あらすじ
1973年、米軍のベトナム撤退が決定した頃、アメリカ政府の秘密機関「モナーク」の研究員ランダとブルックスは、人工衛星ランドサットが撮影に成功した未知の島「髑髏島」への調査を計画する。彼らは元傭兵のコンラッドを雇い、パッカード大佐率いる武装ヘリ部隊「スカイデビルズ」、戦場「反戦」カメラマンのメイソン・ウィーバーらと共に資源調査の名目で、謎多き島「髑髏島」へ向かった。強風の吹き荒れる雷雲を抜け島へ到達した彼らの目の前に現われたのは…巨大な島の守り神「コング」!そう、髑髏島は巨大生物の生息する危険な島だったのだ。果たして彼らの運命は?そして「モナーク」の真の目的とは…?
だらだらとした前置き
「キングコング〜?いまさら〜?」
…と言うのが正直、本作のアナウンスがあった時点でのわたしの印象。すでに良作のリメイク(2005年ピーター・ジャクソンの『キング・コング』)があるし、しかも今回は「髑髏島」内オンリーらしい。…あれ?キンコンってチャンネーにあてられたゴリラ男が街で暴れてややもあって撃沈するところが面白いんでないの?と、「うむ、キョーミナシ!ハイ次!」と速攻で心の中の「観なくてヨシ映画フォルダ」にしまい込んだのでした…。
しかし!予告編が解禁され日本版ポスターが発表されると、漂ってきたのはケッサクの匂い!!そもそも製作にあたるレジェンダリーピクチャーズが怪獣映画シリーズ「モンスターバース」なるものを計画しているらしいではないか。2020年にはキングコングとゴジラが戦うらしいではないか。や、やばい…!乗り遅れては行かん、と慌てて「春映画鑑賞決定フォルダ」に移動させました(笑)。
そして、予告編を観た5歳の息子の食いつきが半端ない。彼は去年まで好きな映画は『キングコング対ゴジラ』だったので(現在の1位は『シン・ゴジラ』)、その反応はさもありなん。じゃあ母ちゃんと観に行きますかねーとチケットを取ろうとしたところ問題が。レイティングがPG12だったんですね。
ありゃりゃ困った。結構グロいのかな?と思って実際にご覧になった方に伺いました。「残酷な場面はシルエット」「直接的な描写はほとんどない」とのことだったので、念のためダメそうだったらすぐ出られるようにと入り口近くの席を確保し、鑑賞と相成りました。
結果としては『ジュラシック・ワールド』(こちらはG指定)とそう大差なかったです。もうね、子どもは大満足だったみたいですよ。一人「シンゴジラ対キングコング」ごっこが止まりません…(苦笑)。
あと、子どもと観たので吹替しか選択肢がなかったんですが、えーとね、結論から言うと吹替はあまりオススメしません…。とりあえず、佐々木希さん、結婚おめでとう!(逃げ…)
ちなみに、エンドロール後には2020年の『ゴジラVSコング』が楽しみになるおまけ映像がありました。最後までお見逃しなく!
以下ネタバレあり〜
キングコング、大活躍だな!
レジェンダリー怪獣シリーズの発端となっているのは2014年ギャレス・エドワーズの『GODZILLA』、通称「ギャレゴジ」なのですが、正直、わたしはこのギャレゴジがあまり好きでは無くて。と言うのも、主役のゴジラ登場を焦らされたのと、人間ドラマパートがうざかったのと、てめー誰だよ!って怪獣が出て来たのと、どこの寺子屋だ!っていう学校(笑)が合わなくて。わしはゴジラを観たいんじゃ!と心の暴徒が暴動起こす寸前だった(後半は結構面白かったんだけどね…)。
しかーし!本作は初っ端からコングが出まくりなのです。焦らし、一切なし!
まず、コング初登場シーンがとにかくかっこいい。髑髏島に不時着した米軍と日本軍の兵士(日本兵イカリ・グンペイを演じているのはギタリストのMIYABIだよ!)の二人が死闘を繰り広げるその最中、おもむろに崖下から現れる巨大な手!そしてゆっくりと迫り来る怒れる巨神の顔!でかい!でかすぎる!勝てる気がしない!このシーンでもう観に来てよかったー!と心底思いました。
この後も決して出し惜しみすることなくコングの勇姿を見せつけてくれます。そのサービス精神に思わずバンザーイ!
武装ヘリの機銃なんてものともせずに暴れまくる!叩きつぶす!握りつぶす!飛びかかる!!巨大タコイカ(『キン対ゴジ』を彷彿とさせますな〜)をひねる!つぶす!そして食らう!!スカル・クローラーを、船の錨の鎖で攻撃する!殴る、踏む、引きちぎるー!!
本作のコングは島の守り神で、彼が守っているのは秩序なんですね。島の調和を受け入れ、島の生命に敬意を払うものにはコングも敬意を払うが、島の生命を脅かし調和を乱すものには容赦はしない(おそらくコングの宿敵スカル・クローラーは地下に棲む=冥界の死神もしくは死や混沌そのものを表現しているのかも)。のべつ幕なしに襲うのではなく、対象をきちんと区別して攻撃しているということで、彼が知性を備えている存在だと認識できるというのも興味深いところ。
そんな神さま扱いの今回のコングくんは、美人のブリー・ラーソンちゃんを前にしても色に狂ったりはしない。ブリーちゃんが墜落したヘリの下敷きにされたでかい水牛を助けようと必死になっていると、どこからともなく現れてヘリをヒョイと持ち上げて去って行く。その振る舞いは実に紳士。ジェントルマーン!
男臭い名言にシビレる〜!
わたしが本作でまず感じたのは「ひたすら男臭い!」ってこと。それは筋肉質で均整のとれたコングの佇まい、『地獄の黙示録』を意識したと言う絵面にも見られます。また、
「どこで飲むかではなくどれだけ飲めるかが男の価値」
「男は何かを探すために戦場へ行く」
「不名誉より死」
「敵は探すから現れる」
などなど、要所要所で繰り出される男のロマンに溢れる名言の数々にわたしの中の「オトコゴコロ」が燃えましたねー。
そして、マーロウが携えるイカリの形見としての日本刀や二人で作ったというお手製ボート(機関銃付きさ!)、兵士の一人が持っていたベトコン譲りの拳銃など、ストーリー性たっぷりの「モノ」たちも漢気を感じられて素敵でした。
自然への畏怖、神殺しのモチーフ
とにかくコングの暴れっぷりが観ていてたのしい本作。とは言えただの怪獣プロレス映画で終わっていないとも感じられるのは、「怪獣」をモチーフとして対自然における人間の無力さと愚かさを描いているから。そしてその根底に戦争における悲劇が横たわっていると思えるからなんですね。
調査隊は島に爆弾を落とし、自然(コング)の怒りを買い反撃を受ける。それに対してサミュエル・L・ジャクソン演じるパッカード大佐は、再び自然(コング)に復讐を試みる。
大佐はベトナム戦争で多くの部下を失い、かつその死を踏みにじるかのような撤退に怒りと悔しさを覚えている。彼にとって「髑髏島」の任務はベトナム戦争の代替でもある。「ただの戦争狂」との見方もあるかもしれないけれど、わたしはパッカードは戦争で死んで行った部下の仇の代替として、コングを殺そうと躍起になっていたんだと思ったんですよね(もちろんコング自体に殺された者たちへの仇でもあるんだけど)。
コングは島の守り神で、異界(自然界)と人間界の均衡を保つ存在。それを亡き者にしようとする、言わば「神殺し」。神を殺すことで自らの力と正当性を証明しようとする。
本作の監督であるジョーダン・ボート・ロバーツは宮崎駿からの影響も口にしていますが、この神殺しのモチーフは『もののけ姫』を彷彿とさせます。こちらでは最終的に「神を殺した人間は自然と共生の道を選ぶ」わけですが、本作のパッカードはそれを成し遂げることはできない。自然の力の前に人はあまりに無力だから。結果として人間たちは島を離れるしかない。
第一、怪獣世界に分け入ろうとした「モナーク」の行動自体、神をも恐れぬ愚かな所業とも思えるわけです。エンドロール後の映像で、「モナーク」はゴジラやモスラ、キングギドラなどの怪獣の存在を掴んでいたことが知らされます(コンラッドやメイソンも仲間に加わった?)。2014年の『GODZILLA』では人間がゴジラ=怪獣=神に対して核攻撃という愚行を繰り返していたと語られていましたよね。この「モナーク」の存在がこれからの「モンスターバース」で重要な役割を担っていくのかもしれません。
最後に
と、いろいろ書いてきましたが、正直乗れない部分もあって…。序盤のコング対武装ヘリのシーンなど、結構スローモーションが多くて、頭がくらくらしちゃいました。
あと、怪獣ものって怪獣が出オチみたいなところあるじゃないですか(笑)。今回で言うと出オチ怪獣はスカルクローラーだろうと思うんですが…何度か出て来るので、最後の方は「あ、またか」なーんて思っちゃったんですよねー。
でかいやつ(スカルデビル)を最後に持って来るなら、中盤のやつらはもっと小さくてうじゃうじゃいるとかしてくれると、もっと驚きがあったのかなぁ…。けどそれは予告編とか特別映像とかでたくさん見過ぎたせいかもしれない。…予告編はもうちょい出し惜しみしても良いと思うよ!
好きだったシーン
- 幻のバンザイアタック
- コングの食事シーン
- コングが枝をシュッとしごいて木を武器にするところ