あらすじ
第二次世界大戦後のデンマーク。海岸線に埋められた地雷を除去するため集められたのは、元ナチスドイツ軍の少年兵たちだった。粗末な小屋で満足な食事も与えられず、棒きれ一本で地雷除去を担わされた彼らは、地雷の知識など持ち合わせているはずもなく、一人また一人と命を落としていく。そんな中で、少年兵たちを監督することになったデンマーク人兵士ラスムスン軍曹は、ナチスへの憎悪を抱きながらも、彼らと心を通わせていく…。
デンマークと言えば、王室、マッツ・ミケルセン、ラーズ・ウールリッヒ(メタリカのドラマー)にLEGO…といった、どれも戦争の悲劇とは無縁のものを思い浮かべてしまいますが、よくよく地図を見てみれば、デンマークはドイツと国境を接しているわけで、今では福祉の満足度、幸福度の高い北欧諸国の一つであるこの国だって、戦時中は決して無傷ではなかったはずですよね。
わたしは歴史にはほんと疎くて、本作の「地雷除去を強制された少年兵」がいたことも知らなかったし、そもそも、デンマークに地雷原が存在していたこと自体知りませんでした。いやはや、自らの無知を恥じるばかりです…。
やはりこういう、知らないことを教えてくれる外国映画は積極的に観ていきたいなと思いますね。
大人の尻拭いをさせられる若者たち
さて、本作はあらすじの通り地雷を除去させらるれことになった少年兵たちの物語なのですが。この地雷原となる場所が、もう絵に描いたような白い砂浜、青い海!なところでして。
若者なら羽目を外したくもなりそうなロケーションの中、黙々と這いつくばって地雷を探すわけですよ。しかも棒きれ一本で…。
この、場所とやらされてることのひどいギャップ感。彼らのやるせなさを思うと、おばちゃんはいたたまれない気持ちになりました。
特に、ネズミや虫を可愛がる心優しきエルンストの取る行動が本当に痛々しく、このシーンは思わずむせび泣いてしまいました。
これはね、大人の尻拭いをさせられる子どもの話なんですよ。というか、戦争自体が大人の不始末なはずなのに、そのツケを子どもたちが払わされる。果たして、それは正しいことなのか?と。親の借金を、子どもはいつまで払い続けなければならんのか?と。
もちろん、こと戦争において言えば、大きな枠組みの「国家」や「軍隊」は、それ相応の責任を取らなければならないと思います。ナチスドイツのしたことは許されることではないし、その一翼を担った兵士たちにも、一定の責任はあるでしょう。けれど、「個」の側がどこまでその罪を背負わねばならないのか?という問題があります。おそらく当時は民間人であっても、「ドイツ人である」というだけで憎悪の対象だったのかもしれません。けれども、憎悪を理由に一個人を断罪するのは間違った行為なのです。
一人の人間として
そして、本作で問うているのはもう一つ、その「個」と「個」の間には、罪を超えた赦しがあって然るべきではないのか?ということ。
本作の主人公であるデンマーク人兵士のラスムスン軍曹は冒頭、引きあげるドイツ兵に罵声を浴びせ、ナチスドイツへの憎悪をむき出しにしていましたが、地雷除去を行う少年兵たちと接するうちに、その心境に変化があらわれます。「敵国の兵士」としてではなく、「一人の人間」として向き合うことで、彼ら個人にその罪を償わせることへの疑問を抱きはじめるのです。そして、自分の良心に従ってある行動を起こす…。軍人としては罪に問われるでしょうが、人としては正しい行いだったとわたしは思いたい(おそらくラストシーンは史実ではなく創作だろうと思いますが)。
人間の一番醜い本性が露わになるのが戦争ですが、でももしかしたら、その人の持つ善性がソリッドに表れる出来事でもあるのかもしれません。 そしてそこにこそ、「人間らしさ」があるのではないかと思います。
もちろん、ただ善性だけを描いているわけではなくて、軍曹と少年たちが心通わせた、と思わせて…のアレとかね、そこのバランスがうまいなと思いました。
扱っているのが「地雷」ですので、そこそこに凄惨なシーンもあります。なのであまり小さいお子さんには不向きだとは思いますが、できれば少年兵らと同じくらいの10代の若い人にも観て欲しいですね。
気になる方は是非!!
こちらも戦争の悲劇を描いた北欧映画です。
戦争映画ベストテンに本作も入れたい。