あらすじ
奇病が蔓延し、荒廃した近未来。軍事施設には「第2世代(セカンドチルドレン)」と呼ばれる子どもたちが収容され、彼らへの教育と研究が行われていた。その中でも優秀な頭脳を持つメラニーは、教師のジャスティノーや医師のコールドウェル博士から一目置かれている。ある日、施設が襲撃を受け壊滅状態に陥り、辛くも生き残ったメラニーらは、兵士のパークス、キーランと共に暫定政府の本部を目指す。そこで初めて外の世界に触れたメラニーは、自分が何者なのかを知ることとなる…。
事前に原作小説を読んでいました。感想はこちら。
概ね原作どおり
映画では襲撃の発端となる「バンカーズ」の件が根こそぎ無くなっていたり、ジャスティノーの過去にも一切触れられていなかったりと、削られている箇所も多いですが、概ね原作に忠実です。むしろノイズな部分を排除し、やたらと凝りに凝った設定を簡略化していて、すっきりと分かりやすくなっていたような印象です。
もし興味があれば映画の補完もかねて、原作もお読みになってみてはいかがでしょうか。
さて、 原作では金髪碧眼の白人少女メラニーを、CP的な配慮からか黒人の新人子役、セニア・ナニュアちゃんが演じています。野生児のように躍動する演技を見ると、その選択も間違いではなかったかなと思いました。
主人公のメラニーの名前には「黒い肌」という意味があるそうな。
『アイアムアヒーロー』や『新感染』でもそうでしたが、ある程度の規模になると何故だか完全に伏せられる「ゾンビ」というNGワード。本作も予告の時点でゾンビのゾの字も出さない宣伝方法で、もしかしたらゾンビ映画と知らずに観た人もいたかもしれません。正統派ではなく変化球ゾンビだから、まぁいいのかなとも思いますけど。
本作のゾンビはカッサカサのドライ系で、基本ぬぼーっとしています。皆さんが期待するようなお食事ゾンビ描写は控えめですが、映像化を楽しみにしていた冬虫夏草のように植物化しているゾンビが見られたので、わたしは概ね満足です。
これ、多分ジャンルは百合です。
本作(映画でも原作でも)でわたしが好きだったのは、子どもへの大人の潜在的恐怖を描いていた点。第2世代の子どもたちが集団でキーランに襲いかかるシーンは『チャイルド』や『光る眼』のような、恐怖対象としての子ども描写で、不気味さがありました。とくにラストカットの「時間はたっぷりあります」には究極の「ディストピア」を感じましたね…。
「人間のために他の生物が犠牲にならねばならないのか?」という命題も提示され、裏テーマに動物実験の是非も感じさせます。
あと、原作読んだ時は思い至らなかったんだけど、これって百合映画だし、セカイ系だよね?セカイ系×百合×ゾンビとは…また新しいジャンルを開拓しましたね(笑)。
少し落ち着いたゾンビが観たい方、ちょっと変わったゾンビが観たい方は是非どうぞー!
作品情報
- 監督 コーム・マッカーシー
- 製作総指揮 リジー・フランク、ベン・ロバーツ、リチャード・ホームズ、クリストファー・モル、ウィル・クラーク、アンディ・メイソン、マイク・ルナゴール
- 原作 M・R・ケアリー『パンドラの少女』
- 脚本 マイク・ケアリー
- 音楽 クリストバル・タピア・デ・ヴィーア
- 製作年 2016年
- 製作国・地域 イギリス,アメリカ
- 原題 THE GIRL WITH ALL THE GIFTS
- 出演 セニア・ナニュア、ジェマ・アータートン、パディ・コンシダイン、グレン・クローズ
- 映画「ディストピア パンドラの少女」公式サイト » 映画「ディストピア パンドラの少女」