あらすじ
怪獣戦争終結から10年後。戦争の英雄スタッカー・ペントコストの息子ジェイク(ジョン・ボイエガ)は廃墟と化した街でコソドロのような暮らしをしていた。ある日ジェイクは、イェーガーの廃品を盗もうとした先で、自作の小型イェーガーを操縦するアマーラ(ケイリー・スピーニー)と共にPPDC(環太平洋防衛軍)に逮捕される。そこで彼は、義姉である森マコ(菊地凛子)と再会し、イェーガーパイロット訓練生を指導する教官としてPPDCへ帰還するよう命じられる。
同じ頃、シャオ産業が開発した無人遠隔操作イェーガーの導入が検討され、パイロット達は不満を募らせる。しかしその無人機こそが、新たな戦争の火種となるのだった…
どうでもいい長い前置き
あのデルトロ監督によるオタク魂ほとばしり映画、みんな大好き『パシフィック・リム』が帰ってきた!!
…わたしは続編やるって聞いて、最初は「え、別にやんなくてよくない?」ってちょっと東京オリンピックみたいな気持ちでいたんだけど、我が家の5歳児(長男)が、もう食らいついてきましてね。
2歳の時に初めてパシリムを見せたんだけど、ものすごいハマりようだったんですよ。段ボールでロケットパンチやチェーンソードを自作して、自らジプシーデンジャーになりきったりしてね。で、パシリムから怪獣、ゴジラ、恐竜、特撮ヒーロー界隈へと順調に?足を踏み入れて行ったのであります…。映画にも興味を持ってくれるようになったし、息子の世界を広げてくれたという意味でも、前作パシリムは息子にとってもわたしにとっても、特別な映画なんですよね〜。
ちなみに、前作のわたしの感想はこちら。
んで、待ちに待った予告編解禁…
どう?どう?みんな最初にこれ見た時どう思った??わたしはね、期待と同時に大いなる不満も生じました。
まず、
・足元のガッシャンガッシャンなカラクリが消えてる。→イェーガーの、あの無駄にアナログな造形が好きだったのに!!
やだ〜コレ一周まわってダサいからーー!
あと、これは本当に頭にきたんだけど、
・ハーマンのコミュ能力がアップしている。→え〜!真っ直ぐ人の目を見て話せない感じの、あのキャラが好きだったのに!
しかもなんか、偉そうになってるよ!!
あぁん(;´д`)ダメダメ、これは絶対にダメェ〜
…という感じでいろいろ気になるところはあったんだけど、でも最後の
イェーガー横並び!でまぁ帳消しになったわな(笑)。ロボたくさん出てくるじゃん!!
だからね、「きっと期待すべき所とそうじゃないと所があるんだろうな〜」という心構えで、長男といそいそと観て参りました!!
見終わってすぐの感想は、
めっちゃ喧嘩売りに来てるーー!笑笑
けどこういうの、嫌いじゃなーい!!(むしろ好き)
これはね、すごいっすよ。偉大なる前作に全力でカチコミしてきてますからね。
実際のところ、予告編を最初に見た時の印象そのままの映画でした。でもね、あれだけメンドクサイファンの多い人気作の続編ですよ。普通なら前作のファンや監督に媚びを売ってもいい所なのにさ、拳で殴りにかかってきてるんですよ!イヤ、これ前作のファンは絶対怒るだろうな…ってヒヤヒヤしながら見てました(笑)
とにかく、「前作の逆を!前作に無かったものを!」で作られてるんです。昼間の闘い、ロボとロボの闘い、ロボ同士の共闘、そして若い世代(もはや子どもとも言っていい年齢)の活躍、前作とは打って変わって陽気で明るく悲壮感のない話運び…エトセトラエトセトラ。こんなのパシリムじゃない!なんて声が聞こえてきそうです(特撮あるある)。
けどね、わたしはその媚びない姿勢に感服したし、デナイト監督、漢じゃねーか!って思ったよね。こういうの、わたしは好きよ。そういう意味でも、大人気作品の"続編"として及第点を与えても良いと思います。
*「パシリムの続編としては駄目だけど、単体で見たら悪くない」という意見もあるようですが、わたしはむしろ逆で、あの人気作パシリムの続編だからこそ評価に値する映画だと思います。コレ、単体だったら誰からも見向きもされないよ多分…。
歓喜の5歳児!
で、肝心の息子氏はというと…パンフレットと毎日一緒に寝ています(笑)。
「オブシディアンフューリーかっこよかったね!ジプシーアベンジャーもかっこよかったし、ガーディアンブラーボのなわなわもかっこよかった!ブレーサーフェニックス、ちょっとチェルノアルファに似てるね?セイバーアテナの背中にあるやつってさ〜」
…この息子の反応が本作の全てだとわたしは思ってます。
ロボットや怪獣が子どものものだとは言わないし、大人が楽しむことは全然アリだと思います。でもやはり、こういった作品における前提として、子どもたちが夢中になれるかどうかはとても大切だと思うのです。
確かに前作と比べたら悪い部分も多いし不満もある。けど、前作とは全く違うアプローチをしたことで、彼らの琴線にふれるものが増えたのも確かだと思います。(もちろん個人差があるので、本作がダメって子もいるでしょうが)
とにかく、子どもも満足してくれて、わたし自身も概ね満足のいく『アップライジング』でした。もし「評判よくないしな〜」なんて二の足を踏んでいる方がいましたら、きちんと自分の目で確かめてみることをおすすめしますよ!結局のところ、合うか合わないかは人それぞれなんだから。
以下ネタバレありで語るよ〜
好きな所
①イェーガーの共闘!
何がいいって、まず後半のロボット総力戦ですよ。パシリム1に足りなかったのはこのロボ同士の絡みだったと思うので、そこをしっかり見せてくれただけでもうお腹いっぱいです。
ロボがガシガシわけわかんないくらいあっちゃこっちゃしてて、しかも、ここぞ!というところでキメ絵かましてくるでしょ。こういう見得を切るの、戦隊ヒーローっぽくて好き。
パシリム1がカイジューをいかに不気味に見せるかにこだわったのとは逆に、今作はいかにイェーガーをヒーロー的に魅せるかに注力したのだろうと思いました。ここのところは成功してたんじゃないかな。
②怪獣が、おっきくなっちゃった!
やりましたね、これは(ニヤリ)。
わたしは予告に出てた小さいうじょうじょがいつ出てくるんだろう?と楽しみにしていて、奴らがワラワラ出てきた時には思わず「うへぇ〜」って変な声出ちゃった。
しかも、そのうじょうじょが集まってカイジュー同士が合体するなんて!ぅわーい!やれやれーぃ!…でも、こうなるとイェーガー側も合体して欲しかったよなぁ〜。それは次回作に期待かな?
③オブシディアンフュ〜リ〜〜!
めちゃくちゃかっこええ。
1番楽しみにしていたのがロボ対ロボだったので、それが見られてよかったです。
無人機がエイリアンに乗っ取られる、という展開も最初は全く予想してなかったので「そう来るか!」と素直に驚きました。
④アマーラちゃん
めちゃくちゃかわええ。ヤバない?
…てかね、アマーラちゃんを主役にして、訓練生パートをもっと深掘りして今流行りのブレックファストクラブ系に寄せて作っても良かったんじゃないかなと個人的には思いましたよ。カイダノフスキー夫妻の遺伝子(親子という設定が当初はあったらしい)を受け継ぐヴィクトリアとの絡みももっとあれば百合好き歓喜よかったのになぁ〜。
駄目な所
ぶっちゃけ、駄目さを挙げたらキリがない(前半が無駄に長いくせに展開が早すぎる、つーか東京じゃねーし笑からのマウントフジの距離感爆笑…などなど)んだけど、その中でも特にどうかと思った所。
①マコちゃんを返せ!
前作から続投の菊地凛子演じる森マコですが、なんと結構最初の方で死にます、呆気なく…。心の中で「イヤーーー!」と叫んだのはわたしだけではあるまい。
主人公ジェイクとの関係性もイマイチで、確執があったのかと思えばそんなこともないし、父スタッカーを巡って愛憎渦巻くやりとり(「親父は血の繋がった俺より血の繋がってないあんたの方を選んだんだ!」「そんなことないわ、ジェイク。"先生"はいつもあなたのことを心配して…」的な)があっても良さそうなのに何にもないし。むしろ義理の姉弟なんて設定にしないで、ちょっとした知り合い程度でもよかったのでは?
この2人に限らず、全体的にキャラの作り込みが浅い&キャラ同士の関係が薄いんですよね。ジェイクとネイトがエンジニアの女の子を巡って恋敵で〜みたいアレ、必要?訓練生たちの空気っぷりもどうかと思う。真剣佑、もっと頑張って次はセリフをもらうんだ!笑
てか、ローリーの現在の話が皆無だったのさすがに不自然じゃない?
②ニュートを返せ!(ハーマン心の声)
1番悲しかったのは変わってしまったニュートとハーマンのオタクコンビの関係性です。ハーマンがコミュ障じゃなくなったのもショックでしたが、まさか、まさか…ニュートがあんな、あんな…
リア充になってるなんてーーー!(違う)
まさーか予告編のこれがイェーガーではなくカイジューを応援しているセリフだったとはね…
しかし、このニュートのキャラ変には続編構想当初からデルトロも明言していたことではあるのでまあ致し方あるまい。でも、抱き合う2人がちょっと見られたから、よかったかな〜
ここから深読みタイムです。
けれどもこのニュートのキャラ変が、わたしが今作を評価している理由でもあります。
ニュートは前作でもカイジューを「ナイスな奴」と呼ぶなどコイツ人類よりもカイジューに肩入れしてるんじゃ?と思うような、元々"カイジュー寄り"なキャラクターでした。彼はデルトロのオタク趣味の代弁者とも言える役割を担っていたんですよね。
そんなニュートは、本作では完全に敵=カイジュー側。彼は何かって言うと、もう完全にデルトロ(及び前作のファン)を反映させたキャラなんじゃないかと思うんです。つまり、イェーガー=本作『アップライジング』そのものを滅ぼそうとする、デナイト監督にしてみれば倒すべき敵であり、壊すべき壁なんです。新型イェーガーをヒーローにして、イキリオタクをぶちのめす…おそらくそれが裏テーマだとわたしは受け取りました。
てめぇらのこだわりなんて知らねぇよ!ってね。特撮愛が〜怪獣リスペクトが〜とか一生言ってろよクソが!ってね。
わたしはね、そのオラオラっぷりがねー、なんかたまらんのよ!!
…とまぁいろいろ書きましたが、
『インディペンデンス・デイリサージェンス』みたいな終わり方だったから、次もどうせやるつもりなんでしょ?だったら3作目はやはりデルトロに戻ってきてもらって、有終の美を飾って欲しいな。
作品情報
- 監督 スティーヴン・S・デナイト
- 脚本 エミリー・カーマイケル、キラ・スナイダー、スティーヴン・S・デナイト、T・S・ノーリン
- 音楽ローン・バルフェ
- 製作年 2018年
- 製作国・地域 アメリカ
- 原題 PACIFIC RIM UPRISING
- 出演 ジョン・ボイエガ、スコット・イーストウッド、ケイリー・スピーニー、菊地凛子