄昏時を「カタワレ」時と言っているのはおそらく夜明け前の「彼は誰(カワタレ)」時の変形なのだろうと思ったのですが、どうなんでしょう。もちろんその語感から「=片割れ」つまり自分の運命の相手に出会う時という意味を持たせて瀧と三葉の邂逅をよりドラマチックにしています。

このように、一つの言葉に複数の意味を含ませようとするところを見ると、新海さんは余程のロマンチストなんだろうなぁと感じますね。

 

 

冷静になって見ると、いろいろ思うところはある。

「変電施設を破壊するなんて高校生には危険&あまりにヘビーな犯罪であり、さすがに許容できないよな」とか、「入れ替わりが度々起こっているなら3年のズレが生じていることも気づきそうなものでは?」とか…思い返せばいろいろ腑に落ちない所もあるにはあるんだな。

それから、瀧と三葉が入れ替わりを通じ、反発し合いながらもお互いを理解していく描写がもう少し欲しかったかなと思いました。「なぜ二人は惹かれ合ったのか」「いつ(恋として)意識し始めたのか」がはっきりと表現されていない(ようにわたしには思えた)ので、後半の瀧と三葉の行動にちょっと驚いちゃったかな。お前らいつの間にって(笑)。
「二人は運命の相手だから!」「恋心に理由はない!」というスタンスなのかもしれないけれど、何かしら好きになるきっかけや、恋に落ちる瞬間などがあるはずだと思うんですよね。

三葉と瀧は性格や住む環境などの違いはあれど、共通点も多いですし。お互い父子家庭(三葉は一緒には住んでいないけど)だし、三葉は組紐作り、瀧は絵が上手いところを見ると、二人とも手先は器用そうです。
そういう共通項から恋が芽生える、といった描写があっても良かったんじゃないでしょうか。

 

 

他にも「奥寺先輩はあの後絶対ツカサとヤっただろうな」とか「組紐は時間の暗喩」とか「3.11を彗星の衝突として描くのはさすがにロマンチスト過ぎ」とか「四葉がかわいい!」とか「市原悦子!!」とかいろいろ書きたいことはありますが長くなってしまったので割愛します。

とにかく、若い人もそんなに若くない人もワクワク胸キュン号泣してしまうこと間違いなし。今後ジブリや細田守に次ぐ新たな夏定番アニメーターとなるだろう新海誠監督に、これからも注目していきたいと思います!

 

 

 

サントラ。RADWIMPS、あまり好きではありませんでしたが、とても映画に合っていましたね。というより映画が音楽に合っていたのか?新海監督は音に合わせた絵作りをする映像作家なのでしょう。 

君の名は。(通常盤)

君の名は。(通常盤)

 

 

ぶっちゃけ、タイトルを聞いてまず連想したのは鈴木京香主演の朝ドラなんだけどね…。

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 連続テレビ小説「君の名は」 | NHKドラマ

いやーん歳がバレる〜(笑)!!