あらすじ
かつて熱血を売りにしたニッチなドラマでヒットを飛ばした杉崎(藤原竜也)も、現在は低迷中の俳優。新たな活路を見出そうと、探検バラエティ番組に隊長の役割として参加することになる。しかし、台本はおろか、進行もないに等しく、行き当たりばったりの制作方法には戸惑うばかり…。
果たして、杉崎の運命は?そして、探検隊は謎の巨獣「ヤーガ」を発見することはできるのか⁉︎隊員たちに、一体どんな困難が待ち受けているのか‼︎
いやー、すごく面白かったです!
いいねいいね、探検隊。わたしは世代ではないので件の番組は見たことないのですが、UMAは好物なのでかなり楽しめました!
でも今じゃもう、絶対この手の番組が作られることはないのだろうな〜(そう思うと、なんだか切なくなるような…)。
ただ一言言っておくと、この映画の肝は「ユルい、くだらない、安っぽい」ですので、そういうのが不快な方は絶対合わないと思います。
これジャングルじゃなくてどう見ても日本だろ!って怒っちゃう人にはオススメしません。ちなみに撮影はすべて国内で行われたよう。それを大真面目に「南シナ海上の孤島」としています…(笑)。
また、現地人としている主要キャストもほぼ日本人です。
この人たちも日本人。占い師の婆ばは絶対外人だと思ったし!
わたしは、この映画全体に漂う大真面目な馬鹿さ加減を愛おしいと思えたので、不思議とその辺の嘘臭さは全く気になりませんでした。
それから、この映画はテレビ番組における過剰な演出、いわゆる「やらせ」を肯定しているところがあります。
わたしとしては、創作物自体に何らかの作為性が生じるのはごく自然なことだと思っているので、やらせ自体に悪感情は持っていません(事実を捏造した報道などはもちろん良くないと思いますが)。「男女がワゴンに乗って旅する番組」に台本があろうが、「納豆食べると痩せますって言ってる健康番組」に根拠がなかろうが、「悪霊をお祓いするおばさんが出てくる番組」のおばさんに実は全く霊感がなかったとしても、別にそこまで目くじら立てて怒ることでもないと思うのよねー。
なのでその手のことに嫌悪感のある人にもあまりおすすめできる映画ではありません。
関係ないですが、最近のマジメな探検番組としては、NHKスペシャルの「大アマゾン」シリーズがめちゃくちゃ面白いです。
もちろんこちらにはその手のやらせはありませんよ(当たり前!)。
今作で特に好印象だったのは、出演者が大変魅力的だったところ。
落ち目の俳優役の藤原竜也はメタ的な意味でも(?)面白く、ユースケ・サンタマリアは多分、演技してないよね?「どーんとやっちゃってよ!」ってぷっすまで言ってることとほぼ変わらない(笑)。
小澤征悦の役柄もはまってましたね。いちいちUMAのかぶり物を出してくる音響担当役の川村陽介も面白かった。現地人ガイド役の岡安章介(ななめ45°)もいいキャラしてたし。キャストに関しては言うことなしです。
エンドロールのオフショットもすごく雰囲気がよくて、きっとみんな楽しく撮影してたんだろうな〜と微笑ましい気持ちになりました。
藤原竜也、探検隊の隊長に!「記憶が飛ぶくらい過酷な撮影だった」 : 映画ニュース - 映画.com
撮影自体はとても大変だった様子。
以下ネタバレあり。
映画としてはチープでギャグもくだらないけれど、案外最後はいい話にまとまっているので、以下の予告編を観て、少しでも興味が湧いた方は是非本編をご覧になって欲しいと思います!!
藤原竜也がジャイアント・アリゲーターと死闘!『探検隊の栄光』予告編
ウソから出たマコト
今作で一番好きだったのはオチです。
というのも、「どんなにくだらないことでも、情熱を注げば人の心を動かす」ということと、「その情熱は時として奇跡を起こす」ということを描いていると思うから。
身も蓋もなくオチまで書いちゃうと、
やらせ満載で撮影を続ける撮影クルーはいかにも謎の巨獣「ヤーガ」がいそうな洞窟までやってくる。だがそこは現地人反政府ゲリラのアジトだった!ヤヴァイ!→しかし、藤原竜也の熱血演説にほだされたゲリラたちは番組の撮影に協力してくれることに。ヤッタネ!→お手製の「ヤーガ」を作り、最後の撮影に臨んでいる最中、洞窟に政府軍が完全武装で乗り込んできてしまう!ドウシヨウ!!→構わず撮影を続けようとするクルーたちの前に、本物の「ヤーガ」が姿を見せた⁉︎マサカ⁉︎→思わず恐れ入った政府軍は急いで撤退。思いがけない撮れ高にクルーも大喜び。番組も20%超えの高視聴率を獲得し、続編の制作が決定。内乱状態だった現地の国も和平交渉がなされ、現地人たちが見つめるテレビには探検隊の姿が…。というわけで、メデタシメデタシ。
なんだこのご都合感(笑)。
いや、でもね、映画で観るとこのご都合感があっぱれな気分になるんですよ!作りもの(やらせ)でも、本気でやり続ければいつか本物になる!わたしはね、これを「努力すれば報われる」というメッセージだと受け取った(前向き!)。
それから、ゲリラやってた人たちが最後楽しそうにみんなでテレビを見ていたシーンもよかったですね。視聴率より本物のヤーガより、この事が一番の「探検隊の栄光」だったんじゃないかなと、わたしは思いました。
映像切り替えと小ネタにクスクス
予告編見るとわかると思うのですが、作られた番組と、現在撮影中の映像とが交互に映し出されるんですね。
この切り替えがまた面白い。
「崖からクルーが落ちた!」→実際ははしごに乗って手を伸ばしてる。
「ヤーガに近づいてはならない!」と叫ぶ現地人のおっさん→実際は「ゴミをここに捨てるな!」と怒っているだけ。
このおっさんといい占い師といい、適当な日本語吹替なのにそれっぽく見えるという「らしさ」が最高です。
おどろおどろしい占い師のおばあちゃんが、カメラがはけたあとプロデューサーからの礼金をふんだくっていたのも笑えましたね。
大げさな効果音やテロップ、わざとらし過ぎるクルーの演技…。件の探検バラエティが多分に再現されているようなので、当の番組を見たことのある方は懐かしさを感じるかも?
あと、前述したUMAかぶり物にユースケがその都度律儀にノリツッコミするのもいちいちおかしかった。本当にヤバイ時の合図が、「トゥルース」ってのも、その経緯といい、ばかばかしくて好きでしたね。
藤原竜也の新境地?
藤原竜也と言えば、「デスノート」や「カイジ」、あとはtwitterの非公式botの影響もあって、叫んだり喚いたりするのが彼の芸風…いや、演技の特徴みたいにされているところがありますよね。
寿゛限゛無゛寿゛限゛無゛五゛劫゛の゛摺゛り゛切゛れ゛海゛砂゛利゛水゛魚゛の゛水゛行゛末゛雲゛来゛末゛風゛来゛末゛食゛う゛寝゛る゛所゛に゛住゛む゛所゛藪゛柑゛子゛ブ゛ラ゛コ゛ウ゛ジ゛パ゛イ゛ポ゛パ゛イ゛ポ゛パ゛イ゛ポ゛の゛シ゛ュ゛ー゛リ゛ン゛ガ゛ン゛シ゛ュ゛ー゛リ゛ン゛ガ゛ン゛の゛
— 藤原竜也bot (@naaaatatsuya) 2016年7月4日
今作でも期待を裏切らず、大声で演説ぶるシーンが二度ほどあるのですが、それ以外はほとんど大人しい(笑)。カメラマンの無言の立ち位置修正に戸惑ったり、ユースケプロデューサーの「そこはドーンと!」を真剣に捉えたり、不安げに思い悩む姿はなんとも新鮮でしたね。純朴な青年って感じ。
焼きトカゲを喰わされるシーンなんて素に戻っててなんかかわいかったな。
こんな藤原竜也はなかなか見られないんじゃないでしょうか。
映画では、そんな主人公杉崎の成長も見どころの一つです。決められた役しかできなかった俳優が、殻を破り新たな自分を見出していく。今作の藤原竜也はまさにはまり役でしたねー。
それから、熱血演説での「俳優として演技してるのに実際にも熱い人間だと思われる」「カメラが回っている間は本気でやってるんだよ!」という一連のセリフは彼の本心の叫びだったのかなと思ったり…。
また、ゲリラたちから「こんな撮影はくだらなくて無意味だ」と言われた杉崎が、そんな彼らに言った「銃なんか持ってそんな格好して、お前たちのやっている事こそ意味はあるのか?」というセリフ。これは、行き当たりばったりの撮影を続けてきた探検隊の行動を逆に肯定していると共に、「役割を捨てて自分らしく生きるよう」と言うメッセージでもあったのかな、と思いました。
おやおや、くだらないお話に見えて何気に高尚なこと言ってる映画だったんじゃないの⁉︎
ドーンときたね!!
原作小説。あの映像切り替えがどんな文章になってるのか気になるので、近々読みます。