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世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方【映画・ネタバレ感想】子ども版『ラ・ラ・ランド』!?「普通じゃない」ことを、楽しもう!★★★☆(3.6)

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世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方(吹替版)

あらすじ

 ドイツの真ん中に位置する、平均的で平凡な村ボラースドルフは、その平凡さが買われて消費者調査会社のモニター村となる。大人たちは平均的であることを喜ぶが、子どもたちはそれが不満でならない。しかも、普通からはみ出た老人たちがホームに連れていかれてしまったのだ!大好きなおじいちゃんおばあちゃんを奪われ、怒った子どもたちは大人たちに反乱を起こそうとするが…。

 

 

 わたし、ご老人が出てくる映画と子どもが出てくる映画に弱くってですね、大体それだけでもう高評価あげちゃうような感じなんですが、本作はどちらも出てくるし、かつどちらもかわいいって言うおじいちゃんおばあちゃん映画好き・子ども映画好きにはたまらない作品になっております。

 

 

キュートな子どもたちの『ラ・ラ・ランド』!

 出演している子はみんな、オーディションで選ばれた演技未経験の子たちだそうで、セリフはかなり棒読みっぽいんだけど、自由でのびのび、生き生きとしています。おそらく、子どもそれぞれの個性を大切にしながら撮影したのではないかと思います。キャラクター作りや演技指導なんかも、そんなにしていないんじゃないかしら。

やんちゃしているシーンは、素で楽しんでるのが伝わってきて、何より、みんなかわいい!

 

 それから本作、実は音楽も楽しくて(オープニングでかかる主題歌はしばらく耳から離れない)、ミュージカルシーンが何度かあったりするんです。

 特にこの、子どもたちがみんなで歌う「ねるもんか!」 のかわいさは最強です。日本語吹替版も素人の子使ったらしくて、音程のたどたどしさにキュンとしちゃう。

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 こちらの「どうすればいいの?」は大人が聞くと身につまされるというか、考えさせられるというか…。そういう意味でもこの映画、ただキュートなだけではないんですよね。自分が子どもの頃考えていたこと、そして忘れてしまったことを、改めて思い出させてくれた気がします。

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 ミュージカルと言えば、今年は『ラ・ラ・ランド』がありましたけれど、あちらは大人の男女が夢を追う・叶えるというお話で、またそれを肯定した映画でしたが、一方こちらは子どもたちが好き勝手して、しかも誰からもとがめられないという夢のようなお話(笑)。そんな、子どもたちの「夢」と「想像(創造)力」をミュージカルで表現し、彼らを応援するその姿勢はまさに、子ども版『ラ・ラ・ランド』と言っていいと思います。

 

 

自由さでは子どもに負けないおじいちゃんたち

 そして、本作で重要な役割を担う老人たち。

 このおじいちゃんおばあちゃんも、子どもたちに負けず劣らずやりたい放題するんですが、彼らの童心振りを見ていると、子どもと老人がいかに相似しているか、考えさせられるものがありました。どちらもとても、ピュアなんですよね。でも、その純粋性は彼らだけのものではなく、大人だって持っているものだ、というのが本作の回答です。

 大人になるとついつい、社会的責任や世間体、常識といったしがらみにとられて、逸脱を嫌いがちです。「こうでなければならない」「みんながしているんだから」。たしかにその考えは場合によっては美点となることもあるでしょう。でも本作では、本当はその逸脱="普通じゃないこと"にこそ価値があり、それを受け入れる素養は誰でも持ち合わせているんだよ、と言っているのだと思います。

 わたしも自分の子に対してあれはダメこれもダメ、あれしろこれしろ言ってしまいがちですが、所詮子どもなんて自分のしたいことしかしないんだし(笑)、どこかで諦めて受け入れてやらんとなぁ…と自らの教育方針を改めて見直したく思った次第です。

  

 また、本作のマスコット的存在であり、子どもたちの友人であるアカハナグマのクアッチ。クレーン車に登ったり、図書館から本をくすねたり、素敵なイチゴミルク製造装置を作ったり!

なんとCGは一切使ってないそうです。すごい。 

 

 

こんな町があったらいいのにな

 あと、本作は撮り方がちょっと面白くて、町の様子が引きで映し出される際に、いわゆる「ジオラマ写真」のように見えるように撮ってるんです(加工かあおりかレンズによるものなのかちょっとわからなかった)。

そんなポップでキッチュな映像が映画自体にファンタジックな印象を与えていています。本作はもちろんフィクションで、ありえない内容なんですが、そのふわふわとした映像の印象がまるで夢の中のようでもあって、どこか懐かしい気持ちにさせてくれるんですね。

…パンが空を飛んで運ばれてきて、水道からイチゴミルクがでてくる…そんな子どもの想像が現実になる「架空の町」――それは誰もが一度は夢に見た世界なのではないでしょうか。

 

 そんな町が世界のどこかにあってもいいんじゃないか、いや、あったらいいなぁと思わせてくれます。子どもは純粋に楽しめて、大人は童心に帰れる映画でした。

おすすめです!

 

 

 こんなんあるの?欲しい…。

 

 

作品情報
  • 監督  ファイト・ヘルマー
  • 脚本  ハンス=ウルリヒ・クラウゼ
  • 音楽  シャーリン・マクニール
  • 製作年 2014年
  • 製作国・地域 ドイツ
  • 原題 QUATSCH UND DIE NASENBARBANDE/FIDDLESTICKS