あらすじ
銀河全域を手中に治めんとする銀河帝国軍は、兵器要塞デス・スターを完成させるべく、カイバークリスタルの研究者である科学者ゲイレン・アーソ(マッツ・ミケルセン)を捕らえる。ゲイレンの娘ジンは、母の死を目の前にしながらも難を逃れ、反乱軍の戦士ソウ・ゲレラ(フォレスト・ウィテカー)により救い出される。
数年後、孤高の女戦士へと成長したジン(フェリシティ・ジョーンズ)は、反乱軍によりある任務を依頼される。それは、戦場で生き別れたソウに会い、父が開発に携わったデス・スターの情報を得ること。
戦争に生き、反乱にさえ懐疑的なジンだったが、父との再会という望みを胸に、キャシアン(ディエゴ・ルナ)と共に惑星ジェダへと旅立つ…。
ご存知『スター・ウォーズ』のスピンオフ。エピソード4の前日譚(オープニングの10分前まで)であり、デス・スター設計図を奪取した名もなき戦士たちの活躍を描いています。やっとこさ観てきました。
ちなみに、わたしとスターウォーズの距離感は「子どもの頃に家族で親しんだ」程度です。好きなキャラはハン・ソロとイウォーク族…という点で諸々お察しください(笑)。
そんな程度の思い入れしかないわたしが今作をどう観たかと言うと…
泣いた!!めちゃくちゃ泣きましたよぉぉお!!!
いやー、本作観た後すぐ家に帰ってEP4見返しましたけどね、もうね、オープニングクロールの時点でローグワンの勇姿を思い出して泣けるし、デス・スター破壊の瞬間の高揚が5割り増しになりました。
ダーティな奴ら
まず、何がいいって、本作の主人公たちは特別な能力=「フォース」を持たないいわば凡人なんですよ。選ばれた人間では決してない。そこがいい。
ルークも『フォースの覚醒』のレイも、「選ばれた人間」特有のキラキラ感があって(それはそれでいいんだけど)、いかにも「陽」に寄りすぎてたんですが、それに比べてこの『ローグ・ワン』の面々のダーティーさね…。なんかもう、佇まいが暗いのである。
そんな彼らが「自身の正義」を貫くために闘う姿は否が応でも胸を打ちます。
本家では絶対に日の目を見ることのなかった人たちにスポットが当てられていたことに少なからず感動しました。
悪役であるオーソン・クレニックでさえ、下手したらベイダーのフォースグリップでお陀仏しかねない小物感あるし(笑)。折々で、「使えない部下と手柄を横取りしようとする上司に悩まされ、CEOからも蔑ろにされてる」…という報われない中間管理職の悲哀が漂ってるんですわ。
そして、ジンとゲイレンの親子ドラマもぐっと来た。悲し過ぎる再会のシーンはEP6の「ルークとベイダー」のやりとりを彷彿とさせましたしね…。パパは我らがマッツ!素敵すぎました…。さっそくわたしも彼にならい、この間生まれたばかりの我が子を「わたしのスターダスト☆」と呼んでいますけど、何か問題でも?(大アリです)
これは、「戦争」映画である。
スターウォーズの「ウォーズ」が「戦争」という意味だったと改めて気づかせてもらいました。
被害を受けるのは常に市井の人々であるという戦禍の非情さ、善悪の関係なしに結局は人殺しに変わりはないという戦いの虚しさ…などなど、これまでのSWでは「陽」しか描かれなかった部分の「陰」の部分にフォーカスしているのです。
戦闘シーンも見応え十分で、序盤のゲリラ市街戦や中盤の奇襲攻撃、ラストの地上戦&空中戦と、画的にも盛り上がります。
これは選ばれた人間の物語ではないのです。
運命でも宿命でもなく、自分の意思で突き進んでいった名もなき者たちの話。言うなれば「信念」の物語なんですね。
戦争は常に「大義」が物を言います。「平和のため」だとか「自由のため」だとか。
でも、真に必要なのはそんな実感のない大義名分じゃない。「何を」信じるのか。「誰を」信じるのか。そのためならば命をかけても構わないと思えるもの。
そしてそれが、誰かの「希望」となる…。
そんなわけで、わたしは、昨年の『フォースの覚醒』よりも断然こちらの方が面白かったです。おそらくもっとスターウォーズに思い入れのある方は、より一層感動するのではないでしょうか。
以下ネタバレ!!
しかも観ていない人にはなんのこっちゃよくわからない書き方をしているので未鑑賞の人は要チューイ!
愛おしすぎるキャラクターたち
とにかく、登場人物たちがみんな愛おしすぎるんですよ。ツンデレなジン、影のあるキャシアンにKYロボットK。この三人の立ち位置のバランスがトリオ漫才みたいなんですよね。ジンの行動にボケるKをキャシが突っ込む、みたいな。「彼女ブラスター持ってるよ」の件とかね。
BB8が幼児のかわいさなら、自由すぎる発言を繰り返すKはおじいちゃん系のかわいさかと思います。
トルーパーに囲まれた時に、捕虜を捕まえたふりしてキャシアンを思いっきりしばいていたのを見ると、信頼しているとはいえ日頃の鬱憤が溜まっているのかも…ブラスターもらえないから(笑)?でもでも、こんなかわいいのに最期は漢気溢れていてね…登場人物の中で一番ひどい殺され方をするんだよ(泣)。
そしてわたしが特に好きだったのは元帝国軍パイロットのボーディー。
命からがら帝国から脱走したのにキモいタコ触手にあー!されちゃうのとか不憫(笑)だし、腕力より知力で勝負するタイプの人なのもいい。「自分の正義」のために奮闘し、死に際はやっぱりじーんときました。ジン率いる即席部隊を「ローグワン」と名付けたところも素敵。
「俺たちはローグ…ローグ・ワンだ!」
とっさとは言えいいネーミングセンスしとるやん。この「ローグ(はぐれ者)」というコールサインが後の反乱軍にも引き継がれている、という設定がまた最高じゃないですか。
そして、本作のベストカップル賞、チアルート&ベイズ! 「孫悟空と三蔵法師」とか、「弁慶と義経」みたいな公認コンビ感がありましたね。
接近戦のチアルート、銃火器のベイズと戦い方も正反対で、互いに補い合っているのもいい。
二人が信頼し合っているのがよくわかるやり取りも素敵で、
ベイズ「一人で行くのか?」
チア「一人ではない、お前がいる!」
…の件とかもう最高でしょ!
あとどうでもいいけど、ベイズは赤い甲冑のせいで途中から真田丸の作兵衛に見えた…。
ベイズ、なんとなく堀田作兵衛感ある。 pic.twitter.com/Id0lT5lM7f
— ナオミント (@minmin70) 2017年1月19日
とにかく、二人のイチャイチャ活躍をずっと見ていたかった…!
そもそもSWはキャラ萌え映画としての側面があるので、登場人物たちを愛せるかどうかがとても大事だとわたしは思っています。そういう意味でも本作は上出来。だからこそ彼らの続きが見られないというのがつらすぎる…。
今回、冒頭の黄色い文字でこれまでのいきさつがテキストで流れるオープニングクロールがないんですね。最初はあれ?と思ったのですが、最後まで観ると「そうか…」と。チーム「ローグワン」は、最終的に全滅してしまうのですから、彼らの物語はこれでおしまいなわけです。
オープニングがないのは、きっと本家SWの「スピンオフ」だからという理由ではなく、わたしは「この物語には始まりも続きもない、これで終わりですよ」という意味なのだろうと思いました。
もうね、みんな死んじゃうんだなとわかってからは、一人また一人と命を落として行く様を見ているのが辛くて辛くて…ラスト20分は涙なしでは見られないですよ。
彼らは「ならず者」というより「根無し草」のような存在で、後ろ盾もなく、故郷も家族も全て失い、残されているものは何もないんですよ。愛する者も、信じられるものもなく、自らの行いに疑問を持ちながらも、ただただ戦乱に身をやつすしかなかったわけです。
そんな彼らが一縷の望み、望み薄な「希望」のために命を散らして行く…その姿に涙しない人がいるだろうか?いや、いるはずない!!
ジンは父を信じ、キャシアンはジンを信じた。チアルートはフォースを信じ、ベイズはチアルートを信じた。そして、自分の信じるもののために闘おうとする「ローグ・ワン」を、信じた人たちがいた。名もなき人々の「信念」が身を結び、「新たなる希望」へと繋がっていったのだと思うと感慨深いものがあります。
戦争の闇…反乱軍も「正義」ではない
SW世界に触れている者にとって、帝国・シス=悪であり、反乱軍・ジェダイ=善という二元論が当然であります。
けれど、本作の反乱軍は善一辺倒ではないんです。反乱軍のしていることが必ずしも「正義」ではない。大義の前には「不正」も存在する。戦争の中においてみればそれは当然のことですよね。
序盤にキャシアンが内通者と思しき人物を口封じ&足手まといになるからと躊躇なく銃殺した段階で「え!?」ってなりましたもん。キャシアンはずっと反乱軍の中で暗殺や諜報活動など、日陰な仕事をさせられていたというわけですが、この反乱軍の負の部分を描いているというところにも好感を持ちました。
また、フォレスト・ウィテカー演じるソウ・ゲレラに関して言えば、「過激派」として同じ反乱軍からも距離を置かれているのですが、この人の行動、完全にPTSDを発症した退役軍人ですよね。繰り返された戦闘で、心身ともにぼろぼろ。裏切りやひどい拷問にあったことで、娘同然だったはずのジンにも「これは罠か?」と言ってしまう悲しさ。
この人も戦争の被害者なのだなぁと感じてしまいました。
それから、大事なところで決断できない反乱軍の会議は、民主主義の悪いところをいやらしく指摘してましたね。戦争に民主主義は要らないと言うことか…?
コアなファンへのサービスも充実
また、本作でもSW好きが喜びそうな小ネタも満載で、惑星ジェダでジンが絡まれる二人組はEP4でオビ=ワンに腕を切り落とされるチンピラ、ポンダとコーネリアスだし、ウェッジ・アンティリーズがオーガナ議員に呼ばれる形で名前だけ登場したりもします。オーガナとモン・モスマとの会話には名前こそ出てきませんが、オビ=ワンと思しき人物について語られるし、もちろんR2とC3POのカメオ出演もあり。
そして、公開前から話題になっていた「ゴースト」の参戦!
https://oriver.style/cinema/rogue-one-rebels-easter-egg/
「ゴースト」はアニメ『反乱者たち』で主人公エズラたちが乗っている宇宙戦です。『反乱者たち』は去年子どもとハマってよく観ていたので、これは嬉しかったですね。…そういえばエズラも両親を帝国に連れていかれて、やさぐれた幼少期を過ごしていたところをケイナンに救われてる。この経緯は本作のジンと被る気がしますね。
他にも『反乱者たち』ネタは多々あった模様です!チョッパー、気づかなかったー。
ローグワンにこんなにも登場してた"反乱者たち" - ジョニーリンゴ
また、出てくる惑星もそれぞれに個性的で、砂漠の広がる(タトゥイーンやジャクーを思わせる)惑星ジェダはその名前からもジェダイとの繋がりが指摘され、砂に埋もれたジェダイナイトを模したと思しき石像まで出てくる。
カイバークリスタル関連の土地のようなので、ジェダイ寺院や修練場か何かの跡地があるのでしょう。 住んでいる人も東洋人のような顔付きをしており、市場の様子も何となくエキゾチックであります。
他にも、ジンとゲイレンが暮らしていた黒い土と緑に覆われた惑星ラ・ムー、雨の降りしきる岩山の惑星イードゥなどは、これまでのSWの惑星を彷彿とさせながら、新しさもありました。特に最終戦場となるスカリフは南国のリゾートのよいな白い砂と青い海が広がる惑星で、なかなかに新鮮。そんな朗らかで穏やかそうな土地で禍々しい戦闘が繰り広げられるのも、なんとも皮肉ではあります。
ベイダーの家(?って言っていいのか)惑星ムスタファーも出てきましたね。
ここまできたCG合成の妙!
そしてこれは触れておかねばなるまい、ウィルハフ・モフ・ターキンとレイア姫の登場!別人が演じている顔にCG合成を施したとのことですが、そのあまりの自然さに驚きました。普通の人の演技と変わらず、まったく違和感ありませんでしたね。
最後の最後にドヤ顔で登場するレイア姫も、あんな堂々と正面から映るとは思わず。中の人でもあるキャリー・フィッシャーさんの訃報の後に観ただけに、余計感慨深いものがあり。ただあんなに清々しい表情で「希望です」とか言われちゃうとね…。「たくさん人死んでるんだからもうちょっと悲しめよ…」と思ったりもしたんですが、まぁこの人は故郷の星を爆破されても「悲しんでいる暇はありません」とかしれっと言えちゃう人なのでね、まぁいいのかも(笑)。
それにしても今後、この技術が主流になったらたとえ歳を取ったとしても最悪死んだとしても映画に出続けられるということにもなり、末恐ろしくも思えますな…。
そんなわけで、SWの世界をしっかりと引き継ぎながらも新しい要素も盛り込んだ、まさしく「もうひとつのスターウォーズ」でした!
他にも「ラスト10分のベイダー無双と設計図バトンリレーの緊迫感!」とか「イードゥでの奇襲が伝達不足で失敗するリアル…」とか「モフモフ担当のモロフが好き!」とか「スター・デストロイヤーがEP4並みのプラモ感が溢れてて素敵!」とか、いろいろ書きたいことはありますが、とりあえずおしまいにします。
フォースは我と共にあり!!!
作品情報
- 監督 ギャレス・エドワーズ
- 製作総指揮 ジョン・ノール、ジェイソン・マクガトリン
- 脚本 クリス・ワイツ、トニー・ギルロイ
- 音楽 マイケル・ジアッキノ
- 製作年 2016年
- 製作国・地域 アメリカ
- 原題 ROGUE ONE A STAR WARS STORY/ROGUE ONE
- 出演 フェリシティ・ジョーンズ、ディエゴ・ルナ、ベン・メンデルソーン、ドニー・イェン、チアン・ウェン、マッツ・ミケルセン、リズ・アーメッド、フォレスト・ウィテカー