あらすじ
部屋のすみっこが大好きななかまたち「すみっコ」は、ある日行きつけの喫茶店で見つけた謎の絵本に吸い込まれてしまう!そこは世界のいろんなおはなしがつまった絵本の世界だった。すみっコたちは、その絵本の世界で自分の居場所を探しているという「ひよこ」と出会う。すみっコたちは、ひよこの家を探してあげようと、絵本の世界をさまようが…
近頃巷を賑わしている「すみっコ」。ツイッターでは「ほぼ○○」と他の大人向け作品に例える映画ファンもいらっしゃるようです。
わたしは形容されているアニメも、そもそもこの「すみっコ」じたいもよくわかってないのですが、親子ともにすみっコぐらしが好きなママ友がいまして、お誘いを受けるかたちで次男と親子で鑑賞してきました!
結論から言うと、とっても良かったです(о´∀`о)ほっこりしました。すみっコ素人でも全然無問題でしたよ。
ちなみに我が家の2歳児は「かわいいこたち、かわいくて、ほんとよかったね(о´∀`о)」と言ってました。お前がかわいいかよ(親バカ)。
うちのコはあとひと月で3歳なんですが、それくらいのコでもすごく楽しめる作品です。でも、子ども向けとあなどるなかれ。お話もほのぼのしつつもちょっとひねりが聞いていて、脚本じたいがしっかりしているなという印象を受けました。大人も一緒に楽しめるので、親子鑑賞にほんとおすすめです。
特に幼児~小学生低学年くらいの子の「映画館デビュー」にはことのほか最適だと思いましたよ!
以下、映画館デビューにおすすめな理由を書いていきますね。
お子さんの映画館デビューにおすすめな5つの理由
その1 上映時間が短い!
本作の上映時間は65分。いや、子どもとの鑑賞で上映時間の短さって実はかなり大事なんですよねー。
最近はディズニーやドラえもんでも90分とか余裕で越えるし、アニメで60分台って実は以外と少ないんですよね…(アンパンマンとかしまじろうくらいじゃない?)。
特に絶賛トイレトレーニング中の我が子にとってはほんと嬉しい設計。感謝。
その2 とにかくキャラがかわいい!
もうね、ころころした「すみっコ」たちがほんとかわいいです。絵本やグッズで見たことはあったのですが、動く姿はまた格別のかわいさ。
それから、キャラじたいの性格ももちろんだけど、その関係性とかもほんと泣けるほど良くて、引っ込み思案の「ねこ」を慰める「ざっそう」とか、すみっコで残されてしまう者同士の「えびふらい」と「とんかつ」とか…もう切なすぎ(泣笑)。お互い寄り添って生きている姿は、こちらまで優しい気持ちになりますね。
しかも大人は、「いつかブーケにしてもらうのが夢のざっそう」を「いつか正社員になることを夢見る派遣」、「食べてもらうのが夢のとんかつとえびふらい」を「結婚を望む適齢期すぎの人」、「恐竜であることを隠して生きているとかげ」を「本当の趣味を隠して真人間として生きるガチオタ」などと脳内変換して見ることもできるので、愛しさと切なさと心強さが増し増しです(血反吐)。
そういった、かわいさだけではない「誰もが抱える生きづらさ」を想像で補うことで共感を得られるキャラクターこそ、「すみっコぐらし」が、多くの人に支持されている理由なのかなと思いますね。
その3 ナレーションが親切丁寧!
前述の通り「すみっコぐらし」を1ミリも知らなくても十分楽しめたんですが、それは映画の最初にキャラクターたちの説明を丁寧にしてくれるからなんですよね。
基本キャラたちは声を発さないので、心情を表すときに横にひらがなの文字が出るんですが(「おなかすいた…」とか)、それをナレーションの井ノ原快彦さんがしっかりもらさず読み上げてくれる上に、その前後の説明まで懇切丁寧にしてくれるんですね。
なので文字の読めない・読みはじめたばかりのお子さんでも、適度に絵本などに触れている子どもなら全然問題なく物語が理解できると思います。
また「絵本のおはなし」を本上まなみさんが同トーンで朗読風に語るナレーションも良いアクセントになってましたね。
ただ、イノッチの穏やかなナレーションは耳に心地よくてとても素晴らしいんですけど、説明的過ぎると感じたので、円盤化の際は大人向けに「ナレーションなしバージョン」があっても良いんじゃないかなと思いました。
まぁ個人的には、最近の子ども向けアニメはちょっと説明が過剰な気もしますがね…
その4 一筋縄ではいかないストーリー
実はこの映画、簡単な「めでたし、めでたし」で終わらないお話なんです。
それが「逆詐欺映画」なんて言われてる所以なんでしょうけど、この「一筋縄ではいかない」物語が子どもにはもちろん、大人にも深い余韻をもたらしてくれるんですよね。
映画館デビューに「アンパンマン」や「ドラえもん」を選ぶパパママさんもいると思うんですけど、やはり量産されてるアニメキャラクターだから大体のお話の型が決まってるじゃないですか。「どこでもドア~!」「アンパンマン新しい顔よ~!」って(わたしはどちらも好きですよ)。
もちろんその方が、水戸黄門の印籠的に安心感はあると思うんですけど、でも、せっかく観るなら記憶に残るような「驚き」を感じて欲しいじゃないですか。
そういう意味でも「先の読めない」本作は、ぴったりなんじゃないかと思いましたね。
ちなみにママ友の娘さん(3歳)は一緒に「ねこ」の小さいぬいぐるみを持ってきてて、観ながら時々ぎゅっと抱きしめてましたよ…。なんかそんな姿を見てるだけでもきゅんときちゃった( ;∀;)尊い。
その5 主題歌が原田知世
あんな話の最後にさぁ、愛しさと切なさと心強さが満載の映像見せられながら原田知世の優しい声とかさ…まじでやつらは涙を搾り取るつもりだぞ!(TДT)ナミダデマエガミエナイ…
最後うるうるしているママ二人をチビッ子たちが不思議そうに観てましたよ(苦笑)。
でも、そんな風に親の感動している姿を見せるというのも、たまには良いのではないでしょうかね~。
と、親子鑑賞の最適さについてお話してきましたが、もちろん、本作のしっかりとした物語は大人だけの鑑賞にも耐えうると思います。むしろその温かいメッセージと愛らしいキャラクターたちが醸し出す優しい世界は、日頃ストレスにさらされた大人こそ癒されることでしょう…
「なんか話題になってるみたいだし!」という単純な動機で観ても、事前情報なしでも全然問題ないです。今週からは上映回数が増える館もあるみたいですし、気になる方は是非劇場へ足を運んでみてください!
以下大人向け(笑)のネタバレ。
優しくなくて、優しい世界
泣いたか泣いてないかで言ったら、号泣、とまではいかないけどじんわ~りと泣けましたね。
てかそもそも、ブーケになりたいざっそう、食べられたいえびふらいととんかつ、の時点で「これあかん…( ;∀;)」って感じでした。
それから「ひよこ」が何者かについても、単純でなめくさってたわたしは「あーあひるの子ね、はいはい完全に理解した」とポプテピピックのミームみたいに思ってたんですけど、ところがどっこい、「絵本に誰かが書い(て忘れられ)た落書き」だと…?
なにその切なすぎる設定~!!(血反吐)
居場所のないひよこを思い、すみっコたちは「絵本の外で一緒に暮らそう!」と言うのですが、絵本の中のものは外に出られないことが判明…。
だからなにその切なすぎる設定~~!!(血反吐後死亡)
ひよこは自分探し中のなかまである「ぺんぎん」含むすみっコたちと別れ、絵本の中にとどまることになるのです…(元の「すみっコぐらし」の世界を乱さないための巧い措置でもありますね)
悲しい。なんて悲しいんだ…。
悲しみに暮れるすみっコたち。
でも、彼らは「すみっコ」。行き場のないつらさがわかっているから、ひよこのために、ひよこが描かれたページに自分たちの絵とひよこのおうちを描いてあげるんですね(「ひよこ仕様」になってるのがまた泣ける)。そうすれば、絵本の中でずっと一緒にいられるから。
「離れていても、なかまだよ」
そんなイノッチの優しいナレーションで幕は下ります。
世界は決して誰にでも優しくない。でも、ちょっとした工夫で、ちょっとした善意で手を伸ばせば、きっと誰かを笑顔にすることができる。
そう信じることが、世界を優しくすることなのかなと思いました。
わたしのようなちっぽけな存在も、きっとその手助けができるはずだと、小さなすみっコたちに教えてもらったような気がします。
帰り道、2歳児がわたしの手をぎゅと握りながら言いました。
「おかあちゃん、だいすきだよ」
その手があまりにも温かくて、わたしはまた泣きそうになった。
作品情報
- 監督 まんきゅう
- 原作 サンエックス
- 脚本 角田貴志
- 製作年 2019年
- 製作国・地域 日本
- 声の出演 井ノ原快彦、本上まなみ