あらすじ
市役所で働く天雫健太郎(星野源)は真面目で几帳面、趣味は貯金という35歳。人との付き合いを極力避け、仕事が終われば自宅に直行、休みの日は部屋にこもりっきり、もちろんこれまでに恋人がいたことなど一度もない…。そんな息子の様子に見兼ねた両親(平泉成・森山良子)は親による婚活パーティーに出席する。けれどもあまりに魅力に欠けるプロフィールのためか、声をかけてくれたのは今井家の両親(大杉漣・黒木瞳)一組だけだった。
そんなこととはつゆ知らず、ある日健太郎は夕立に降られた美女(夏帆)に傘を貸す。実はその美女こそ、今井家の娘・奈穂子だった。お見合いの席で再会を果たした二人。そこで健太郎は、奈穂子が全盲であると知らされ…。
- あらすじ
- 正直言って、星野源目当てです
- 今作の魅力は主演の二人!それ以外は…。
- シリアスかコメディか、どっちのスタンスで観たらいいのかわからん。
- 親が障害、という時代錯誤感。
- 他にも謎なところがいくつか。
ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」通称「逃げ恥」にハマり、今ではもうすっかり星野源のとりこなわたくし(笑)。
いやーついこの間まで「つうかこの人なんでそんなに人気者なの?」と彼の魅力がさっぱりわからず鬼スルーしていたのに、今じゃ毎週ラジオを聞き、CDを聞き、出演作をチェックしたくなるくらいのハマりよう。惰性で見ていた真田丸も最後は秀忠寄りに見ちゃってたって言うね(笑)。
もう今の気分は、星野源サイコーウェーイ!!である。
正直言って、星野源目当てです
そもそも逃げ恥を見るきっかけになったのはアバウト男さんのブログ。
多分これ読まなかったらおそらくこのドラマも見なかったし、星野源の魅力に気づくこともなかったろうなぁ…アバウト男さんには感謝です。
そんな星野源の初主演作である本作。この手のラブストーリー邦画はどうにも苦手で、わたしの中の「絶対観ることはない映画フォルダ」に入っており、劇場公開中はもちろん、レンタルが始まっても、
盲目の美女と童貞の恋〜?はぁ〜?そんなん誰が見んの〜?
…って鼻ほじりながらガン無視ガンスルーしておったのでごさいます。
でまぁつい最近になって、星野源目当てで観てみたんですがね…うん、これがまた、いい意味でも悪い意味でも予想外でした。
以下ネタバレしています。
今作の魅力は主演の二人!それ以外は…。
星野源演じる健太郎は、職場のデスクの鉛筆一本に至るまで寸分の狂いなく整理整頓しており、手洗いも入念に行うという潔癖症気味な男性。そして表情や動きがちょっとキモい(笑)という、こじらせ童貞を過剰にデフォルメしているキャラクターなんですね。そして夏帆演じる奈穂子も、これまた儚げで透明感があって、「盲目の美少女」というステレオタイプから最後まで逸脱することはない。
どちらも「こんな奴いねーだろ!」ってキャラなんですが、主演の二人がとても活き活きと演じているので、そこは違和感はありつつもフィクションとして許容できる範囲。
そんな二人がぎこちなくも距離を縮めて行く様は微笑ましく、ほのぼのとした気持ちにさせてくれます。
吉野家で奈穂子が左利きと知ってこっそり右側に席を移動するところとか、初チューで眼鏡が邪魔だと気づいて、デートにコンタクトして行くところとか…かわいい、かわいいぞ健太郎。
奈穂子は奈穂子で、吉牛行きたい、ラブホ行きたい、となかなかぐいぐい来る系で天使な見た目とは裏腹に積極的…って男の夢の具現か!そしてやはり声を大にして言いたいのは、夏帆ちゃんの裸体の背中の美しさ!それから二人が初めて出会うシーンでの夏帆ちゃんの、虚ろなようでいて射抜くような目線の演技がとてもよかった。あんな風に見つめられて恋に落ちない男なんていないだろ!いやー、いい。いいよ奈穂子。
奈穂子の目が見えないという障害が二人とっては「恋の障害」とならず、むしろ二人を強く結びつけるものになっているというのがまた、この二人を愛しく思えるポイント。自然と彼らの恋を応援したくなります。
ただ、この「盲目」という観点において、監督や制作陣がそこまで重きを置いていたかどうかは疑問なところ。第三者がそれを指摘することはないし、奈穂子側にもそれ故の葛藤が描かれることも、苦労について語られることもないんです。
要は「盲目である」ことが、「親が結婚を反対する」ことの理由づけとして、または「恋は盲目である」ということの暗喩としてとしか機能していない(ように見える)のは今作の最大の欠点だろうと思います。
もし、見合いの席で健太郎が言ったような「見えないからこそ見えているものがある」の表現手段としてのものなのだとしたらあまりに陳腐すぎるし、その程度のことを言いたいがためにハンディキャップを持つキャラクターを出したんだとしたら、それはさすがにちょっとどうなのかと思ったり。
シリアスかコメディか、どっちのスタンスで観たらいいのかわからん。
まぁ前半は割と真っ当な(?)ラブストーリーなのですが、後半になると次第におかしな方向へ。
いや、前半にも「これ笑いどころなのかな…?」みたいな判断に困るシーンが度々あるんだけど(もちろん普通にクスっと笑えるシーンもある)、「あれ、これって笑っていいところ?それとも真面目に観るところ?」ってだんだんわからなくなっていくんですよね…。特に終盤の展開は笑うに笑えないというか、むしろ「どうしよう…」って気持ちで観てましたね。
この辺りのアンバランスさが今作の良さでもあるのかもしれませんが、わたしは正直ついて行けなかったです(苦笑)。
いろいろあって互いの親から交際を反対され、引き離された二人。それでも互いを思う気持ちは募るばかり…。意を決し、これまで無遅刻無欠席だった仕事を早退して健太郎は奈穂子の家へと走り出す。
必死の形相でベランダをよじ登り、再会を果たす二人。奈穂子は健太郎を招き入れ、二人は肉体的に結ばれ…ようとするのですがそこへ奈穂子両親が闖入。健太郎は父親にボコられ、勢いあまって素っ裸のままベランダから転落…。大怪我を負って、入院生活を送ることになった健太郎は点字で奈穂子に手紙を書きます。奈穂子はその手紙を読みながら嬉しそうに微笑んで、映画は終わります。
わたしはこの終わり方(手紙という恋の原点回帰という着地)はとてもきれいだと思ったし、わたしはふと、二人のウェディング姿が頭に浮かんだんですね。おそらく、映画を観ていた人が高確率で期待するだろうその姿を、これ見よがしに映像で見せずに、暗に想像させるに留めたところに好感を持ちました。
ただそれまでがな…。「ベランダをよじ登る→蛙の声真似」の謎感もあり、いや、そこはまず奈穂子とやる前に父親に面と向かって許しを請うのが筋じゃないの?と思ったんだけど、童貞ラブコメとしてならあの流れはありだったんすかねー(1度目はEDだった健太郎が2度目では勃って「やった!」と喜ぶのはよかったですけど)。
健太郎が2度にわたり(童貞を捨てようと試みる度に)大怪我を負う=「恋をすれば傷だらけになる」ってことなのだろうし、30代の童貞が10代の童貞みたいなことをしちゃったらそれはもう大事故になるよ、って話なのかなぁとも考えれば愉快に思えなくもなかったり…。まぁそこは好みなのでしょうなぁ。
親が障害、という時代錯誤感。
前述の通り、奈穂子の目が見えないことは二人の恋を阻むものではない。じゃあ二人の恋の障害は何かと言ったら、互いの親なんですね。
奈穂子父はもともと健太郎を快く思っていないし(「役所勤めで昇進もしていないのは向上心がないからだ」)、健太郎が奈穂子をかばって交通事故に遭ってしまったことで、健太郎母も奈穂子を遠ざけようとする。実はこの父親と母親、「子どものため」と言いながら、実際はその行動が子どもをだめにしていると気づいていない。子離れできていない、というか、子どもを手放したくない親。「親が結婚の障害になる」なんて話、今時普通の映画じゃやらないですよ。だからこそ、劇中で直接和解がなされた描写がなかったのは少し残念でしたね。
ある種母性の暴走を体現したような森山良子のセリフ(「(奈穂子の失明の原因は)遺伝性のものですか?」とか「触らないで。…聞こえなかった?あなた、耳まで悪くなったの?」とか)にはぞっとさせられましたけど。
他にも謎なところがいくつか。
健太郎が事故にあった時に奈穂子父が「慰謝料や治療費はこちらが持とう」とか言ってたんだけど、いやいや、お金払うのはあんたらじゃなくて車運転してた人なのでは?
あと、健太郎が初お見合いの時に奈穂子父に意見するのも、「人の目を見て話せない」って言ってる人が初対面の人にこんな事言えるかな?とキャラ設定が序盤からブレているように思えて気になりました(その後叫びながら部屋をめちゃくちゃにするのも…あれ必要だった?)。
それからわたしはそもそも「男を叫ばせながら女の元へ走らせる」って演出が好きではなくて。あえて走らせる=その非効率性から愛情の深さと必死さを表しているのもわかるし、ある種の比喩でありファンタジーのラインにあるとも理解しているんだけどね。でもつい「いや、そこはタクシーでもいいっしょ」と冷めた目で見ちゃう…「そんなこと言うお前にラブ系映画を語る資格なし!」と言われたらそれまでですのでこの辺りでやめておきます(汗)。
というわけで、わたしは映画的には好みではなかったですが、星野源と夏帆を愛でるには最高の映画でした。豪華出演者の方々(平泉成はどこまでいっても平泉成。)は抜群の安定感でそこは安心して観られる映画だと思います(ヤリマン呼ばわりされちゃう同僚も、味があってよかった)。
高田漣さんののんびりとした音楽も愛らしい二人の様子と合っていて素敵でしたし、エンドロールで流れる細野晴臣の歌も、余韻があってよかったんじゃないかと思います。星野源を持ってこないところがニクいね。
ちなみに、奈穂子は処女ではなかったんだよね?あ、別にそこは追及しなくてもいいか。
イラストのセンスが抜群なあのまりさんの今作の記事。星野源への言及がめちゃくちゃ面白いです。
次はこれを観ます。
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作品情報
- 監督 市井昌秀
- 脚本 市井昌秀、田村孝裕
- 音楽 高田漣
- 製作年 2013年
- 製作国・地域 日本
- 出演 星野源、夏帆、平泉成、森山良子、大杉漣、黒木瞳