あらすじ
2016年、南アフリカはヨハネスブルグ。ロボット警察官が治安維持のために活躍している。若き天才プログラマー・ディオンは世界初の自律型AIを完成させたが、AIもろともストリートギャングに誘拐されてしまう。AIをインストールされた廃棄予定のロボット(22号)はチャッピーと名付けられ、ギャングとして育てられることに…。
パンフレット:820円 コラムも充実。新聞を模した凝った作り。「シガニー・ウィーバーを彷彿させる」って(笑)
ネタバレあります。ご注意ください。
『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督作
『第9地区』は、数年前にテレビ放送した時に見たのだけれど、とても印象に残っています。アクションシーンは観ていて楽しいし、ストーリーも愉快で、SF的要素を多分に含みながら、展開は人間の醜さや異種間同士の友情などを描いた人間ドラマという、なかなかに熱い映画だったと記憶しております。
映像からは、南アフリカの混沌した雰囲気と荒々しさがほとばしっており、演出やカメラワークなどにも力強さと勢いを強く感じました。
この「チャッピー」も「第9地区」同様、映っている映像は、銃撃戦、カーチェイスに爆発と、アクション満載で、展開は完全にSF的事象です。人間の意識=心を電子化するというモチーフは別段目新しいものではないと思いますが、それを親と子の人間ドラマの中に組み込むことによって、オリジナリティー溢れる映画になっていると感じました。
チャッピーがとてもかわいい
耳の動きがとてもいいの。
女の子人形を愛でていたら、そんなのはギャングじゃない!とパパに怒られてチャッピーがしょんぼりすりと耳もしょんぼり、下を向きます。あはは!かわいすぎる!
絵本をもらって、「My Book!」とはしゃぐチャッピーに、なんだか胸が熱くなりました。そうだよね、自分のって、嬉しいよね。
他にも、泣く、うろたえる、悲しむ、喜ぶ、怒る…など、表情を持たないはずのロボット(しかも警察用ロボットだから、見た目はかなり武骨)なのに、その挙動の一つ一つに胸を打たれる場面が多々あります。
しかも全編にわたりチャッピーがかなり不憫な状況に置かれるので、何度も泣きそうになりました。
ボロボロになりながら、「うちに帰る…」
破壊されそうになり、「やめてやめて!なんでこんなことするの?」
ああぁ…不憫すぎる…泣
ロボットなのに背中で語るんだよ…哀愁漂いすぎ。
チャッピーが起動し、ママたちと初対面した時の様子は人間の赤ん坊というよりは猫や犬などのそれと近いような気がしました。
物陰からこちらをうかがう仕草はかなり子猫っぽい。
ヒュー・ジャックマン演じる軍人上がりの危険人物ムーアについて。
彼はひゃっはーしながら破壊と殺戮を楽しみます。
笑いながら殺人兵器ロボ・ムースを操作する彼を見て、この人はただ、これをしたかっただけなんだな、と思いました。
自分より若くて劣る(とこの人は思ってる)プログラマーが評価されて面白くなかったとか、自分が作ったものが誰からも理解されなくて頭に来た、などの理由が彼をあんな行動に走らせたのかもしれませんが、わたしは、彼はただ自分の楽しみのためにこれを動かしたかったんんじゃないかなって感じたんです。
親子の物語
でもそれはもしかしたら、チャッピーの創造主=メイカーであるディオンも同じなのかもしれないんだよね。彼がAIにこだわる理由ははっきりとは描かれていません。
ただこれを動かしてみたい、どうなるかやってみたい…それが人の役に立つとか、どんな仕事ができるかなんて言うのは二の次なんだと思うんです。天才科学者という設定なので、その後のことより、まず作りたい、が先行してる。とにかく、とりあえず。だから廃棄処分予定のロボットを使っただけなんです。それにより彼は、チャッピーからひどく責められることになります。
どうしてぼくをこんな体にしたの?壊れちゃう=死ぬとわかっていてぼくを作ったの?と。
これ、子どもに言われたらかなり辛い一言であると思います。どうしてこんな顔に生んだの、どうしてぼくは病気なの、ぼくのことなんて本当は愛してないんでしょう…等々の言葉と同様に。
それに対し、ディオンは、こんなことになるとは思っていなかった、と答えます。チャッピーがこんな知能を持つだなんて、まさか死を怖れるようになるだなんて、想像できなかったと。AIは生命体ではなく、ただのプログラムでしかないわけだから。
じゃあ、人間との違いは何か?見た目?確かにそうだ。
けれど、ママであるヨーランディは絵本『黒い羊と小鳥』を読みながらチャッピーにこう言います。
「黒い羊は特別なの。でも外見は問題じゃないの。大切なのは中身なのよ」と。
これはこの映画の大きなテーマとなり、ラストのチャッピーの選択へとつながっていきます。
というわけで、ムースとのバトルも迫力満載で子育ての物語としてもぐっときました。また、ニンジャとヨーランディによる音楽も世界観とぴったりでした(特にヨーランディの高めの甘い声がロボットっぽくて良い)。
「第9地区」でも見られた荒々しくも疾走感溢れるカメラワークや、ニュース映像を用いた画面作りも効果的。
とても面白かったです!
チャッピー欲しいと思う★★★★★
pepper欲しいと思う★
ムース欲しいと思う★★★★
総合★★★★☆(4.9)
ブロムカンプ監督作。いろんな意味で感動する映画。躍動するエビ!
作品情報
- 監督 ニール・ブロムカンプ
- 製作総指揮 ベン・ウェイスブレン
- 脚本 ニール・ブロムカンプ、テリー・タッチェル
- 音楽 ハンス・ジマー
- 製作年 2015年
- 製作国 アメリカ、メキシコ、南アフリカ
- 原題 CHAPPIE
- 出演 シャールト・コプリー、デヴ・パテル、ヒュー・ジャックマン、ニンジャ、ヨ=ランディ・ヴィッサー、ホセ・パブロ・カンティージョ、シガーニー・ウィーヴァー