あらすじ
口が悪く素行不良な老人、ヴィンセント(ビル・マーレイ)。今日も今日とて朝からストリッパーのダカ(ナオミ・ワッツ)とよろしくやっている。ある日、隣にシングルマザーのマギー(メリッサ・マッカーシー)とその息子、小学生のオリバー(ジェイデン・リーベラー)が引っ越してきた。成り行きからヴィンセントは、仕事で帰りの遅いマギーに代わり、放課後のオリバーの面倒を見ることになるが…。
みんなー!ビル・マーレイは好きかー⁉︎
わたしはね、大好きですよ。
子どもの頃「ゴーストバスターズ」観て以来ずっと好きです(どんな子どもだ 笑)。
きっとみんなも、だいすきだよね!
今作にはそんな、ほとばしるビル・マーレイ愛が随所に感じられます。そして最終的にはただのビル・マーレイ讃歌となります(笑)。
それもそのはず、今作が初監督となるセオドア・メルフィは「ヴィンセント役はビル・マーレイしかいない!」と半年間マーレイの携帯の留守録に出演交渉のメッセージを吹き込み続けというツワモノ。
ビル・マーレイって、事務所などには所属しておらず、マネージャーもいないらしい。かけ続けた携帯番号も「多分」マーレイのだろうって感じだったらしく…。そこは普通諦めるか他の方法考えようよ(笑)。しかも対面できたらできたで8時間も説得したって話です。お前どんだけマーレイ好きなんだよ!
もはや、タイトルも「ヴィンセントが教えてくれたこと」じゃなくて、もう「ビル・マーレイ、アイラブユー」とかね、「マーレイ万歳!」とかの方がしっくり来ます。
なので、マーレイ好きは必見です。それ以外の人は…あ、腹ボテでセクシーダンスを踊るナオミ・ワッツが最高だったので、彼女目当てで観ても楽しいです!あと、オリバー少年もかわいいです!
あとは…以下ネタバレあり。
天性の女たらし、人たらし
ヴィンセントは酒はやる、ギャンブルもやる、ついでに女ともやる、車は年季の入ったオープンカーで、部屋は散らかり放題、口を開けばくだらないジョークか嫌味か人種差別発言ばかり。はっきり言ってこんな老人が隣に住んでたら即引っ越したくなりますよ。子連れなら特にね。
でも、シングルマザーのマギーは「あんな人近寄っちゃだめよ」とか言わない。あろうことか(成り行きとはいえ)、対価を払ってまで(1時間12ドル…って相場的にはどうなの?)、オリバーの放課後の面倒を見てもらうという選択をします。心が広いというか考えなしというか…。
でもね、ヴィンセントは確かに素行不良なんだけど、それだけではない何かを感じさせるんですよ。特に女性はそういう「何か」に弱い(笑)。
ある時には元夫から親権裁判を起こされて落ち込むマギーに「(父親の方に親権を取られたら)せっかくの仕事がなくなっちまう」と軽口を叩くのですが、それがとてもチャーミングで、思わずマギーも笑ってしまうのね。
それを見てヴィンセントは「やっと笑ったな」って言う。このナチュラルボーン人たらしめ(褒め言葉)!
なんかもうこの辺りは、まんまビル・マーレイのイメージだよね。飄々としていてつかみどころがなくて、ユーモラスでおちゃめでどこか憎めない。笑っているのに悲しそうで、怒っているのに嬉しそう。
人の警戒心をいとも簡単に解いてしまうのは、このキューピー顔のせい?
くそぅ。くわえ煙草がちょうかわいいぞ。
ベタすぎる「老人と少年」の友情描写
偏屈な老人とひ弱な少年の友情なんて、もう何度となく映画で描かれてきたことですけど、今作もその王道を律儀に踏襲しています。
①老人はいじめられていた少年を助ける。
②少年は老人から生きた知恵を授かる(ケンカの仕方とかギャンブルとか)。
③仲違い、ないしは老人の肉体的危機が生じる。一時の別れ。
④少年は老人の過去を知る。
⑤結果として少年は老人を孤独から救う。
手垢つきまくり、と言ったらそれまでなんだけど。でもわたしはね、このベタにおっさんと少年が仲良くなる展開が大好きなのよぉ〜!!
マーレイがいじめっ子をぶちのめしてスケボーかち割って助けるところとか、少年がいじめっ子撃退の特訓するところとか、反撃に成功した少年とジュークボックスの前で変なダンス踊るところとか。二人の距離が近づく様子がわかりやすく、そしてなんかかわいいのである。
芝刈り機で「土刈り」させられているオリバー。この画とか、なんかほのぼのしちゃうんだな。
マーレイ、死す?
ちなみに、海外向けポスターはこちら。
マーレイに天使の輪っかが!えっマーレイ死んじゃう話?ってこれ観た時は思ったんですけどね。大丈夫、死にませんでした。
ただ、中盤に脳卒中でぶっ倒れます。何とか一命は取り留めるのですが、体に麻痺が残ってしまいます…。この時のマーレイの演技は絶妙でしたね〜。口がうまく回らない感じとか、すごく自然で一瞬マジなやつなのかと思ったぜ。
話すこともままならず、自暴自棄になりかけるヴィンセント。けれど、オリバー少年はじめマギーやダカに励まされ、リハビリに専念。みるみる回復し、ついに杖をつけば歩けるようになります。けれど…。
退院し、自宅に戻ってきたヴィンセントに妻の施設から電話が。なんと悲しいことに、入院している間に最愛の妻が死亡したと言うのだ。またしてもふさぎ込むヴィンセント。
同じ頃、マギーと元夫との親権裁判でヴィンセントがバーや競馬場にオリバーを連れ出していたことが判明し、共同親権となってしまう。ヴィンセントは、怒り心頭に発したマギーからオリバーにはもう関わらないよう告げられてしまう。…せっかく仲良しご近所さんになれたのにね。
けれどもオリバー少年は、ヴィンセントが処分した妻の遺品や思い出の写真を拾い、ある行動に出ます。
マーレイ、ついに聖人の仲間入り!!
オリバー少年はバーの常連や施設のスタッフから話を伺いながら、ヴィンセントの過去を調べていく。それは学校で出されていた「身近な聖人」の宿題で、ヴィンセントを聖人として発表するためだった。
マーレイはついに聖人君主として祭られることとなりました(笑)。
オリバーの発表会のスピーチはなかなか感動しました。 偏屈で、地域の人間にも疎まれていたヴィンセントが、少年を通して受け入れられる。
いや、これって高齢化が進む地域で是非取り入れて欲しい展開じゃないかと思ったんですよ。「暴走老人」と言うかね、キレる老人が増えてるらしいけれど、その一番の原因ってやっぱり孤独でしょ。偏屈老人を孤立させないのがなんだかんだ地域の安心のためにも必要なのでは、と。…まぁ多分そんなこと、この映画では考えられていないけどね。
ラスト、ヴィンセントは、子供の生まれたダカ(結局ヴィンセントの子だったのかな?笑)、マギーとオリバー、オリバーの元いじめっ子とみんなで食卓を囲んで楽しそうに終わってました。
もしヴィンセントが死んだら、お葬式できっとたくさんの人が悲しんでくれることでしょう。…って多分このじいさん相当長生きするだろうけど(笑)。
わたしはこのビル・マーレイが好き。