『カメラを止めるな!』が絶賛爆進中です。
最近ちょっとにわかに周りがモヤモヤしておりますが(てかテレビでネタバレしてんじゃねぇ!シバくぞ!)、面白い映画なのは違いありません。もし件の報道を理由に二の足を踏んでいる方がいたとしたらそれはとてももったいないので、是非劇場に足を運んで欲しいなと思います(そもそもパクり案件ではない)。
鑑賞後にわたしの感想も読んでくれたら嬉しいっす(小声で)
さてはて、そんな『カメラを止めるな!』通称「カメ止め」、製作費300万円で作られた低予算映画というところが話題になっております。
というわけで今回は、「カメ止め」及び低予算邦画応援企画といたしまして、低予算だったり、自主制作だったり、無名の俳優を起用していたり…とメジャー系資本ではない邦画の中で、わたくしが特に好きな映画をいくつかご紹介してみたいと思います。
なるべく新しめの映画を選んでみましたので、「カメ止め」を観て「邦画も面白いじゃん!」と思われた方の参考になりましたら嬉しいです。(思いついた順番なので特に順位とかはありません)
ジュウブンノキュウ
7年ぶりに集まった野球部のメンバー9人。久しぶりの再会で思い出話に花が咲く中、それぞれの記憶に食い違いが生じていることに気づく。「何かがおかしい…」誰かが嘘をついているのか?何かを忘れてしまったのか?彼らにとっての最後の試合だったあの日、一体何があったのか…?思い出の空白を取り戻そうとする彼らの前に、思いもよらない真実が…
『カミュなんて知らない』の助監督を務めた東條政利の初監督作品。密室というワンシチュエーション、ほぼ無名と言っていい若手俳優たちによるテンポの良い会話劇。これが非常に良くできていて、不穏な様相を見せていたこれまでの印象が終盤でガラッと変わる脚本がお見事でした。ラストには切なくほっこり。大切な友人に会いたくなるようなステキな作品でした。
…ってここまで書いて調べてみたらこれ、円盤化されてないみたい!すみません!超いい映画なのに〜!いつかDVDが出るかも?(望み薄)…なので、一応消さないで紹介しておきます!
あ、ちなみに東條監督が助監督を務めた『カミュなんて知らない』は大学生の映画ワークショップを舞台にした青春群像劇で映画製作の舞台裏を描いた作品です。当時をトキメク若手俳優(黒木メイサ、柏原収史、吉川ひなの、前田愛など!)が出演しています。ラストのフィクションを飛び越えていく展開が素晴らしいので、もし未見の方がおりましたら是非!
先生を流産させる会
ゴア描写が衝撃だと話題の漫画『ミスミソウ』の実写化を手がけた内藤瑛亮監督の長編第1作。
2009年に起きた中学生による教師への給食異物混入事件をモチーフに、妊娠した教師を流産させようとする子どもたちと教師の攻防を描く。映画では犯人の中学生を男子→女子に変更しているのですが、これがもうめちゃくちゃ嫌な方向に作用していて、観ていて吐きたくなるような胸糞展開。多分、主題としては「教師とは、教育とは」と言ったところなのでしょうが、そんなことよりも女子中学生の無邪気な邪悪さに気に滅入ります。そして少なからず自分も彼女たちのような時期があったことを思い出して嫌悪感の無限ループ…。
主犯格の女子の虚ろな目が忘れられない。
へんげ
何度かご紹介させて頂いていて恐縮なんですが、もうほんとこれ、大好きなんです。すいません。
人外に変身した夫とその妻の究極のラブストーリー!です。これはもっと観られていい作品だと思います。お話もすこぶる面白いですが、とにかく特殊造形とラストの特撮には度肝を抜かれました。ぶっとび〜
かしこい狗は吠えずに笑う
ブスの女子と可愛い女子。両極端に嫌われる二人は自然と仲を深めていく。しかし、そこには思わぬ狂気がひそんでいた!
序盤はひたすら女の子2人(ブス扱いされてる子も全然ブスじゃない!)がイチャイチャしてるので「百合百合ヒャッホウ!」って感じなのですが、そんなテンションで観ているといきなり強烈なパンチを食らいます。おすすめです。ペディキュアァ…ハァハァ(;´д`)
クズとブスとゲス
凶悪顔すぎるジャケットと酷すぎるタイトルが印象的なこちら。昏睡した状態の写真で女性を強請るスキンヘッドの男、その被害に遭い風俗で働くこととなった女、恋人のために大麻を運ぼうとする男。血なまぐさい暴力の下で彼らの人生が交錯する…。
この映画、殴り合いは寸止めとかフリじゃなくてガチ当てしてるらしいんですよ(血も本物)。実際、今作の監督の奥田庸介さんが主人公のスキンヘッドの男(ジャケの人)を演じてるんですが、ビール瓶を頭で割って12針縫ったそうです。…っていうとかなり暴力的な映画なのかと思うかもしれませんが、これが意外に、純粋な話なんですよ。ほんとこのスキンヘッドは全く共感できない「クズ中のクズ」なんですが、底辺の男たちがもがきながら明日を目指す姿に、なぜか希望が見えるというね…。ほとばしる熱量を感じる怪作です。
ハブと拳骨
60年代、まだアメリカの占領下にあった沖縄を舞台に繰り広げられる、ある兄弟の青春と暴力と愛の物語。戦争孤児の兄妹と血のつながらない弟。食堂を営む母親と家族として暮らしていたが、ある日母が米軍の車にはねられて重傷を負う。治療費の為に金を稼ごうとした兄と弟は、本土のヤクザを敵に回してしまう…。
こちらは脚本家や演出家として活躍している中井庸友さんの初監督作品。ピッチピチ(死語)の宮崎あおいちゃんが儚げな妹役で出演しています。60年代の沖縄を舞台設定にしているのがユニークなのと、どうにもならない、どこにも行けない怒りを暴力としてしか表現できない若者が切ないです。弟役の尚玄さんの三線がとても良い!
RE:BORN
アクション監督としても活躍する坂口拓さん主演のアクション映画。インタビューで坂口拓自身も「自主制作みたいなもの」と言っているくらいなので、この手のアクション邦画としてはかなりの低予算と思われます…だがしかし!戦闘シーンはほんと楽しくて、邦画でこれだけガチの肉弾アクションはほとんど観たことないんじゃない?と思えるクオリティ。特に主人公の宿敵を演じた稲川義貴さんとのリアルなバトルは殺気が半端ないっす。
即死要員としていしだ壱成や篠田麻里子なども出てますが、いいヤラレっぷり。斎藤工の鼻水っぷりもなかなかのものです 笑。 あと、ラスボスの大塚明夫さん(必殺技は声!)が渋くてカッコいい!
若干ストーリーに厨二臭が漂ってはいるものの、強い男が出てくる映画が好きな人には全力でおすすめいたします。
霊的ボリシェヴィキ
霊気漂う廃墟に集まった7人の男女。彼らは「あの世」に触れた怪奇体験を語る中で、"心霊実験"を進めようとしていた。恐怖の革命が今、はじまる…
これはね、前半はひたすら人が怖い話しているのを、ほとんどカット入れずに映しているだけなんですが、めっちゃ雰囲気が怖すぎる!!お化けが出てきてバーン!って音鳴って「キャー!」みたいな即物的な怖さじゃなくて、ヒタヒタと足音が迫ってくる感じのじわじわくる怖さ。こちらは今年公開された作品なので、多分そのうちDVDとか出るんじゃないかと思われます。
黒沢清系の知的ホラーな雰囲気もあり、ああいう世界観が好きな方にはおすすめです!
予告編からしてもう怖い。
ある朝スウプは
ぴあフィルムフェスティバルのグランプリ作品なので、もろに自主製作映画ですね。ほとんどのシーンはアパートの一室なんだけど、病院のシーンはどっかの廊下と白衣でそれっぽく見せたり、彼女の仕事を地図製作(Zンリンね)のアルバイトにすることで住宅地を歩かせたり、予算のなさをアイデアでカバーしていてまさに自主制作のお手本みたいな作品。
狭い1Kのアパートで暮らすカップル。精神的な病に侵され、おかしな新興宗教にハマってしまった彼氏と、それをなんとか引き戻そうとする彼女。けれども二人の溝は埋めようもないほどに深まっていく…。
ある恋人同士の終わりと別れを描いているのですが、こんな切り口はなかなかないです。ほんとに観ていて痛々しくて、悲しいのに、滑稽で、それでいてラストは清々しい。人と人の分かり合えなさを描きながら、それでも人と関わり合おうとすることは間違いじゃないと思わせてくれる。余韻の素晴らしい一作です。大好き。
狂覗
生徒のいない教室で秘密裏に行われる荷物検査。しかしそこで暴かれたのは教師の本性だった…
これは、やべぇっす。何がやべえって、キャストがスタッフも兼務して制作されてんですよ、この作品。そりゃこんな顔にもなるわっていう 笑…。まぁそれは冗談として、教室という密室を舞台にして、ともすれば演劇っぽくなって終わりそうな話を、ちゃんと「映画として」面白く作ってあるんですよね。説教くさくなりそうな題材なのに、充分にエンタメ性もある。邦画らしいイヤ〜な雰囲気もたまらん。おすすめです。
わたしの感想はこちら。
殺人ワークショップ
恋人からDVを受けるアキコの元に「人の殺し方を教える」という奇妙なメールが届く。指定された場所に赴いたアキコを待っていたのは講師と名乗る江野という男と、彼が集めた参加者たち。そして狂気の「実践型」殺人ワークショップが始まった…!
映画監督・俳優養成学校ENBUゼミナールで講師を務めた白石晃士監督が、俳優コースの卒業制作だったものを長編に再編集した作品。映画学校の生徒というほぼ素人の人たちばかりなので、演技的に拙さを感じる人もいますが、それがまた逆に「普通の人」っぽくてリアル。白石監督は「こんな奴いねーよ!」と「こういう奴いそう…」の絶妙な間を縫ったキャラ造形が見事ですよね〜。
監督らしいげんなりする暴力描写もあり、でもってわたしが大好きな『オカルト』の宇野祥平さんが本作でも"江野"って名前の男を演じてて(おそらく同一人物か、あるいはパラレルワールド的な?)、白石ワールドがお好きな方はマストウォッチです。
あと多分この「殺人ワークショップ」 自体が俳優コースの演技指導も兼ねてたんじゃないかと思うと、俳優志望の方は是非参考に…いや、ならねぇか 笑笑。
ちなみに『カメラを止めるな!』も同じくENBUゼミナールの「シネマプロジェクト」の一環として製作されているんですよね。多分来年の入学希望者増えるだろうなぁ…
というわけで以上です!
大作・メジャー系の映画ももちろん楽しいですが、わたしはこういった作り手の情熱がビシバシ直に伝わってくるインディペンデントな映画も大好きです。『カメラを止めるな!』をきっかけに、低予算の日本映画にも目を向けてくれる人が増えてくれたらいいなと思います。
わたしはまだまだ邦画は勉強中なので、よろしければみなさんの「コレ面白いよ〜」っておすすめの映画がありましたら是非教えてくださいませ( ^ω^ )