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エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる【映画・ネタバレ感想】君のための嘘の上書き保存★★★★(4.0)

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エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる (字幕版)

あらすじ

 見知らぬ美女フリアの家で目覚めたフリオ。昨晩の記憶がないながらも、どうやら彼女と一夜を過ごしたらしい。…だがどうも、街の様子がおかしい。見れば上空に巨大なUFOが浮かんでいるではないか!

驚愕する二人だったが、それよりも問題なのは、フリアに本命の彼氏がいたこと!世界の終焉そっちのけで、隣人のアンヘルも巻き込み、浮気隠蔽を図るフリアとフリオ。しかし、自体は思わぬ方向へ…。

 

 

 11月にアン・ハサウェイ主演の怪獣映画『シンクロナイズド・モンスター』の公開が控えているナチョ・ビガロンド監督の見逃していた作品。最近Netflixに入っているのを発見したので鑑賞しました。

 

 これは面白かった!好きな部類のやつ!!

 

 

洒脱なセリフの会話劇 

 まず、設定がいい。「空に浮かぶ巨大なUFOの下で、男女が惚れた腫れたで大騒ぎする」っていうマクロとミクロ感。それから、浮気がどうこうって言う下世話な話なのに、ちっとも下品じゃないの。洒脱なセリフが多く、かつユーモアもある。些細な嘘やちょっとした一言から話が転がってく脚本の妙は会話中心の舞台演劇のようです。

 

 じゃあセリフや会話だけの映画なのか、というと全然そんなことはなくて、暗がりで寄り添うフリオにフリアが「そのうち目が慣れるわ」と言ってからふわっと暗闇が和らいだり、爆発の光を受けたフリオが後光が差しているように見えたり、ラストシーンの空に浮かんでいるUFOが妙にキレイだったり、時々はっとするようなルックがあったりもします。

 ビデオカメラを使ってビルから見切れているUFOをテレビに写すとか、予算の少ない分をアイデアとセンスでカバーしているのも好印象。このビデオカメラが後でロマンチックな使われ方をするのも良かったな。

 

ダメで愛しいキャラクターたち

 登場人物はフリアとフリオ、フリアの彼氏カルロスとフリアに思いを寄せる(というかほとんどストーカー)の隣人アンヘルというほぼ4人のみ。

この4人の男女がほとほとダメな人たちなんだけど、それぞれに共感してしまうというか。キャラクターがしっかり立ってるんですよね。なので観ている人によって、4人のうちのいずれかに感情移入してしまうはず。 

主人公のフリオは頭はいいんだろうけど、良くも悪くも平凡な男という感じ。

3人の男を振り回すフリアは女性ウケは絶対にしなそうなんだけど、驚いた時の表情や目で合図する仕草なんかがキュートで、恋に落ちちゃうのも頷ける。スタイルも抜群。

フリアとフリオの仲を微塵も疑わない人の良いカルロス。真面目で正義感もあるけど、思い込みが激しいところも。

 わたしが特に好きだったのはストーカーのアンヘルですね(演じているのはわたしの大好きなカルロス・アレセス)。彼の去り際のセリフには、思わずうるっときちゃったよね…。報われない恋をしたことのある人なら刺さると思う。
 

ちょっと変わった洒落たラブストーリーが観たい人におすすめです。

そう、これラブストーリーだからね!SFじゃないんだよ!このなんともアカン方のB級SFぽい日本版のジャケは、ほんと詐欺だと思います。再考して!

 

 本当におすすめなんで、まだ観てない人はこんなクソみたいな文章は読まずにネトフリかTSUTA屋さんへGO!

 

 予告も置いとくよー。(でも気になる人は後で観た方がいいかも!)

 エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる (予告編) - YouTube

 

 

以下ネタバレ!

 

 

 

 

 

地球最後の浮気?些細な嘘が勘違いと思い込みで転がっていく!

 あらすじの先を言っちゃうと、フリアとフリオは浮気に勘付いているアンヘルをなんとかしようと画策します。「宇宙人はもう地球に紛れ込んでいるかもしれない…」などと『ボディ・スナッチャー』ライクなことを言っているカルロスに「アンヘルの様子がおかしい!もしかしたら宇宙人なのかも?」などと吹き込んで不安を煽り、アンヘルを拘束して外へ追い出します。そんな一連の嘘の共同作業をしているうちに浮気から本気へと変わっていくフリアとフリオの関係。UFO襲来=世界の終わり?という吊り橋効果も手伝って二人の恋は燃え上がる。

 目を盗んで手を触れ合ったり暗闇に乗じてカルロスがいるのにやっちゃったり(笑)。フリオはUFO監視用のビデオカメラを眠っているフリアの方へ向けて寝顔を見て幸せそう。

 そしてついに、一人で外の様子を伺いに行った邪魔者カルロスを「お前本当は宇宙人だろ!」と難癖(笑)をつけて閉め出すことに成功。晴れてフリアとフリオは二人きりになれたのでした。

 ところが、ブチ切れたアンヘルが戻ってきて、「フリアはフリオとやってる!」と隣のビルから大声で叫び、横断幕まで掲げるという暴挙に出る。

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エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる (予告編) - YouTubeより このシーン、めっちゃ笑った!テニスマシンで「やってる」って書いたボールを打ち込むとか、どんだけ労力かけてんだ。最高だよアンヘル!

 一方、出て行ったカルロスは、本気で地球は宇宙人に乗っ取られていると思い込み、「世界は俺が守る!」とばかりにテレビ局を占拠。キャスターも宇宙人だと決めつけて拘束するなど、正義感が暴走。けれどもフリオはそんなカルロスの「フリアが信じるまでやめない」と言う言葉から、フリアへの思いを強く感じ、身を引く決心をします。

 アンヘルを逃し、フリオは一人カルロスの元へ。自分で作ったコーヒーショップの宣伝カーに乗り込み、宇宙人のフリをして!フリオはカルロスに「自分以外に宇宙人はいない、テレビキャスターが宇宙人なら仲間が助けに来ているはず」ともっともな説得をしてキャスターを解放させる。同じ頃、フリアはフリオの残して言ったビデオレターを見ていた。そこには「何度も言おうと思って言えなかったけど…愛してる」と語るフリオの姿が。

 フリオはキャスターとともにテレビ局の屋上から夕焼けの街を見下ろしていた。そこにはまだUFOが浮かんでいるのだった…。

 

 

 …と、こうやって文字にすると、アホでゲスい奴らの話っぽいですが(いや実際そうなんだけど)、映画で観るとね、これがなぜかいい話なんだよ!

わかってほしい〜伝われ〜!

 

 

主役はアンヘル

本作の実質的な主役はアンヘルだとわたしは思ってます。

彼は常にフリアの様子をうかがっていて、その姿はストーカー一歩手前(いや、もうそうなのかも知らんね)。彼氏持ちのフリアをひたすら思い続けてるわけです…そこ、キモいとか言わない(笑)。

 でも、そんな彼の実際の気持ちがよくわかるのが、フリオから逃がしてもらうシーン。

 アンヘルはその時、フリオに「感謝してる」と言うんですね。

「この状況から抜け出したかった。つらかった、迷惑だとわかっているのに去る勇気のない自分が」と…。

なんかね、彼の痛みがわかるなぁ、と思って、ちょっとぐっときちゃったよね。報われない不毛な恋は辛いけど、それよりも辛いのはそこから抜け出せないことなんだよなぁ…って別にわたしストーカーだった過去なんてないですけど。

 4人の中できっと一番成長したのがアンヘルだったろうな。フリアなんて尻軽女は忘れて幸せになれよ! 

 

 

語り過ぎない語り口

 それから、本作の特徴として鑑賞者の想像に任せている部分が多いところ。そもそもUFOがなんで浮かんでいるのかもわからない(おそらくUFOは恋=「突然やって来るもの」とかの暗喩なのでそこは無視が正解なんだろうけど…)って多分アレでしょ、マクラーレンだかマグニフィセントセブンみたいなアレでしょ(マクガフィンです)。

 「フリアとフリオはどこでどうやって出会ったのか?」「昨晩は本当のところやったのかやってないのか?」「アンヘルはなぜあそこまでフリアに固執するのか?」「フリアの本当の気持ちは?」…などなど。それに、それぞれの嘘や思い込みが最後まで正されることはない。

 嘘や思い込み、憶測や勘違い、本音と駆け引き。恋をすれば誰もが陥る泥沼を「宇宙人」というモチーフを使って面白おかしく描いていたのかなーと思います。

 

 

そんなわけで、わたしは大変気に入りました、この映画。

でも、タイトルや日本版ジャケで宇宙人襲来ものや、サバイバルSFと思って観ちゃう(もしくは観ない) 人がいたとしたらもったいないなぁ…。

  また一つ、好きな映画が増えました。

 

 

 キーラ・ナイトレイが出ているこちらの映画とはなんの関係もありません。これも結構好きな映画です。

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 これもジャケ詐欺案件なナチョビガロンドの初長編作。タイムパラドックスもののお手本みたいな作品です。 クローネンバーグがリメイクするって話があったみたいだけどどうなったの?

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こちらはイライジャ・ウッド主演で、全編PC画面のみという斬新なスタイルなナチョビガロンド監督作。ただ、ハッカーものって「俺様無敵!」系が多いからわたしはちょっと苦手です(笑)。

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作品情報
  • 監督 ナチョ・ビガロンド
  • 製作総指揮 ナイカリ・イピニャ、エンリケ・ロペス・ラビニュ、ベレン・アティエンサ、ギャレット・バッシュ
  • 脚本 ナチョ・ビガロンド
  • 音楽 ホルヘ・マガス
  • 製作年 2011年
  • 製作国・地域 スペイン
  • 原題 EXTRATERRESTRE/EXTRATERRESTRIAL
  • 出演 フリアン・ビラグラン、ミシェル・ジェネール、ラウル・シーマス、カルロス・アレセス