あらすじ
ゴジラとムートーの戦いによってサンフランシスコが壊滅して5年後。巨大生物(怪獣)を研究調査する政府機関「モナーク」は、その後複数体の怪獣の存在を確認し管理していた。しかし研究員の一人エマの裏切りによって、最強の怪獣「モンスターゼロ」=ギドラが復活してしまう。それをきっかけにしてラドンをはじめ覚醒する各国の怪獣たち。圧倒的な強さでゴジラをも圧倒するギドラは王として地球怪獣の頂点に立とうとしていた。
人間たちは、宇宙からの外来種であるギドラに地球を委ねるわけにはいけないとゴジラへの加勢を決定する。かくしてゴジラと人間対「偽りの王」キングギドラの戦いがはじまった…
くだらない前置き
前回2回にわたって母と息子の全ゴジラ映画34作品のランキングをアップしたんですけど、
それくらいほんとにほんっとーに、親子でキングオブモンスターズが楽しみで楽しみで仕方なかったんです!サントラも聞き込んで、「ソイヤっソイヤっ!ソーレソレ!!」とかずっとやってましたからね、お隣さんはさぞ迷惑だったと思います(すいません)。
ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(Godzilla King of the Monsters)(2枚組)【帯&解説付輸入盤国内仕様】
- アーティスト: ベアー・マクレアリー
- 出版社/メーカー: Rambling RECORDS
- 発売日: 2019/06/19
- メディア: CD
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サントラ、くそ最高です。何がいいってあの伊福部テーマに合わせて「ゴ、ジ、ラ~!」とか言ってるんですよ。そんなん小学生の時さんざんやったわ!ってのを臆面もなくやってくれてるわけ。すごいよ。あと、Twitterで呟かれてたカオスな録音風景ね。ほんと素晴らしいわ。
『ゴジラ キングオブモンスターズ』で流れるカッコいいBGMの収録風景、オーケストラに混じって般若心経を唱えるどこから連れてきたのか分からない謎の僧侶さん達と言い果てしない良さがあるhttps://t.co/UKT8DeaMl6 pic.twitter.com/k3EmDDsbkN
— もつれら (@mtmtSF) 2019年6月1日
で、観てきました。一言で言うと、
「全編がクライマックス!!」
これがほんと誇張でもなんでもなくて、見せ場の幕の内弁当というか、「えっ?これも見せてくれるの?」「ええっ!?こんなこともしてくれちゃうの!?」「まさかまさか、そこで出しちゃうのぉ~~~!??」と、なんか聞いてると抜き処満載なAVみたいになってますが、とにかくもう、あんなことやこんなことを見せられて、おばちゃんはもうカラッポです(誤解を招く文章)。
いや、実は本予告を見てから「あーこの予告編見せ場全部やっちゃってる系じゃない?」って懸念してて、予告編がピークみたいな映画なんじゃないかって、ちょっと不安だったんです。でもね、杞憂でした。本編の方がどえらかったです。
でもそんな幕の内AV()みたいでありながらも、きちんとうまくまとまっていたのがすごいと思いましたね。「ゴジラとキングギドラとモスラとラドンを出さなくちゃいけない、モナークのこともやらなきゃいけない、ギャレゴジやコングのことも考えないといけない、人間側の話もやらなきゃいけない」とやらなきゃいけないことだらけの脚本だったと思うのですが、そこを絶妙なさじ加減で繋げていったドハティ監督、持ってますね~。
あとはもうとにかくね、全編にわたってゴジラ愛と怪獣愛があふれてた。特にわたしの育ってきたVSシリーズのオマージュが散見されてとても嬉しかったです。モスラに関しては昭和平成の立ち位置と、戦い方にはミレニアムシリーズのモチーフも感じられて「ドハティさん、ファイナルウォーズも観てるんだ…!」と妙な親近感。
そして、ドハティ監督、というかアメリカにとって「ゴジラ」がどういった存在なのかがよくわかる映画でもありました。それはポスタービジュアルにも如実に表れていて、
もう、めちゃくちゃ美しくないですか?
水=海のゴジラ(青)、宇宙=星のギドラ(黄)、森=大地のモスラ(緑)、火=火山のラドン(赤)という日本的なアニミズムを感じる色分けからもわかるように、本作の怪獣は、美しき自然の象徴=神様なわけですよ。
もちろんその辺りは各々のゴジラ観があるだろうから賛否はあるでしょうが、本作で怪獣を「美しい」ととらえた点は全然アリだなと思いましたね。その怪獣の造形美をいかに魅せるかを追及したバトルはもう文句なし。特にラストのギドラ対ゴジラ、ラドン対モスラのバトルはずっと観ていたいかった!
ちなみに、我が家の6歳児は見終わって早々に「これいつディーブイディー出る?」「今度はお父ちゃんとも観に行くね!じいじとも見に行くね!」と言っておりました。翌日にはギャレゴジも見返したりして、もう完全に出来上がってますね…(笑)。昨晩もパンフレットと一緒に寝ておりましたので、相当お気に入りだったようです。
よかった!!きみが満足してくれたなら、母ちゃんが言うことは、何もないよ!!!…とね、思ったわけでしてね。
…だからね、ブログにしなくてもいいかとも思ったんです。もうすでに多くの方が考察や解説をしていて、わたしのようなエセにわかゴジラ好きの出る幕じゃないよなぁ、って。
いや、ぶっちゃけ不満はめっちゃくちゃあるんですよ。だから絶賛吹き荒れる最中に水を差すようなことを書くのは野暮だよなぁ、とも思ったわけです。
…でも、これはわたしのブログ。見えない誰かに忖度したって何のメリットもないじゃないか!てかそもそもこんな弱小ブログを気にする人なんていない!!
ということでね、親子の思い出備忘録的なところも兼ねて、つらつら書いていこうと思います。
あ、ちなみに吹替で観ましたが、全くもって何の問題もなかったと思います。芦田愛菜ちゃんは息づかいまで演技プランが行き届いていてさすがのうまさでしたし、田中圭さんは「ちょっと(いやかなり)カイル・チャンドラーより声が若いかな~?」とは感じましたが、ちゃんと役に馴染んでいましたよ。作り手と演者の心配りがしっかりと感じられる良吹替だったと思います。
こういうVFXのしっかりした映画は字幕だと映像を追いきれないと思うので、個人的には吹替もおすすめしておきます。
あと予告編でもあった、お偉いさん方の「ゴジラをペットにするのね?( *´艸`)プークスクス」にケンワタナベが言う、
「我々がゴジラのペットになるのだ( ・`д・´)ドヤァ」てセリフがめちゃくちゃ好き。映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』日本版予告編第2弾 - YouTubeより
ゴジラのペットになりたい!!!
以下ネタバレ~
不満点いくつか。これやっちゃって大丈夫?
とりあえず先に不満点について書いていきますね。多分本作が好きな人にしてみたら難癖レベルだと思うので、無視していただいて結構です。
①オキシジェンデストロイヤー
いっっっっっちばんの不満点はやはりこれ。「簡単に作れるわけねーじゃんかよーしかもなんだよあの出オチ!こんなんファンサでもなんでもねーやいクソッタレ~~~!」と直後は思いました。
ただ冷静に考えてみて、あのオキシジェンデストロイヤーを、ゴジラファンのドハティ監督があんな雑な扱いで終わらせるはずはないとも思うし、実際「あれはきっとデストロイアへの伏線だよ」と言っている人もいて、「そうだよな!絶対そうだ!!」と今は考えてる。
確かに、わたしもエンドロール後のおまけがはじまってすぐに「おーっとまさかデストロイアじゃね!?」と色めきたったんですよ。だけれど実際はギドラの頭で。いや、それでも「つまりは次回以降メカキングギドラが出る可能性もあるってこと!?」と盛り上がったわけですけど、でもなー、もしあれがデストロイアの原型とかだったら、諸手を挙げて本作を大絶賛してたと思うなー。
②核の扱いと芹沢博士の自己犠牲
これに関してはもう受け入れざるを得ないんだろうな、とも思うんです。米国における核兵器の向き合い方について。ゴジラをアメリカが作るという点において、核の扱いはやっぱり避けて通れない命題みたいなもので、本作ではそこに一つの答えを提示しているとも言えます。
1984年版でもシンゴジラでも「ゴジラに核を使う」ことは議論されていました。しかしどちらも「それはやっちゃいけないよね」という結論になります。そりゃそうだ、被爆国なんだもん。
でも、宇宙人に躊躇なく核弾頭を撃ち込めるアメリカの場合、そこに葛藤はない。しかも本作は「ゴジラを倒す」ためではなく「ゴジラを助ける」ために核を使う。もはや核は必要悪ではなく必要善なわけです。完全に正当化してるよね。ここはもうねー、唖然としたよ、やっぱり。「あーそれやっちゃうんだー」って。ゴジラにそれをやるってのはね、パシフィックリムやインデペンデンスデイとは全然違うと思うんだよ、意味合いが。
いや実は「VSキングギドラ」でも、同じようなことはあって、ゴジラを復活させようと大企業の社長が原子力潜水艦をゴジラに向かわせるんです。でもその行いは誰がどう見ても悪行であり狂気の沙汰として描かれていて、最終的にもその社長新堂靖明はゴジラによって報いを受けました。
だけど本作ではそれとは全然趣が変わって、そこに芹沢博士の自己犠牲の要素をいれてくるんですよ。これをわたしは特に危険だと思っていて、ゴジラ=神のために、核=破壊兵器を使うということは、神の名のもとに行われる行為ならばどんな悪行も正義となる、とも読めるわけで、やってることは十字軍やイスラム過激派の聖戦と同じなんじゃないかとも思っちゃったんですよね。
確かに「さらば友よ」の言葉にはいろいろな含みもあると思うし、感動するシーンではあるのかもしれない。でも、「日本人としてここを受け入れていいのかなぁ」という葛藤は、やっぱりあるんだ。
③地球を生き返らせる怪獣たち
本作でモナークを裏切るエマの目的は「地球の防衛本能としてのシステムである怪獣を蘇らせ、人類の文明をリセットして自然の調和を取り戻す」という過激なエコテロなんですね。つまり本作の大きなテーマのひとつが「環境問題」と言えます。
それなのに、ゴジラが通ったあとに生命が蘇っただとかいうのは、さすがにやりすぎなんじゃないかと思うんです。人間の環境破壊への警鐘というテーマだったものが、最後の最後で「でも神(怪獣)がいるから大丈夫!」と覆されてしまっているように感じましたね。いやそれじゃ何の解決にもなってないじゃんていう。普通このテーマなら「もうゴジラが目を覚まさないように人間も地球を守ろう」という帰結にするべきでしょ?
…まぁ多分、わたしはゴジラには人間を戒める存在であって欲しいという気持ちが強いんだと思います。だから街を完膚なきまでに破壊して人間を蹂躙して欲しいわけです。ゴジラにめちゃくちゃにされること、それこそが人間の贖罪だと思うから。
まぁそこは宗教観の違いなのかも。日本の神様は畏怖するもので罰や祟りとイコールな認識。一方のキリスト教は神様は赦しや癒しを与えてくれる存在。だから神である本作のゴジラは人間の罪を赦し、地球を癒す。うーん、納得できるようなできないような…。
あとはもう、根本的に「モナーク」の設定がそもそも好きじゃないのかも(^o^;)あの「オルカ」って装置に関しても思うところがないわけじゃないし…そこはまぁ、もういいや。
④長いものに巻かれるラドン
本作のラドン、めちゃくちゃかっこいいんです。これまでのラドンって、まぁなんていうか、そこまで強くないっていうか「三大怪獣」とか「VSモスラ」とかタイトルからハブられるような不遇な扱いじゃないですか。ところが今回はもう見せ場盛りだくさんだし、多分一番人間殺したよね。
なのにさぁ、中身は完全にスネ夫笑。誰か早くKOM版「ラドンもそうだそうだと言っています」画像作ってよ笑
怪獣をモチーフとした宗教戦争
本作の怪獣が神である、という点は前述しましたが、劇中でもそこここに宗教的なモチーフがちりばめられています。ギドラと十字架、モスラの古代遺跡、ゴジラの海底神殿など、おそらく聖書方面からのアプローチもできると思います。本作は言うなれば「神を信じるか信じないか」「どの神を信じるのか」という宗教戦争の映画なんですよ。
神々が覇権を争う中で人間がどちら側につくかという、わたしが大好きな海外ドラマ『アメリカンゴッズ』の地球版、すなわち「アースゴッズ」なんですよね。
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ギドラはキリスト教から見た異教徒=「悪魔」とも言えるけど、わたしは逆に土着信仰から見たキリスト教とも言えるんじゃないかと思いました。彼は彼なりの信念で布教を行う=怪獣の頂点に立とうとしているとも思えるわけです。それに抗おうとするアニミズムなモスラとガイアなゴジラ。
ゴジラ教に入信した人間たちは、ゴジラとの共闘作戦にうって出る。ギドラに立ち向かうゴジラの後ろから空軍機が飛んでくるシーンは胸アツでしたね。あそこで自衛隊マーチが流れてたら完璧だったなー。とりあえず脳内で再生しておいた。
まぁこの怪獣"宗教"大戦争には異論もあるでしょうからあまり深くは申しませぬ。
わたし?わたしはもちろん長いものには巻かれるタイプなんで、ラドン教信者ですよ(笑)。
カルトを親に持つということ
そして本作が宗教戦争映画だとすると、人間ドラマの主軸であるマディソン、エマ、マークのラッセル親子の物語は、「カルトを親に持った娘の話」としてみることができます。
マディソンは当初棄教した(モナークを離れた)父親に「ママが心配」とSOSを送ろうとしており、母親と自分のおかれている状況の異常性に気づいてはいるんです。でも、その思想=教義から完全に抜け出すことはできない。彼女も母によって弟の喪失に罪の意識を植え付けられているから。彼女にはなんの非もないのに、そこにつけ込んで救いを求めようとしてることこそがカルトなんだけど、まだ子どものマディソンはそこまで思いいたらない。
おかしいってわかってるのに、逃げられない。それがカルトの子の悲しい性なんですよね…。
そんなマディソンが向かう先が、かつての家であるというのが泣けます。自己犠牲というより「どうにもならないなら壊してしまえ!」的な破滅的衝動自殺のようにも見える彼女の行動に、「あの頃に戻りたい」という気持ちがかいま見えてもうね…。このマディのパートは演じているのがミリー・ボビー・ブラウンちゃんだから、「あぁイレブン、せっかく幸せになれたと思ったのに…( ノД`)」とかいろいろ混同した目線で見ちゃっためんどくさいストレンジャーシングスファンはわたしです。映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』予告 - YouTubeより
ゴジラが来た時のこの表情、モノローグで「怪物には怪物をぶつけんだよ」と言ってましたね(空耳)。
人間ドラマが薄いとか言われてましたけど、わたしはその点は特に気にならなかったですね。
ただ、この、娘によってバラバラだった家族が絆を取り戻すというのは「VSモスラ」のモチーフでもあると思っているので、できればラッセル親子とモスラの絡みがもう少しあると嬉しかったな~と思います。
最後に
他にも「最初のロゴからカッコいい!」「小美人!」「ゴジラ×モスラ…(文字通り)」「熱線が欽ちゃんの仮装大賞」「エンドロールのあの人に泣いた」「ゴジラ、人間助けすぎ問題」とかいろいろ言いたいこともあるんだけど、長くなっちゃったのでここまで。
わたしのようなライトなゴジラファンは全然許容できましたけど、昭和からの古参ゴジラファンはどう感じたのかな~と気になるところではあります。
いろいろ書きましたけど、怪獣バトルはほんと見ごたえありまくりマクリスティだし、男児はね、絶対に好きだと思います。是非親御さんはお子さんと観に行ってみてくださいね~
来年の「コングVSゴジラ」と今後のモンスターバースが楽しみです!!
…とかいろいろ書きましたが、ほとんど嘘です。
本音はこっちです。
作品情報
- 監督 マイケル・ドハティ
- 脚本 マイケル・ドハティ、ザック・シールズ
- 製作総指揮 ザック・シールズ、バリー・ウォルドマン、ヒロ・マツオカ、大田圭二、ダン・リン、ロイ・リー、坂野義光
- 音楽 ベアー・マクレアリー
- 製作年 2019年
- 製作国・地域 アメリカ
- 原題 GODZILLA: KING OF THE MONSTERS
- 出演 カイル・チャンドラー、ヴェラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン、渡辺謙、チャン・ツィイー