あらすじ
英米軍合同によりケニアのナイロビで極秘作戦を開始するため、最重要テロリスト捕獲を目的として、無人偵察機ドローンが「空の目」となり、監視を続けていた。しかし、思わぬ事態が頻発し、急遽ドローンによる空爆が議論される。責任逃れをしようとする政治家、テロを阻止するためには多少の犠牲も厭わない軍人、民間人に被害が及ぶ攻撃に対して葛藤を抱える操縦士…。様々な思惑が絡み合う中、「現在の戦争」の実態があぶり出される。
観たの結構前なのですが、かなり面白かったので備忘録的に感想残しておきます。
今、そこにある戦場
これは、なかなか興味深く、スリリングな映画でした。ドローンによる空爆とそれに巻き込まれる人々。けれどそれを仕掛けるのはそこから遠く離れた、安全圏にいるお偉いさん方っていう。現在、まさに今起こっている新しい戦争の悲劇を描いているんですね。こんなことが世界中で起こっているのかと思うと、本当に末恐ろしい。
本作は、会議室で軍人やら政治家やら(ほぼおっさんですよ)が集まって「攻撃するのか?しないのか?」を延々と問答する映画です。『シン・ゴジラ』で第三形態ゴジラに攻撃しようとしたらおばあちゃんをおんぶするおじいちゃんを見つけて「射撃の可否を問う!」ってやってたけど、あるを延々と続けてるような感じです(乱暴)。
内容的には本当にそれだけなのにね、すごくドキドキハラハラするし、後味は悪いしね、いろんな感情が揺さぶられました。
繰り返される責任のパス回し
権力者たちは、やれ「法的には」どうだとか「政治的には」ああだとか言って、正当性を見出すために責任のパス回しをし続ける。そして、その無責任の果てに、犠牲がある。それが戦争なんですよね。いつの時代もそこは変わらない。
冒頭に「戦争の最初の犠牲者は真実である」という古の賢人の言葉を引用しておる通り、ブラックボックスで行われた決断が表に出ることはないし、おそらく公式にはある種の「不可抗力」としてこの件も記録されることとなる。
これが本当に恐ろしいことだと思います。
どこぞの独裁者に対して「アメリカがサクっと空爆してくれたら済むのになぁ〜」なんて鼻ほじりながら言ってるような人たちに是非観て欲しい映画です。そんな無関心、無神経さが国家に「戦争」 という罪を犯させるのかもしれないのです。
後々「こんなはずじゃなかった」と言わないよう、きちんと見極めていかなくては、と改めて思い至りました。
重たい映画ですが、観てよかったです。
作品情報
- 監督 ギャヴィン・フッド
- 製作総指揮 ザヴィエル・マーチャンド、ベネディクト・カーヴァー、クローディア・ブリュームフーバー、アン・シーアン、ガイ・ヒバート、スティーヴン・ライト
- 脚本 ガイ・ヒバート
- 音楽 ポール・ヘプカー、マーク・キリアン
- 製作年 2015年
- 製作国・地域 イギリス
- 原題 EYE IN THE SKY
- 出演 ヘレン・ミレン、アーロン・ポール、アラン・リックマン、バーカッド・アブディ、ジェレミー・ノーサム