ファンタスティック映画主婦

雑食つまみ食い系映画感想ブログ

女性目線で選んだ戦争映画ベストテン!

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今年もワッシュさんのベストテン企画に参加させていただきます。

 

 

d.hatena.ne.jp

 

 

 

  1. 紙屋悦子の青春(2005年、黒木和雄監督)
  2. この世界の片隅に(2016年、片渕須直監督)
  3. 太陽(2005年、アレクサンドル・ソクーロフ監督)
  4. ライフ・イズ・ビューティフル(1997年、ロベルト・ベニーニ監督)
  5. 日本のいちばん長い日(2015年、原田眞人監督)
  6. ディアハンター(1978年、マイケル・チミノ監督)
  7. 大脱走(1963年、ジョン・スタージェス監督)
  8. 戦場でワルツを(2008年、アリ・フォルマン監督)
  9. ある愛の風景(2004年、スサンネ・ビア監督)
  10. 太陽の帝国(1987年、スティーブン・スピルバーグ監督)

 

 

ちなみに、昨年は「音楽映画ベストテン」でした。

 

www.cinemashufu.com

 

いやー、悩みに悩みましたねー。ただ、一位と二位は即効決まりました。

特に二位に入れた「この世界の片隅に」は戦争映画としてもアニメーション映画としても日本映画としてもベスト級に素晴らしかった。これを入れずに何を入れるかって話よ。

一位は個人的に思い入れの深い映画を選びました。あとは誰もが知る名作・良作がほとんどになってしまったな…。そもそもあまり戦争映画は詳しくないし、戦闘描写満載な軍隊ものも得意ではないので、なんとはなしに「女性目線」なラインナップになったかなーと思います(わたしが「女性目線」を持ってるのかというと若干あやしいですけれども……)。

 

以下、私観をば。

 

 

紙屋悦子の青春

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わたしはこの映画を2006年に岩波ホールで観たのですが、もうね、とにかく大泣きしてしまいまして。
しかも、映画を観ている最中ではなく、帰りの電車の中で(笑)。何というか、いろいろな感情が後からじわじわ来る感じで、自分でもびっくりするくらい、もうどうしようもなく涙が止まらなくて。必死に抑えてはいたんですけどね…乗り合わせた人はおそらくぎょっとしてたんじゃないでしょうか(汗)。
当時の自分の心持ちなどの影響もあったのでしょうが、観賞後あんな気持ちになったのは後にも先にもこの映画だけです。

元は舞台用戯曲らしく、会話劇が中心。ほとんどのシーンが主人公悦子の家の中で繰り広げられ、登場人物も5人と少ないため、絵面はかなり地味です。
また、他の戦争映画のように、作中に戦火を感じさせる描写は全くなく、ぱっと見ほのぼのとしたホームドラマのようでもあります。それにも関わらず、セリフの随所に垣間見える市井の人の戦争への思い、役者さんたちの何気ない表情の変化から、戦争の悲劇性やそれを堪え忍ぶしかない人々の苦悩を感じ取ることができます。
監督は「美しい夏キリシマ」や「父と暮らせば」の黒木和雄。2006年の4月に今作の公開を待たずして亡くなってしまったため、残念ながらこれが遺作となってしまいました。

主人公、紙屋悦子を演じたのは当時39歳の原田知世。悦子は見合いを控えている女性ということで、おそらく20代の設定だろうとは思うのですが不思議なことに、ほとんど違和感がない。さすがは年齢不詳女優、原田知世…。その佇まいは、自分の心を秘するしかなかった当時の女性そのものです。達観と言えるほど潔くもない、諦めと言えるほど割り切ってもいない。なんとも複雑で微妙な乙女心の機微。おそらく、現在の20代ではあの空気感を出すのは難しいだろうと思いますね。
兄嫁役の本上まなみもかなり好演していました。一人の女性としての戦争への思い、夫への愛情、親友であり義妹でもある悦子への思いやり…様々な気持ちを内包している役柄を朗らかに演じています。
また、登場人物たちはみな九州の方言で話しています。それがまたのどかな田舎の雰囲気を醸し出していて、会話劇の妙(話が噛み合わない、聞こえ間違いなどの可笑しみを含む)を感じさせます。とはいえそれにより、会話の端々から漏れる戦時中独特の悲壮感が一層際立つわけですが…。

派手さはなくともじんわりと心に染み入る戦争映画です。悲惨なシーンなどはないので、「戦争モノはちょっと…」と嫌厭しがちな女性にこそおすすめです。「永遠のナントカ」とか、「君のためにこそナンチャラ」辺りよりもよっぽど特攻隊について描かれていると感じたし、日本人の心に響く映画だと思います。

 

 

この世界の片隅に

感想などはこちらに書きました。

 

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いやほんと、すごい映画でした。喜び笑い悲しみ怒り安らぎ救い…この一本の映画の中に、あらゆる感情がつまっている。

それでもって、徹底して史料に基づいたという細部の描写もこだわりがすごい。

 

今年を代表する一作と言って良いと思います。興行収入ランキングが週を追うごとに上がっていくというこの状況もエモい。

 

 

太陽(2005)

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この映画は、今は無き銀座のシネパトスにて立ち見で観たのを覚えています。あの場末な地下街の感じと映画内の地下豪の暗澹とした様子が妙にシンクロしてましてね。そして頻繁に往来する地下鉄の音と振動がまたなんともね…いやーいい映画館だった…。

と、それはさておき、今作で昭和天皇を演じたイッセー尾形があまりに昭和天皇過ぎて驚きます。皇后役の桃井かおりもいい味出してます。この二人に、孤独な夫とそれを優しく包む妻といった夫婦像を見ることができ、これはある意味夫婦愛映画ですね。

監督はロシアの名匠アレクサンドル・ソクーロフ(「エルミタージュ幻想」など)。外国人が描いているのに日本の描写に全く違和感がありません。幻想的な空襲描写は一見の価値あり。

唯一の難点は時系列が少しわかりにくいところ。歴史的な背景を詳しく知っていればまた興味深く観られるかも。

 

 

ライフ・イズ・ビューティフル

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今更わたくしごときがガタガタ抜かすのは憚られるほどの名作。とりあえず言っておきたいのは、戦車ドッキリ部門があれば間違いなく一位だろうと。

 

 

日本のいちばん長い日(2015)

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そっちなの⁈と言われるかもしれませんが、リメイク版の方です。「軍人とか出てきて、なんか堅苦しそう〜」と嫌厭している女性にこそ観て欲しいんですよ。今作はその辺りをターゲットにしていたことは間違いない(と、思う)。

まず、「良い男」がたくさん出てくる。イケメン枠の松坂桃李、渋担当に役所広司と堤真一。他にも素敵な若者やおじ様がわんさか。ってこれはあれか、乙女ゲーか(笑)。おじいちゃん好きのわたしは山崎努のウィンクにズッキュンでしたけどね。あと、ちょいたるみ気味な役所広司の半裸に顔を赤らめるキムラ緑子にも萌えでしたねー。

…とまぁ、そんなキャラ萌えに浸りながら終戦の歴史を知るきっかけにもなると思います。戦争を終結させようとする者、それを拒む者…迫り来る1945年8月15日へのカウントダウン。その前夜、玉音放送をめぐり様々な人間たちがそれぞれの選択を迫られます。「耐え難きを耐え、偲び難きを偲び…」のかの有名な一節が流れる頃には思わず涙してしまいます。

昭和天皇を演じるは本木雅弘。なかなかに好演しているのですが、やはりわたしの中ではイッセー尾形に軍配。

 

オリジナルも名作です。

日本のいちばん長い日 [東宝DVD名作セレクション]
 

ディアハンター

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「タクシードライバー」より、こっちのデニーロの方が好き。ラストのロシアンルーレットの悲壮感と緊張感に何度観ても手が震える。

 

大脱走

大脱走 [Blu-ray]

母親がスティーブ・マックイーンが好きだったこともあり、子どもの頃何度か観たことがあって。その時は内容もよくわからず「刑務所からみんなで逃げる話」だと思って観ていたんですが、学生の時にデジタルリマスター版を劇場に観に行って、はじめて「ドイツ軍に捕らわれた捕虜たちの話」だったと知ったからびっくりですよ(もちろん自分の読解力の浅さに  笑)。

これ、改めて見返してみると本当にすごい映画。エンタメ性も申し分なし、史実を元にしているので物語の強度もしっかりしている。ラストは決して爽快ではないのになぜだか清々しい。そして、そこそこ重い話なのにテーマ曲は妙に軽い(笑)。

マックイーンだけでなく、ほかの脱獄者もそれぞれに個性があって、群像劇としての面白さがあるのも素晴らしい。「映画を観た!」って気持ちにさせられる名作だと思います。

 

戦場でワルツを

戦場でワルツを 完全版(初回生産限定) [DVD]
この映画で「ドキュメンタリーアニメーション」という言葉をはじめて耳にしました。ロトスコープ風の作画は3DCGや手描きアニメ、Flashの技法などを用いて作られたそう。

揺らめく光、歪んだ印影がなんとも幻想的で、ある意味実写と違って一歩引いて見ていられるのだけれど、ラストまで行って一気に現実に引き戻される。観終わってずーんと重たい気持ちにさせられます。

戦場に立つだけで、人はもう何かを背負わされているのだ。否応無しに。

 

ある愛の風景

ある愛の風景 スペシャル・エディション [DVD] 

デンマークの女性監督、スサンネ・ビアの作品。アフガニスタンに派遣された軍人の夫が、別人のようになって帰って来た…というお話。兵士のPTSDとそれを受け入れようとする家族の物語です。

妻にしてみれば、夫がそこで何をしているかは知る由もない。そこで負った傷を、共に背負うことはできない。遠い国の戦争に家族が駆り出されるということはどういうことか…。

今の日本の状況を見ると決して人ごととは思えません。

 

太陽の帝国

太陽の帝国(初回生産限定) [DVD]

スピルバーグ監督作の中ではいまいち評価の低い(ような気がする)作品。戦争に翻弄されたある少年の成長譚…と簡単に言えばそんなお話。なんだけど、どこかあわあわとした幻のような、非現実感が作品全体に漂っているんですよね(そのせいか主題や主張が曖昧で、こちらに伝わってこないのがおそらく不人気の理由かと…)。

ただ、個々のエピソードには印象深い絵面が多く(主人公ジェイミーが零戦乗りの日本兵に敬礼するシーンや、日本人少年兵の乗った零戦が撃ち落とされるシーンなど)、「租界」の世界観も見所。
ちなみに主人公の少年ジェイミーを演じているのはクリスチャン・ベール。そう、後のバットマンである…。

 

 

次点:第5惑星

 

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入れるかどうか迷ったけど、SF・架空の戦争は除外しようと思い、 結局ベストテンからは外した。
戦争がなぜはじまるか。その原因は経済的理由(領土開拓含む)、 宗教的対立、種族間憎悪…さまざまあるでしょうが、その根本にはおそらく互いの文化・言語への無理解があると思うのです。つまり裏を返せばそこを克服すれば世界平和も夢ではないということ。もしかしたら、この映画にそのヒントが隠されているかもしれない…いないかもしれない…。 

 

 

なんとなく今回は外したけど、ベストテンに入れてもよかったもの。

野火(2014) 

野火 [DVD]

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見応えはかなりあります。あり過ぎて観終わった後は、腹筋腕立て100回ずつしたんじゃないか、ってくらい疲れます。 

 

鬼が来た! 

鬼が来た! [DVD]

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「この香川照之がすごい!」って賞があったらベスト3内には入ると思う。終盤からラストにかけての絶望感半端ない。

 

 

というわけで以上です!