あらすじ
カーレースで初の優勝を目指すルーキーレーサーのマックイーン。自分一人でレースに勝てると豪語し、ピットクルーに愛想を尽かされてしまう。優勝決定戦の地、カルフォルニアへ向かう途中、トレイラーのマックから誤って降ろされてしまったマックイーンは、ルート66上にあるさびれた町、ラジエータースプリングスに迷い込む…
めっちゃ車。
いや、驚きました。
何がって。
ぜんぶ車だった!!
人がでてこない!!
てっきりトーマス的世界観だと思っていたんです。車は擬人化されているけれど、人は存在する世界なんだと。
ところが、最初のカーレースのシーンで、観客まで車(笑)。
そして家畜も、虫まで車化していることが判明。
完全なるモータリゼーションですよ!
ネタバレあります。ご注意ください。
まさかの地方再建映画だった
話はね、かなり面白かった!
見た目あんなくるまくるまして、子ども向けですよ〜って推し方してんのに、話の内容は全く子ども向けじゃなかった。いい意味で、想像と全く違いました。
でもこれ、子どもに理解できるのかな?
田舎へ紛れ込んだシティボーイが、すたれた町をはからずも再建するっていう。要するに、地方の夢の話でしょう(乱暴)。
いや例えばね、連戦連勝のレースカーが大クラッシュで故障、スクラップ寸前のところで廃車同然の車たちに助けられ、再起を目指す…なんて話の方が分かりやすいし、いかにもスポ根って感じでしょうに。もちろん大クラッシュの原因は悪いレースカーで、そいつが悪役ね。
でもそういうベタな方向に持って行かなかったところが、ジョン・ラセターやっぱり単純にすげぇなってね。
道を直せって話になっても、全くこの映画がどこへ向かうのかさっぱりわからなかった。
まさか地方再建の話になるなんて!
カーレースは都市消費の象徴であって、話の舞台はあくまで地方経済。
なんだよ、もう完全に大人向けじゃん!
都市VS地方
挫折した弁護士サリー、元レースカーのドクは都市消費からのドロップアウターで、前者はポジティブな動機、後者はネガティブな動機で地方に居つく。
都市への憧れを捨てきれないドクは、都市の象徴であるマックイーンを町から追い出そうとする。
かたや町への愛にあふれるサリーは都会者のマックイーンを町にとどめる。
この対比もね、ベタだけど、うまいよね。
都市を嫌っている人ほど実は都市に憧れていて、自分の居場所はここ(地方)ではないと思っている。
都市生活に失望した人は地方こそ自分の居場所だと思う。
ただ、地方ラブ思考が21世紀に入ってから特にアメリカ映画では色濃いように感じるのだけれど、これはある意味危険な話にもなるんだよね。
中盤、道路をあらかた直し終えたマックイーンが、一時自由の身になり、都市へ戻ることが可能だったのにも関わらず、田舎に留まる選択をするシーンがあって。この流れって、もしやの『砂の女』的展開?と思って一瞬ぞっとしたんだけど。
もしこのまま都市の生活を捨てたら閉じた世界(クローズドサーキット)の話になってしまうじゃないか、と。こわいこわい。
結局マックイーンは(自分の意思ではないにせよ)再びカーレースの世界(都市消費)へ戻る。田舎暮らしに慣れた彼にとってはもう、都市の世界は異質なものになっているのね。観ているこちらもカメラのフラッシュや大勢の観客の熱狂に居心地の悪さを感じるようになっている。
いやいや、その画の見せ方もね、うまかったね〜。
最終的には彼は勝ち負けを重視する都市的価値観からの脱却を選択し、観客から賞賛を得る。
そしてラジエータースプリングス=地方経済に消費をもたらすことに成功するのでした。
車に詳しくなる★
車が欲しくなる☆
でもグッズは欲しくなる★★★★★
総合★★★★☆(4.8)
2もあるようなので、気になります。
地方経済の都市化による弊害がテーマ
…だったりはしないよな。
*追記 2観ました。…1の流れ、全無視かーーーーいっ!!
作品情報
- 監督 ジョン・ラセター
- 脚本 ダン・フォーゲルマン、ジョン・ラセター、ジョー・ランフト
- 音楽 ランディ・ニューマン
- 製作年 2006年
- 製作国 アメリカ
- 原題 CARS
- 声の出演 オーウェン・ウィルソン、ポール・ニューマン、ボニー・ハント、ラリー・ザ・ケイブル・ガイ