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マザー! 【映画・ネタバレ感想】母を、称えよ!!これは聖書の皮を被った発言小町映画だ〜⁉︎★★★☆(3.3)

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あらすじ

 森に囲まれた一軒家で暮らす、年の離れた夫婦。妻(ジェニファー・ローレンス)は火事で焼失した家を修繕しながら、詩人の夫(ハビエル・バルデム)を献身的に支えていた。そんな2人の家を、1人の男(エド・ハリス)が訪ねてくる。見知らぬ人間の訪れを快く思わない妻とは対照的に、男を歓待するの夫。不安と苛立ちを募らせる中、妻は思いもよらない事態に巻き込まれて行く…。

 

 

 日本公開が決定したにも関わらず急遽中止となったいわくのある本作。映画館で観たいと思っていた映画だったので、急な公開中止は結構がっかりしました。いろいろと大人の事情があったのかもしれませんが、食べ物を口の前に"あ〜ん"て出されて"やっぱあげな〜い♪"ってやられたみたいでさ、あんまりいい気分はしないよね(苦笑)。でも逆に「どれだけの問題作なんだよ⁉︎」と期待したくなったのも事実。うーむ、してやられたり…。

 観終わって後の感想は、

いや〜、凄い映画だったなぁ…

 

 問題作と言われるのも納得、方々で賛否両論巻き起こったのも当然と思う怪作でした。レンタルしてきたDVDに入っていた特典映像のドキュメンタリーによると、舞台となる「家」を屋外とスタジオ両方に、相当大掛かりなセットを組んで製作されたようで、映像の随所からこだわりが感じられ、アロノフスキー監督がかなり力を入れて作り上げたことがうかがえる意欲作です。

 そういやこの人、前にノアの方舟やったときもすごいセット作ったんだっけか…。

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 ただこの映画、もうすでにいろんな方の考察や解釈が出ているだろうと思いますが、出来ればなんの予備知識もない方が楽しめるんじゃないかと個人的には思います(わたしもこれ書き上げるまではネタバレシャットアウト中です)。

 まるでジェットコースターのように目まぐるしく展開する状況で、ジェニファー・ローレンス演じる"妻"が直面する恐怖と怒りを一緒になって体感するのがきっと正しい見方のような気がします。そして観終わった後にタイトルの『マザー!』の''!"に思いを馳せて欲しいです。

 

 てかねー、これ主婦の人観てよ。まじ発言小町映画だから笑笑。

発言小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 

 

 

以下ネタバレ。

 

 

 

 

 

聖書というよりむしろ小町案件!

  本作は聖書の「創世記」をモチーフにしています。

 妻(=地球)がせっせと設えた家(=大地)にほいほいと夫(神)が夫婦(アダムとイブ)を招き入れたために人間が溢れかえる。やがて家を我が物顔で占拠し、破壊・略奪と暴虐の限りを尽くす人間たち。妻は怒りを爆発させ、家もろとも破滅させる…簡単に言うとそんな話。

 家で行われる最初の殺人が弟による兄殺し(カインとアベル)だったり、水道が壊れて水浸しになって来客者が退散したり(大洪水)、詩人の夫が新作の詩を書き上げる(新約聖書)、唐突な「妊娠したわ」(受胎告知)、妻と夫の子(=神の子、イエス・キリスト)の肉を人間が食べる(聖体拝領)…などなど、聖書やキリスト教のモチーフが散りばめられています。

 まぁ言われなくても観てれば「あーぁそういう話ね〜」ってわかるから、こんな風に言葉で書くと一気に冷めるというか、急につまらなくなくなる(苦笑)。

 

 でもね、はっきり言って、前半はもう完全に発言小町で爆笑です。

 最初に家に転がり込むエド・ハリスとミシェル・ファイファー夫妻がいい感じの無神経具合でさ、ニコニコして人当たりよさそうなんだけど遠慮のないエドと、ビッチ臭漂わせながらエロ指南したがるミシェル。「最近ヤッてないのぉ?こんな下着じゃだめよぉ〜、妻だけEDって知ってルゥ?」…うわぁ、いる!こういう小姑、小町で聞いたことある!笑笑

『30歳子ナシ専業主婦です。最近、夫の実家の敷地内に家を建てました。わたしのこだわりが詰まった家なのですが、最近義姉夫婦が入り浸っていて困っています。家のものに勝手に触ったり壊したり、断りもなくキッチンに入ったり、何かと理由をつけて泊まっていきます(夜は夫婦の営みの音が聞こえてきて不快です)。また、やたらとわたし達の性生活に干渉してくるのも苦痛です(恥ずかしながら、ここ数年わたし達夫婦はセックスレスです)。最近は彼らが来るたびに精神安定剤が手放せません。

 そして何よりも許せないのが、彼らに対する夫の態度です。わたしが何度言っても義姉夫婦を追い出そうとしないのです。しかもわたしに内緒で夫婦の子供の学費まで援助していたことが判明しました。両親とは死別しており、頼れる人もおらず不満が溜まって爆発しそうです。』

…まぁこんなスレが立ったら7割の回答は『今すぐ離婚』だな(笑)。『薬が手放せないというのが心配です。病院に行きましょう』って回答もあるかもな…。

 だからね、小町案件に陥っている人が観たら、もう絶対エド&ミシェル夫婦に殺意がわくの間違いなし!

 息子が人の家で殺人しておいてなんの謝罪もなく「子どものいないあなたに気持ちはわからない」(あーコレまじ無理)、夜中に断りもなく親戚一同で上がり込んどいて「その服なんなのよ?」とか言ってくんのもう死ねよって感じで最高。…パジャマだわっ!こちとら就寝中じゃボケェ!

 あと、「土足で踏み込む」という慣用句がありますが、靴のままづかづかと家の秩序を壊す彼らとは対照的にジェニファーが裸足で居続けるのも印象的でしたね。

 

 

地球が人間に牙を剥く=ガイア理論?

 後半にジェニファーが妊娠すると、『ローズマリーの赤ちゃん』よろしく妊婦の過剰反応的に見せながら悪夢としか言いようのない展開になっていきます。

 詩人の夫を崇拝する人間たちがやいのやいのと家に押し寄せ、好き放題し放題。何がなんだかわかぬうちに狂乱と傍若無人振りがますます加速、家を破壊するだけでは飽き足らず、互いに殺し合いをはじめます。戦闘行為やリンチ、粛清…まるで人間の負の歴史を辿るかのような地獄絵図が展開されて行くのです。
 "一体何が起こっているのか?これは夢なのか?何を見せられているんだ?"と、観ている側も妻ジェニファーの混乱と同期していきます。 そして、その混乱と恐怖は赤ん坊を殺されて最高潮に達し、「怒れ!怒るんだジェニファー!!」とこちらの気持ちはもうすっかりデビルマンモード。
かくして、妻ジェニファーである"地球"は、家の地下の燃料(=地下資源、あるいは地球の核の暗喩?)に火をつけ人間どもを焼き払う(家が燃え上がるのはもろキノコ雲っぽい)。あ〜スッキリす!  


 この終盤の展開にはガイア理論の影響を強く感じましたね。

 ガイア理論とは、地球を一つの生命体とみなし、自己調節システムを備えているとする考え方です。地球がまるで自身が生きやすいかのように"環境"を整えている、というものですね。そこから発展して、「地球そのものに自浄作用があって、自らの生命活動に害を及ぼす物=人間を排除しようと異常気象や病原菌を生み出している」…などという人もいます。

 地球である妻ジェニファーの人間たちへの復讐は、それを視覚化したものなのかなと思います。要するに、地球を怒らせると怖いよ!ってこと。好き放題やってる人間どもへの警鐘なんでしょうな。

 また、侵入→抵抗→破壊→再生は外敵を撃退する生命体のサイクルでもありますね。

 

 

創作は他者を犠牲にするほど尊いものなのか?

 しかし、家が破壊され人間が殲滅してめでたしめでたし〜では終わらないのが、本作の最大に嫌なところ。

 我々人間を含め、生命体は日々新陳代謝を繰り返し老廃物を排出しています。つまり細胞レベルで考えると昨日のわたしは今日のわたしではないのです。本作が"妻"=地球=生命体説で行くと、再生後は違う「わたし」になります。けれども本作の、再生した妻が別人になっているラストカットを露悪的に感じるのは、わたしだけでしょうか?

 ファーストカットの女性(というより少女のように見える)もジェニファー妻と同じ運命を辿ったと推察できるわけで、神が何度もやり直しをしていると考えると、正直単純に女としてはムカつくよね(笑)テメェ、せめて同じ女でやり直せやい!って。

 

 あとこれ、神云々は置いといて、"詩人の夫"と"妻"の視点で見ると、妻を創作の道具にしていたようにしか思えないわけですよ。妻は火をつける直前「全てを捧げたのに!」と言ってました。夫は妻が捧げた"全て"を甘受し詩作して名声を得ましたが、それを妻に還元したことは一度もなかったのではないでしょうか?

 おそらくわたしがそんな風に思うのは、最近写真家のアラーキーの元ミューズの方が書いた手記を読んだから余計になのかもしれないですけど、創作のために他者を犠牲に(しかも無自覚に)することに対して苛立ちを覚えます。「創作」をそういう高みにあると勘違いしている輩の多さには辟易しますよ。

 一応弁明しておくと、アラーキーの写真は「センチメンタルな旅」やドキュメンタリーのDVD持ってるくらい好きですよ。手記の内容はあえてリンク貼りませんので気になる方は「アラーキー 元ミューズ」で検索してください。

 

 アロノフスキーは『ブラック・スワン』で芸術における自己犠牲の是非を描いていましたが、本作では逆に芸術創作の際の「他者に犠牲を強いること」の是非を問うているようにも思えました。

 

 

最後に

 とにかく、すごい映画なのは間違いないです。多分本質的に理解するにはあと2回くらい観ないといけないのでしょうが、正直もう一度観たいとは思わない…面白かったけど。個人的に終盤の、子どもを奪われるシークエンスはかなりキツかったです。食われるのはなんとなく予想できたし、あれが聖体拝領、あるいは大地の実りや資源を貪る人間の愚かさ、なんかを意味してるんだろうとは頭では理解できるんですけどね…。

 それよりもその前のクラウドサーフィン状態のシーンがトラウマ級に辛かった。知らない奴らに産まれたての子を持っていかれるのって、多分潜在的恐怖なんだと思う。母なる地球はこんな気持ちなのかぁ、と少しは理解して、みんなも地球は大切にしようね!(小並感)。

 産みたての子を抱きながら夫とにらみ合いかますのも、なんか本能的に「わかる…」ってなりましたね。小町的に神様は即離婚物件ですので、地球はさっさと離婚したほうがいいです(いろいろとアレな一文)

 

 最後に、おそらく本作を端的に物語っているであろう名ゼリフを置いてわたしの感想をおしまいにします。

「地球もねぇ、宇宙に浮かぶでっかい賃貸物件なんだよ!人間は地球を一時借りてる店子でしかないんだ。その店子の分際で地球を壊したり汚したり隣同士で喧嘩しようもんなら、世界中の大家を代表してこのアタシが足腰立たないくらいケツを蹴り上げてやるってんだよ!」

by『秘密結社鷹の爪 THE MOVIE 総統は二度死ぬ』大家さん

 

 

 

作品情報
  • 監督  ダーレン・アロノフスキー
  • 製作総指揮  マーク・ヘイマン、ジェフ・G・ワックスマン
  • 脚本  ダーレン・アロノフスキー
  • 製作年  2017年
  • 製作国・地域  アメリカ
  • 原題  MOTHER!
  • 出演  ジェニファー・ローレンス、ハビエル・バルデム、エド・ハリス、ミシェル・ファイファー