あらすじ
小説家志望のイーディス(ミア・ワシコウスカ)は準公爵のトーマス(トム・ヒドルストン)と出会う。イーディスは自分の小説を褒められたことから彼に惹かれはじめるが、父から交際を反対され一度は別れを受け入れる。しかし、父親が謎の死を遂げ、遺産を引き継ぐことになったイーディスはトーマスと結婚し、トーマスの姉ルシール(ジェシカ・チャスティン)と歴史ある古い屋敷で暮らすこととなる。その屋敷は冬になると赤粘土が雪を真紅に染めることから「クリムゾン・ピーク」と呼ばれる山頂にあった。イーディスはその名が、死んだ母親の幽霊からかつて聞かされた土地の名だと気づき…。
- あらすじ
- ギレルモ・デル・トロ監督のゴシックホラー…うーん、ホラーっていうか…内容はほぼ火サス?
- この物足りなさはどこから来るのか?
- 怪しき姉弟…でも、なんだかなぁ〜
- 思わせぶりな小道具の数々…アレって結局なんだったの?
ギレルモ・デル・トロ監督のゴシックホラー…うーん、ホラーっていうか…内容はほぼ火サス?
実はレンタル開始されてすぐに観ていたんだけど、なんか感想書く気にならなくて、先月Amazonプライムのリストに入っていたのに気づいて改めて観返してみた次第。でも、所感が変わることはなかったです。
衣装やセットや大道具はものすごく凝ってるし、お金かけてるなぁ〜という感じは伝わってくるんですけど、いかんせんお話が「…で?」なもんで…。一応幽霊は出てきますが、そこまで話に絡んでこない。出てこなかったとしても、多分そんなに支障はない気がする…。そして出し方が「えっそこで見せちゃうの?!」って感じなので、怖さは全くない(笑)。
デル・トロさんて、いわゆるホラー的な演出ってそんなに意識してないんだと思うんですよ、多分。
デビルズ・バックボーン スペシャル・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/12/10
- メディア: DVD
- 購入: 1人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (32件) を見る
これに出てくる幽霊もビジュアル的にはイカしてるのに、出し方がね…全っ然こわくないの。でもこの映画を最後まで面白く観られるのは、歴史的な背景とか、登場人物たちが背負っている悲哀とかが物語に絡んでくるからなんですよね。また、「信管の抜かれた不発弾」というモチーフが効いていてラストのカタルシスへと繋がっていく。
でも、今作にはそういった深みとか悲しみみたいなものが残念ながら全く感じられないの。
トーマスとルシールの姉弟の関係性は序盤から(というかあらすじから)大体想像がつくので、件のシーンで別に驚きも何もない。でもそこに二人の葛藤や悲哀が表れていればもっと深みのある話になったはずだと思うんですよね。
で、一番の問題は主役のイーディスですよ。金持ちのお嬢さんって役柄なんで仕方ないのかもしれないけど、いろいろ鈍感すぎやしません?まぁ、世間知らずなお嬢様がいろいろ経験して成長する話、と考えれば納得もできそうですけど…。
でもさ、やっぱりちょっとどうかと思ったのは、初夜で服着たままって!トムヒがケツ出して頑張ってるって言うのにさぁ〜(笑)。
以下ネタバレありです〜。
この物足りなさはどこから来るのか?
構成としては、イーディスがトーマスと恋に落ちるアメリカでの前半、そのトーマスとその姉ルシールの正体が判明していくイギリスでの後半とに分かれるかと思います。
一応セットや描き方にこだわりがあるようで、アメリカパートでは画面がどことなく暖色系で明るめ、イギリスパートでは寒々しい寒色系、と色味にも差があります。けれどそれが映画の中でそこまで功を奏しているのか…と問われると難しいところ。ただ、雰囲気づくりは本当によくできていると思います。ていうかね、雰囲気、しかない。みたいな。
「厳かな」雰囲気、「怖ろしげな」雰囲気、「怪しげな」雰囲気…。雰囲気はとても大事。でもやはり、それだけで映画は成り立たないのも事実。
登場する幽霊のビジュアルも、デル・トロらしい禍々しさに溢れていてとても好きなんだけど、でも彼女らの存在意義が最後まで謎なんですよ。
なぜ、母親の幽霊は「クリムゾン・ピーク」を知っていたのか?屋敷の幽霊はイーディスに何を伝えようとしたのか?全てに答えをつける必要はないですが、そういった「腑に落ちなさ」が結果的に物足りなさに繋がっているような気がします。
怪しき姉弟…でも、なんだかなぁ〜
困り顔王子トムヒと眼力で人を刺せそうなジェシカ姉弟の尋常ならざる佇まいはとてもいい。
ただね、登場した時からもう大概怪しいんですよ、この姉弟。「目当ては小娘の金か…」と、登場人物たちが感じてるし、観客もそんな気持ちで観てる。
でも、厳かなお屋敷(でも天井に穴)を見た時は、「おや、もしかして、実は100年前から生きてる吸血鬼の一族で〜って話だったりして!」と一瞬ワクるんですけど(またかって言われたらそれまでよ)、蓋を開けてみたら、やっぱり金目的でこれまでも何人もの小娘を手にかけてきた殺人鬼姉弟だった、と。
何この肩透かし感〜!!
で、二人は血の繋がりのある実の姉弟でありながら肉体関係を持っている、って言う。
何このありがち感〜!!
しかも、イーディスが二人のイチャコラを目撃するシーンで、ルシールがトーマスのズボンに手を突っ込んでいるのですが…そこは挿入中を見せんかい!と。いや、別にトムヒのおしりが見たいわけではないですよ(笑)。
でもやはりそこはちゃんとやってるところを見せないと、本妻であるイーディスの衝撃は伝わらないでしょ、って気がするんですけど。せんずってるだけという中途半端さが…なんかモヤっとするんですよね。
最終的にトーマスがイーディスを本気で愛してしまったことに怒ったルシールがトーマスの顔面にナイフを突き刺し、母親を殺した斧でイーディスに襲いかかります。
そこへ幽霊になりたてのトーマスがぼんやりと現れ(傷口から血が立ち上る様が「デビルズバックボーン」の少年の幽霊と似ている)、隙をついてイーディスはルシールをスコップで撃退。助けにやって来た医師のアラン(パシリムのベケット=チャーリー・ハナム)と故郷へ帰ったイーディスはこの体験を「クリムゾン・ピーク」という小説にして出版しましたとさ…。ってこの終わりも甘いっていうか軽いっていうかね…うーん。
思わせぶりな小道具の数々…アレって結局なんだったの?
血を連想させる真紅の赤粘土とそれを掘削するどでかい機械。そして地下室の大量の赤粘土の入った樽。この場所で夥しい血が流されたと認識させられる不気味なビジュアルに、デル・トロの美学を感じます。
けれどもそれらのほとんどは雰囲気づくりの一部と成り下がってしまっていて、効果的な活躍を見せることが最後までなかったのは残念。
樽の表面に赤い幽霊(骨と化した遺体?)がぬーっと浮いてくるという目を見張るようなシーンなんかもあるんですが、基本「ただそこにあるだけ」なんですよ。
せっかくイーディスが白い衣装を着てるんだから樽に沈めて血染めにするとか、幽霊がルシールの足を掴んで赤粘土に引きずり込むとかしてもよかったんじゃないかと。
特に掘削機は序盤に出てきたミニチュア版が素敵だっただけに、何の見せ場もなかったのが本当にもったいない。最後のイーディス対ルシールの対決の時に動かして、ルシールに見るも無残な死に方をさせるってこともできただろうに。スコップで一撃ってどうなのよ!
監督含め、公式には「ゴシックホラー」ではなく「ゴシックロマンス」とされているようなので、そういった意味でもホラーとして観るのは間違いなのでしょう。と言ってもラブストーリーとしても重くも深くもないし、なんか全体的に話は薄ーいです。
見た目はすごく仰々しいのに味のしないフランス料理のフルコースを食べたような気分、って言ったら伝わりますかねぇ…。
でも豪華な衣装やセット(お屋敷は実際に6ヶ月かけて建てたらしい!クリムゾン・ピーク 特集: ファンが待ちに待った「パシフィック・リム」に続く最新作、ついにキター!!デル・トロが作った、ギミック満載の“美しきお化け屋敷”があなたを待っている! - 映画.com) は観ていて楽しいし、ミアちゃんはかわいいし、おどろおどろしい世界観はいかにもデル・トロ監督らしいのでファンは楽しめるかと。あと、パシリムのゴッドリーブ役のバーン・ゴーマンも出てるんで、パシリムファンも観て損はないと思います。
すごく好きなデル・トロ作品。でも悲し過ぎて何度も観るのはつらいのです…つらいのですよぅ…(泣) 。
作品情報
- 監督 ギレルモ・デル・トロ
- 製作総指揮 ジリアン・シェア
- 脚本 ギレルモ・デル・トロ、マシュー・ロビンス
- 音楽 フェルナンド・ベラスケス
- 製作年 2015年
- 製作国 アメリカ
- 原題 CRIMSON PEAK
- 出演 ミア・ワシコウスカ、ジェシカ・チャステイン、トム・ヒドルストン、チャーリー・ハナム