あらすじ
1983年のオランダ、アムステルダム。不況のあおりを受け、職を失ったコル、ヴィレムら5人の幼馴染は大金を手に入れようと、ビール王フレディ・ハイネケンの誘拐を計画する。綿密なリサーチを重ね周到に準備を整え、首尾よくハイネケンを誘拐することに成功した5人だったが…。
実際にあったハイネケン誘拐事件を映画化。
元になったのはエミー賞受賞のジャーナリスト、ピーター・R・デ・ブリーズのノンフィクション。ハイネケンをハンニバルレクターことアンソニー・ホプキンスが演じています。他にサム・ワーシントンやジム・スタージェスなどが出演してます。
犯人目線の誘拐もの
誘拐事件そのものというよりは誘拐犯側の事情や仲間との軋轢、葛藤などに焦点が当てられています。なので警察やハイネケン社側の動きは一切語られず、犯人である5人組が話の中心。どうして捕まったのか?なぜ警察は彼らが誘拐犯だと気付いたのか?などについて具体的に語られてはいません(実際にも情報提供者は公にされていない)。なので少し犯人側に肩入れし過ぎ?なのが正直なところ。犯罪を犯しているにも関わらず、背景が背景だけに、誘拐犯側を応援したくなっちゃうんだなぁ…。あと、若者だけに考えが浅くて、老成したハイネケンに籠絡されてしまうのがまた人間臭くてね…ってもレクター博士だからね、仕方ないよね(笑)。
誘拐までの準備シーンなんかはクライムものっぽくて楽しかったです。あと、アムステルダムが舞台なだけあって、逃走する時に「次の運河まで行け!」とか言ったり、運河をボートで逃げたりするのでそこらへんも興味深かったり。
青春映画的な赴き
この事件、おそらくオランダでは有名な話なんだろうと思います。で、最大の関心は当時個人に支払われた身代金としては最高額の23億円というお金の行方。現在もその一部の所在が不明らしく、「この金を元に出所したコルとヴィレムが裏社会でのし上がっていたのではないか」との憶測が飛んでおり、映画でもラストにそのことが示唆されていました。まぁ多分きっと、その通りなのでしょう。
わたしは本作を「青春映画」として観ました(主人公たちは一応大人なんですけど)。仲間との行動が楽しい「光」の前半、友情が壊れゆく「影」の後半。ハイネケンのセリフである「人生には二通りの裕福がある。大金を手に入れるか、友人を手に入れるか。両方はあり得ない」という言葉が虚しく響き、誘拐犯たちの末路を思うと、より一層切ない気持ちになります。他の人生の選択肢があったはずなのになぁ…と。
実話なのであっと驚くどんでん返しや仕掛けはありませんが、シリアスな実録ものの良作です。興味ありましたら是非!
ハイネケン誘拐事件を題材にした映画は2011年にルトガー・ハウアーがハイネケン役のものがオランダで公開されています(日本では未公開DVDスルー)。こちらのハイネケンもなかなか凄みがありそうですな…。