あらすじ
優しい家族や仲の良い幼なじみに囲まれて、楽しいスクールライフを送るサイモン。しかしただ一つ、誰にも言えない秘密を抱えていた。
ある日、学校用のSNSで「ブルー」と名乗る人物の書き込みを見たサイモンは、その存在が気になりメールを送る。メールを通して仲を深めていくブルーとサイモンだったが、そのメールの内容を厄介者のクラスメートに見られてしまう。彼から女友達との仲を取り持つように脅迫されたサイモンは、仕方なく協力することにするが…
ほんと、いい映画なんでみんな観てください。今日の話は以上です。
ってもうこれで終わりにしたいくらい。それくらい、ほんと、良かった!!
観終わった後、思わずため息とともに
「いい映画だった…」
と呟いてしまう作品があります。
めちゃくちゃ泣けるとか、気分がアガるとかそういうのではなくて、じんわりと心に沁み入る"いい映画"。まさに本作『Love、サイモン』はそういった作品です。
簡単に言えば「ゲイの若者のカミングアウト」についてのお話なんですが、ただそこから一歩進んで「自分らしく生きること」を描いた映画だと思います。
主人公のサイモンくんは、ゲイであること自体を悩んでるわけではないんですよね。周りの人たちに秘密にはしているけれど、それが自分だとちゃんと認識してる。あわよくば、メイクラブもしたいと思っている。
そもそも、「家族も友達も、カミングアウトしても受け入れてくれるだろう」という前提から出発していて、「同性愛者だから悩む」というところのその先を行っているんですよね。そこはとても現代(イマ)っぽいなと感じました。
進路だったり恋愛だったり、この年頃の子はいろんな悩みがあります。けれども、そういったことを乗り越えて「自分」になろうとするわけですよ。そんな若者の葛藤と成長を、優しい目線で描いているとても好感の持てる青春映画でした。
全体的に優しくて温かい
それから、基本的に悪人は出てこない映画なんですね。
いや、学校にはトランスジェンダーっぽい子を揶揄する悪ガキがいたりもするんですが、先生もそいつらにビシッと言うし(ちょっと認識がズレてるところはあるけど)、その子のメンタルが強いってのもあるけど大半の人は彼の味方なんですよね。サイモンくんの秘密を知ってキューピッド役を強要する子も、根っからの悪人という描かれ方ではなかったりして。
家族との信頼関係がしっかり築けているから、サイモンくん自身もとても優しいし(鈍感だけど)、そういう意味でもストレスの少ない映画ではありました。
もしかしたら、映画にリアリティやシビアな現実を見たいという人には理想的すぎて物足りないかもしれません。
でもわたしは、人間に対して「生産性」なんて言葉を安易に使ってしまう人がいる現実の一方で、こういったフィクションの世界の優しさに、どこか救われるような気持ちがしました。
ニック・ロビンソンの好演
主人公のサイモンを演じたのは注目の若手俳優、ニック・ロビンソン。ただわたしはどうしても『ジュラシック・ワールド』のマセガキのイメージが拭えなくて、そこまで好きな役者さんではなかったのです。でも、本作のサイモン役はドンのピシャ。
イケメンだけど、ちょっとぼんやりした目のニックくんは、オタクっぽくてサブカルな雰囲気のサイモンにぴったり。時折見せる憂いを帯びた表情は胸がきゅっとするほど切なくて、カミングアウトする前にゲイを揶揄している会話を聞いた時のなんとも悲しげな笑顔に、思わず「おばちゃん、抱きしめたい!」って気持ちになりました(ヤバい奴)。
なんだ〜ニック・ロビンソンてこんないい役者だったのか〜アンセル・エルゴートと区別つかんとか言ってごめんよ〜。
他の出演作も観てみようっと。
とにかく、みんな観て!
サイモンの「同性愛者だけがカミングアウトしなくちゃいけないのは不公平だ」という視点はユニークだなと思いました。どうやら原作があるらしいのね。
すげえタイトルだな…笑 未読ですがタイトルから察するに、おそらくこの「不公平だ」を掘り下げたような内容になっているのかもしれません。
「ブルー」は誰か?という謎で引っ張りながら、その正体も取ってつけたようではなくて、言えなかった理由も「なるほどな〜」と思わせるし、自由の国アメリカでも複雑な背景を抱えたキッズたちもたくさんいるんだなと改めて感じたりして。
あと「君の名前で僕を呼んで」を観た時も思ったけど、こういう時にそっと寄り添える親でありたいよなぁ。でもそうなるにはきっと日々の積み重ねが大事なんだよな、としみじみ。
それから楽曲もすごくよくて、ブレントン・ウッドやホイットニー・ヒューストン、Jackson5なんかの往年のヒット曲がかかるシーンも粋で、とてもアメリカ〜ン!サイモンたちが授業でミュージカルを演じることになるのですが、それが道ならぬ恋を描いた『キャバレー』なのも象徴的でしたね。
というわけで、あんまり内容には触れてませんが、ほんといい映画なのでみんな観て!という感じ。
どんな若者にも、明るい未来がある。そんな温かいメッセージに溢れた映画のように思いました。
おすすめです!!!
作品情報
- 監督 グレッグ・バーランティ
- 製作総指揮 ティモシー・M・バーン
- 原作 ベッキー・アルバータリ『サイモンVS人類平等化計画』
- 脚本 エリザベス・バーガー、アイザック・アプテイカー
- 音楽 ロブ・シモンセン
- 製作年 2018年
- 製作国・地域 アメリカ
- 原題 LOVE, SIMON
- 出演 ニック・ロビンソン、ジェニファー・ガーナー、ジョシュ・デュアメル
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