あらすじ
元マラソン選手で、1956年メルボルンオリンピックの金メダリスト、パウル。現在は愛する妻マーゴと庭のりんごを育てながらのんびりと暮らしている。ある日、マーゴが転倒しケガを負ってしまう。それをきっかけに、一人娘ビルギットから介護の必要性を訴えられた二人は、仕方なく老人ホームに入居することとなる。
とはいえ施設での生活は工作や合唱など、健康なパウルには意味を見出せないものばかり。老人扱いされるのに我慢ならなくなったパウルはマラソンのトレーニングをはじめる。「ベルリンマラソンに出る!」と意気込むパウルに当初は呆れていたマーゴも、熱心な夫の姿にほだされ、かつてのようにサポートにまわる。そのうちパウルの栄光を思い出した入居者たちも、彼を応援するようになる。しかし施設の職員たちはそれを快く思わず…。
(パンフレット:700円 ページ割りにトラックを模していたり、こじんまりとマラソンコースのイラストが入っていたり、細かいところにこだわりがあって好き。コラムは精神科医の斎藤環氏。 )
ネタバレあります。ご注意ください。
走る老人=脅威?
走りはじめたマイレボリューション
けれども練習の最中、マーゴが病に倒れてしまいます。妻ががんに冒されていることがわかり、失意の底に立たされるパウル。
必死の願いもむなしく、その数日後、マーゴは亡くなってしまいます。 一人施設に戻ってきたパウルを入居者たちは優しく向かえます。けれども悲しみの中、パウルは自傷騒動を起こし、鎮静剤を投与され手足を拘束されてしまいます。もはや走る意欲も気力もない…。
そんなパウルを救ったのは、対立していた施設の堅物の仕切り屋ルドルフ(ルドルフは秩序を重んじる反面、若いミュラーさんにどさくさに紛れてセクハラするゲスな一面も)と、体たらく介護士トビアスでした。(介護士トビアスは勤務態度も性格も最悪で、パウルと庭で競争した時には、「300ユーロで勝ちを譲るよ」とかクズ発言したり(そして結局全力で負ける)。でも実は熱い男だったんだぜ!)
トビアスは規則を破り、パウルの拘束を解いて、マラソン会場へ連れ出します。 ルドルフは入居者をたきつけて、みんなでパウルの応援へ向かいます。
パウルは足を痛め、苦しみながらも必死に走ります。妻との約束を守るため、みんなの期待に応えるため。なんとか42.195キロを完走したパウルの目には、歓声をあげる娘と施設の入居者たちの姿が…
1年後、老人たちの主体性を重んじる賑やかなホームに生まれ変わった施設には、入居者と和気藹々と過ごすパウルの姿が。ミュラーさんは施設をやめ、子どもを救うためアフリカへ行ったことが語られます(ちょっと安直すぎ?)。娘はずっと支えてくれていた元カレと結婚し、赤ちゃんも生まれた模様。パウルが孫を抱きあげ、幸せな気持ちで庭のりんごの木を見上げて映画は終わります。
良きおじいちゃん映画でした!
日本ではもちろん、先進国では老人介護は大きな問題です。わたしの両親はまだそこまでの年齢ではありませんが、いずれは考えなきゃならない問題だな、と。
日本では暗めに描かれがちなこの問題を欧州ではわりとフラットに、さらっと描かれていることが多い気がします。
あとね、おじいちゃん映画観るたび思うんだけど、老人の扱いと子育てって、どこかやっぱり似てるなぁ、と。子どもは自分の限界を知らない、お年寄りはかつての自分も今と変わらないと思ってる。だから納得できるとこまでやらせてあげるのが一番なのよね。相手の気持ちを尊重してあげるということ。まぁこれがなかなか難しいんだけどね…。
ちなみに、邦題では「陽だまりハウス」となってますが、陽だまりなシーンはほとんどなくて、パウルが走っている時ってだいたい雨か大風なのね(笑)。
映画を観終わって帰る際、雨が降ってたのだけれど、思わず走って帰っちゃったよ!
そんなわけでだいぶ長文となってしまいましたが、誰が観ても幸せな気分になれる、素敵なおじいちゃん映画でしたよ!
自分と親の将来を考える★★★
雨の中を走りたくなる★★★★
総合★★★★☆(4.5)
1番好きな老夫婦映画。老人が銀行強盗して何が悪い!
こんな映画もあるよ。